結婚式の山場とも言える「新郎の謝辞」は、結婚式、披露宴へ出席してくれたゲストへ感謝の気持ちを伝える大切なスピーチです。
親族や友人など多くの人の前で話すことになるので、内容はもちろん、書き始めや結びの言葉をどう書けばいいか頭を悩ませる人も多いでしょう。
あまり難しく考えすぎず、次に説明する基本的な構成に則して書きましょう。以下で、基本的な構成に加え、例文やNGワードまで丁寧に解説します。
基本的な構成は、「導入」「本題」「結び」の3つです。
「導入」では、無事に結婚式を迎えられたこと、式に出席してくれたこと、これまでお世話になったことへの感謝を伝えます。
「本題」では、交際期間中の出来事や結婚準備から結婚式当日を迎えての思い、新郎新婦の近況や今後の抱負などを盛り込みましょう。
「結び」では、改めて感謝の気持ちを述べ、ゲストを気遣う言葉や今後のお付き合いをお願いする言葉で締めくくります。
新郎の謝辞は、あまり堅苦しくなりすぎないように、披露宴の雰囲気によって言葉遣いや内容を使い分けるといいでしょう。
たとえば、親族や親しい友人のゲストへ向けたものなら、少しカジュアルなスピーチでも構いません。上司や同僚、取引先などのゲストに向けたものであれば、フォーマルなスピーチでしっかりした印象を与えましょう。
下記で、「親族」「ゲスト」「授かり婚」の3つのパターンの例文を「本題」を中心に紹介します。
新郎親族へはこれまで育ててくれた感謝、新婦親族へはこれから新婦を守っていく決意、両家の親族へは結婚準備に協力してくれた感謝などの気持ちを込めましょう。
少々砕けた言葉遣いでも構いませんが、自分らしい言葉で気持ちを伝えることが大切です。結婚式、披露宴には、新郎の親族と新婦の親族両方が参加しているので、それぞれの親族へ向けた謝辞、両家の親族へ向けた謝辞を準備しましょう。
職場や友人ゲストもいるフォーマルな披露宴では、親族への謝辞もフォーマルにして感謝の気持ちを伝えましょう。
例文
本日はご多用の中、私たちの結婚披露宴にお集まりいただき誠にありがとうございます。
(中略)
○○さんのお父さん、お母さん、これからは私がお2人の大切な○○さんを守り、愛し、必ず○○さんを幸せにすることを誓います。
なにぶん未熟な私たちですが、今後も温かく見守っていただけますようお願い申し上げます。
両親や親族、親しい友人だけの少人数の披露宴なら、カジュアルな謝辞で親しみを込めましょう。
例文
今日は、私たちのためにお集まりいただきありがとうございます。
(中略)
○○さんのお父さん、お母さん。僕が最初に結婚の挨拶に伺ったとき、とてもあたたかく迎えてくれましたね。こんなに優しいご両親だからこそ、○○さんも穏やかで温かい人なんだと思うと同時に、○○さんを絶対に幸せにすると心に誓いました。
ゲストに向けた謝辞では、出席してくれた感謝やお世話になった感謝、スピーチや余興などを頼んでいたら、お礼や感想を添えるとオリジナリティのある謝辞になります。
導入部分にはその日の天気、遠方からの出席や週末、祝日の中の出席に対する感謝も加えるとより気持ちが伝わります。
また、上司や同僚などの職場関係のゲストへはフォーマルに、友人ゲストにはカジュアルになど、謝辞の中で言葉遣いを使い分けてもいいでしょう。
フォーマルな言葉でゲストへの謝辞を考えるときには、参列してくれたゲストの誰もがわかる内容にしましょう。
例文
本日はお足元の悪い中、私たちの結婚式にご出席賜りまして、誠にありがとうございます。
(中略)
私たち2人は職場で知り合い、5年の交際の間、穏やかに愛を育んでまいりました。
築いてきた信頼や思いやりを今後も大切にし、2人で支え合い温かな家庭を築いていきたいと思っております。
カジュアルな謝辞には、新郎からゲストへの信頼や絆を感じさせる温かいエピソードを盛り込みましょう。
例文
今日は、私たちのために連休の貴重なお時間をいただきありがとうございます。
(中略)
友人のみんなも余興で盛り上げてくれてありがとう。高校時代大好きだった懐かしい曲を聴けてとても嬉しかったです。みんなとの青春の日々を思い出しました。
これからも困ったときにはお互いに助け合い、末永く仲良くしてください。
「授かり婚」の場合の新郎の謝辞では、親になる覚悟や出産予定月を報告して、結婚後も温かく見守ってもらいましょう。
月数によっては、お腹が目立つ場合や新婦の体調で妊娠に気が付いているゲストもいるため、隠さず堂々と報告しましょう。
ただし、安定期に入っていない場合や、新婦から同意が得られない場合は無理に盛り込まなくても構いません。また、お互いの両親や結婚式場の担当者には前もって妊娠の報告をしておきましょう。
急ぎの結婚になった場合、予定を変更して都合をつけてくれたゲストもいるため、お礼の言葉はしっかりと伝えましょう。
例文
新婦のお腹には、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、新しい命が宿っております。
