結婚式で着る着物|種類と格おすすめの9選と気を付けるポイント2つ

結婚式で着る着物はどうする?

結婚式で着ることも多い日本の伝統衣装である着物には、伝統があるからこその決まり事も存在します。


着物にはいろいろな種類があってその種類ごとに格付けがあり、それぞれに相応しい着用シーンが決まっているのです。おめでたい席でマナー違反になってしまわないよう、着物の選び方について見ていきましょう。

着物の格は

着物には「何時」「何処に」「何のために」着るのかで明確な約束事があり、それを着物の「格付け」と言います。着物は生地の素材や色、デザインなどでいろいろな種類に分けられ、格付けがされています。


また、紋の数などによっても格が変わります。この「格」の違いを知って着用シーンに合わせた着物を選ぶことが、招いてくださった方への配慮となります。

結婚式で着る着物の種類と格おすすめの9選

着物の格は大きく「第一礼装」「略礼装」「外出着」「普段着」の4つに分けられ、結婚式には礼装が相応しいでしょう。第一礼装は冠婚葬祭などの儀式で着用する格式の高い正装となり、略礼装は第一礼装に次ぐ格付けとなります。


外出着は少し格のあるものから自分らしく着こなしを楽しむものまで、応用範囲の広いグループで、TPOに合わせて調整することで結婚式にも着用可能となります。

おすすめ1:黒留袖(第一礼装)

黒留袖は着物の中でも格式が高く、既婚女性のみが着用できる第一礼装です。一般的に新郎新婦の家族と仲人婦人のみが着用しますが、関西など、親族が着用する地域もあります。


格式が高い色とされる黒を地色とした留袖で、上半身には柄がなく、裾回りにだけ縁起の良い、とても豪華な模様が入っています。黒留袖には必ず、染め抜き日向五つ紋を入れ、白の比翼仕立てであることが決まり事となっています。

おすすめ2:色留袖・五つ紋(第一礼装)

地色が黒以外の留袖を、色留袖と言います。裾の模様や仕立て方などは、基本的に黒留袖と同じものになります。色留袖でも五つ紋が入ったものは、黒留袖と同格の第一礼装になります。


ただ、新郎新婦の母親の場合は、更に格式の高い黒留袖の着用が正式です。また、色留袖は既婚未婚を問わず着用することができます。五つ紋の色留袖は、新郎新婦の近い親族である姉妹やいとこ、叔母などが列席する場合に相応しい着物になるでしょう。

おすすめ3:大振袖(第一礼装)

振袖は着物の中でも豪華なもので、未婚女性の第一礼装として結婚式に相応しい着物でしょう。模様が縫い目を渡って一枚の絵のようになっている絵羽模様で描かれ、デザインも豊富にあります。


また、振袖は袖の長さによって分類され、「大振袖」「中振袖」「小振袖」の3種類があります。中でも袖丈が115㎝程もあり、着たときにくるぶし辺りまである大振袖がより格式が高く、昔は婚礼衣装として花嫁が着用していました。

おすすめ4:色留袖・三つ紋(略礼装)

色留袖は、五つ紋と決まっている黒留袖とは違い、紋の数を少なくすることで格が下がるのが特徴です。三つ紋の色留袖は略礼装となり、主に友人の結婚式などでゲスト側が着る着物となります。


また、格式張らない結婚式で親族女性が着用することもあるでしょう。色留袖は身内のお祝い事で着ることが多い着物ですので、着ていると親族側に見られがちです。ゲストの立場で何を着ようか迷っているなら、訪問着や振袖を選ぶ方が無難ではないでしょうか。

おすすめ5:訪問着(略礼装)

着物の中でも幅広いシーンで着る機会のある訪問着は、紋を入れることで格式が高くなり、略礼装として着用できます。親族として出席するなら紋の入った訪問着、ゲストとしてなら一つ紋か無紋の訪問着が良いとされていて、未婚でも既婚でも着用できます。


留袖と同じ絵羽模様で、上半身にも柄がある豪華な着物です。振袖では「派手かもしれない」、留袖では「格式が高すぎる」と悩んだときにも、おすすめの着物でしょう。

おすすめ6:中振袖(略礼装)

中振袖は袖丈が100㎝程で、着たときにふくらはぎ辺りまである振袖のことです。正式には第一礼装に次ぐ略礼装となりますが、留袖ほど厳格に区別されてはいません。


ただ、花嫁がお色直しなどで大振袖を着用する場合は、中振袖を選ぶようにしましょう。主役は花嫁ですので、格式が下となる中振袖を着用するのがマナーです。また、色や柄が花嫁の衣装と重ならないようにして、控えめなものを選びましょう。

おすすめ7:色無地(略礼装)

白い生地に黒以外の一色で染めて仕立てた柄のない無地の着物で、幅広い用途に用いられ、全体的に控えめな印象になります。紋の有無で格が変わるのが特徴で、「染め抜き日向五つ紋」以外なら大抵の紋が入れられるでしょう。