出産の予定日は○月です。体調を考慮して、皆様には急なご案内になってしまいましたがお時間を賜りましてありがとうございます。夫婦で支え合い、よき父、よき母として子供を慈しみ育てていきたいと思っております。
カジュアルな言葉で伝える場合でも、新婦とお腹の赤ちゃんを気遣う気持ちや親になる覚悟をしっかり伝えましょう。
例文
皆様にご報告があります。
実は、新婦○○のお腹に、新しい命が宿っています。
出産予定日は□月です。
これからは夫婦としてだけでなく、父親、母親としての自覚を持ち、一層努力してまいります。未熟な私たちですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
新郎の謝辞を書くときには、結婚式ならではのNGワードに気をつけましょう。
再婚を連想させる言葉、不幸や不吉を連想させる言葉、過去の恋愛、破綻や離婚、出戻りを連想させる言葉はタブーとされます。また、ネガティブな表現や若者言葉も好まれません。
最近では気にしすぎない傾向もありますが、年配の方や上役の方など、ゲストの中には不快に思う方もいるため、配慮して謝辞を作成しましょう。
言葉を繰り返す重ね言葉は結婚式では、再婚を連想させる「忌み言葉」とされタブーです。
「重ねがさね、重ねて、次々、相次ぎ、再三、再び、たびたび、まだまだ、たまたま、さまざま、いろいろ、いよいよ、ますます、くれぐれも、繰り返し、返す返す」など、普段から使っている言葉でも多くの重ね言葉があります。
「重ねがさね」は「あわせて」、「さまざま」は「多種多様」、「ますます」は「より一層」など言い換えて使いましょう。
不幸・不吉を連想させる言葉も「忌み言葉」とされ、結婚式にはふさわしい言葉ではありません。
「死ぬ、苦しい」はもちろんですが、他にも「終わる、消える、忙しい、冷める、相次ぎ、失う、負ける、壊れる、散る、悲しむ、嫌う、褪せる、閉じる、最後、破れる、しめやかに」などが不幸・不吉を連想させる言葉です。
新郎の謝辞では「お忙しい中」を「ご多用の中」、「最後に」を「結びに」などに言い換えましょう。
結婚式に、暴力や新郎新婦の過去の恋愛に関する話はやめましょう。
叩いた、蹴った、殴ったなどの暴力に関する話や、新郎新婦の過去の恋愛の話は結婚式に出席している多くのゲストを不快にさせてしまい御法度です。
また、親族や職場の人に誤解を招いたり、結婚式の雰囲気を壊したりしてしまうので触れないようにしましょう。
「2人が一生添い遂げる」と誓う結婚式では、破綻や離婚を連想させる言葉も「忌み言葉」です。
「終わる、途絶える、滅びる、逃げる、別れる、切る、飽きる、冷える、離れる、散る、嫌い」など多くの言葉が当てはまります。
新郎の祝辞では、「料理が冷めないうちに」は「料理が温かいうちに」、「桜が散る季節に」は「桜の花びらが舞う季節」などポジティブな言葉を積極的に使いましょう。
世間で話題になっていても、政治や宗教に関する話は不快に感じる人もいるのでやめましょう。
政治や宗教に対する考えは人それぞれ異なり、そこには自由があります。ゲストそれぞれの価値観があるため、新郎の謝辞で政治や宗教の話題は避けた方がいいでしょう。
新郎の謝辞でゲストを紹介するときや、新郎新婦の人柄を紹介するときには、ネガティブな表現に気をつけましょう。
「頑固、冷たい、気が弱い、暗い、おちゃらけた、神経質、頼りない、仕切り屋」、などはマイナスのイメージがつきやすくネガティブな表現になってしまいます。
「頑固」は「意志が強い」、「気が弱い」は「優しい」、「頼りない」は「控えめ」、「仕切り屋」は「リーダーシップがある」などポジティブな表現にしましょう。
新郎の謝辞で若者言葉を使うと、せっかくの感謝も伝わりにくくなってしまいます。
若者言葉はSNSやインターネットなどから日々新しいものが生み出されています。若い世代には通じても、年配の方やSNSに疎い方には意味が伝わらない場合も多く、不快に思う人もいるでしょう。
新郎の真剣な気持ちや丁寧なおもてなしの心も、軽いものに見られてしまいます。多くの人に感謝の気持ちを伝えるための新郎の謝辞では、若者言葉はNGです。
新郎の謝辞が書けたら、声に出してスピーチの練習をしましょう。
ゆっくりはっきりと話す練習や、謝辞の内容を覚える練習、背筋を伸ばして視線は謝辞の内容に出てくる人へ向けるよう意識するなど、堂々としたスピーチを心がけましょう。
万が一間違えた場合やNGワードを言ってしまったときには、「失礼しました」や「緊張していて、すみません」と挟むことで、焦る気持ちを落ち着かせましょう。
新郎の謝辞は、長くても2~3分程度を目安にまとめましょう。時間を計った練習や、録音して聞き返すなどして推敲していくと洗練された謝辞になります。
ゆっくり聞きやすい速度でスピーチをするので、伝えたい内容をあれもこれもと盛り込むと、長すぎてだらだらとした印象の謝辞になってしまうため注意が必要です。
伝えたいことはできるだけ簡潔にまとめて、結婚式当日の新郎謝辞をビシッと格好よく決めましょう。