「染め抜き日向三つ紋」が入れば一つ紋の訪問着よりも格上となり、五つ紋が入れば留袖に次ぐ着物として着用できます。一般的には、色無地は一つ紋で着用されるのが主流となっています。

おすすめ8:付け下げ(外出着)

付け下げは戦時中に贅沢品が禁止されたことにより、訪問着の代用品として生まれた着物です。絵羽模様を簡略化しており、一枚の絵柄として繋がっていないのが訪問着との大きな違いでしょう。


付け下げは正式な礼装ではありませんが、一つ紋を入れたり帯や小物との組み合わせで格を上げたりすることで、結婚式にも着用されるようになっています。着たときに全ての模様が上向きになっているのが特徴です。

おすすめ9:江戸小紋(外出着)

江戸小紋は遠目で見ると無地に見えるのですが、近くで見ると精密で繊細な一色染めの模様がある着物です。江戸小紋には多くの柄がありますが、格式が高いとされる「江戸小紋五役」と呼ばれる柄に限り、一つ紋を入れることで色無地と同格となり結婚式にも着用が可能です。


ただ、もともとの小紋の格式は「外出着」です。格式の高いホテルや式場での結婚式や、友人代表でスピーチする場合などには不向きでしょう。

結婚式に着物で出席するときに気を付けるポイント2つ

ここまで結婚式に着用できる、着物の種類と格式を見てきました。自身に相応しい格式で着物を着用するには、何を基準に考え選ぶのかが重要なポイントになります。


ここでは、結婚式に着て行く着物を選ぶときに注意するべきポイントについて、大切な2つのことを紹介します。

1:自身の年齢と既婚か未婚か

重要なポイントの一つ目は、結婚しているのか否か、そして自身の年齢と着物の色や柄が合うかどうかです。格の高い黒留袖は既婚女性のみが着用できる着物ですので、未婚であるならば振袖か色留袖などを選びましょう。


逆に、未婚女性のみが着用できるのが振袖です。特に年齢制限はありませんが、とても華やかなデザインが多いので、若い人向けとなってしまうかもしれません。「派手」と感じるなら、色留袖や訪問着にした方が良いのではないでしょうか。

2:どの立場で結婚式に出席をするか

重要なポイント2つ目は、新郎新婦の家族や親族として出席するのか、それともゲストとして出席するのかということです。家族や親族として出席する場合は、「ゲストをお迎えする」という意味で礼装が相応しいでしょう。


あらかじめ話し合い、両家の格を揃えます。例えば、ゲスト側なら、振袖か、親族側よりも格が下になるような装いにします。また、受付やスピーチなどをする場合には、格が高めの華やかな着物を選びましょう。

結婚式の着物に施される紋の格付けと意味

着物に入る紋とは、基本的に「家紋」のことを指し、表しているのは「家族」と「格式」です。背紋はご先祖様、抱き紋は両親、袖紋は兄弟姉妹、親戚を表していると言われています。


結婚式に着用される着物に入れられる紋の数は「五つ」「三つ」「一つ」と決まっており、基本的には数が多いほど格式が高くなります。


また、紋を入れる場所も決まっており、位置が違っていたり数が多かったりすると、フォーマルな着物としては着用できません。

1:五つ紋

背紋は背面の中央上部に一つ、袖紋は両後ろ袖に一つずつ、抱き紋は両胸に一つずつで五つ紋となります。結婚式で第一礼装として着用される着物には、より格の高い「染め抜き日向紋」を、五つ紋で入れることが基本となっています。


また、黒留袖には「染め抜き日向五つ紋」が必須条件です。また、色留袖に「染め抜き日向五つ紋」を入れて第一礼装とし、結婚式で親族が着用することもあります。

2:三つ紋

背中に一つの背紋と両腕に一つずつの袖紋を入れて、三つ紋となります。「染め抜き日向紋」で入れることが一般的ですが、「陰紋」や「縫い紋」で入れることもあります。


三つ紋の着物は格式の高い場所では礼装とみなされないため、略礼装の装いとなります。色留袖や色無地、訪問着に入れて、結婚式が行われる場所や立場などに合わせ着用されます。

3:一つ紋

背面の背縫いの部分に一つ、背紋のみを入れたものが一つ紋です。紋入り着物の中では格式が一番下になりますが、この紋があるだけで後姿がとても格調高くなるでしょう。


一つ紋は「染め抜き紋」で入れるのが一般的で、色無地や訪問着、礼装用の付下げや江戸小紋に入れます。第一礼装としては着用できませんが、略礼装用として重宝されていて、結婚式でも着用されることがあります。

結婚式の着物は季節にあったおめでたい模様を選ぶようにしよう

着物の柄にはそれぞれに意味があり、将来の発展の意味が込められた末広がりの扇柄や、長寿を表し「幸せが長く続く」という意味も持つ鶴亀文様などが選ばれています。


また、結婚式が行われる季節にあった花柄を選ぶのも良いでしょう。ただ、花柄の中には結婚式には不向きな意味を持つものもありますので、注意が必要です。お祝いの気持ちを柄に込めて、季節にあったおめでたい模様を選び、着物で結婚式に華を添えましょう。