妊娠すると口内環境が悪くなると耳にしたことがあるという方もいるでしょう。口内環境の悪化には、妊娠したことで急激に増えた女性ホルモンが関係しています。
女性ホルモンの影響により唾液にも変化が起こることで、口の中を清潔に保つのが難しくなります。また、妊娠初期のつわりによって普段と食事の方法や時間が変わったり、口の中のケアができなかったりすることが悪化の原因になるでしょう。
出典:2)妊娠期の歯・お口の健康リスク|日本歯科医師会
参照:https://www.jda.or.jp/park/prevent/ninsinji.html
口内環境が悪化したときの状態は妊婦さんによって違います。ここからは実際に妊婦さんに起こりやすい口内トラブルを4つ紹介していきます。早めに変化に気づけるよう、それぞれのトラブルについて具体的に見ていきましょう。
妊婦さんに起こりやすい口内トラブルの1つが虫歯です。熱いものや冷たいものがしみる、痛みがずっと続くときは虫歯になっている可能性があるでしょう。
妊娠中は食べる回数が増えることや、つわりがひどく歯磨きできないことから虫歯菌が増えやすい口内環境になってしまいます。
つわりで決まった時間にバランスよく食事を取れないときも、虫歯リスクを高める食品のダラダラ食いは避け、歯磨きが難しい場合は食後にうがいをしておきましょう。
出典:1.妊娠時に見られやすい歯やお口の問題とその対応|日本歯科医師会
参照:https://www.jda.or.jp/park/prevent/ninsinji.html
妊婦さんは口臭が強くなる場合もあります。これは、女性ホルモンの影響により、口内に菌が増えやすくなってしまうためといわれています。
唾液が減少すると、口の中に菌が残って臭いが強くなるため、つわりであまり食事が取れない場合はさらに臭いが発生しやすくなってしまうでしょう。
出典:妊婦さんのための口腔ケア| 宮崎県歯科医師会
参照:https://www.miyazaki-da.or.jp/maternity/maternity2
妊婦さんは、歯周病の初期段階である歯肉炎にもなりやすいです。これは、唾液の粘つきや量の減少が影響しています。
そのため、つわりのときも気分が良い時間に歯を磨き、歯と歯ぐきの隙間の汚れをとるようにしておくといいでしょう。
出典:妊娠性歯肉炎|NPO法人日本臨床歯周病学会
参照:http://www.jacp.net/pdf/leaflet/leaflet_04.pdf
歯周病の第一段階である歯肉炎から一歩進んだ状態が歯周炎です。女性ホルモンの増加にともない、歯周病を引き起こす細菌が増えやすくなることや、唾液の変化によって妊婦さんの歯周炎リスクは高まります。
朝起きたとき口内にネバネバ感があるときや、歯肉に傷みがある場合は、歯ぐきの状態をチェックしておきましょう。歯周炎も適切にケアすることが大切です。
出典:2.歯ぐきの腫れや出血|宮崎県歯科医師会
参照:https://www.miyazaki-da.or.jp/maternity/maternity2
口内トラブルの予防や、早期発見を目的とした歯科検診は妊娠中も受けられます。ただし、安定期に入った頃に受けると良いでしょう。つわりがほぼ治まった安定期であれば、検診でトラブルが見つかった場合に、すぐ治療できる可能性があります。
ただし、妊娠の初期段階は胎盤が完成しておらず、流産しやすい時期です。また、お腹が大きくなる妊娠後期は、母体への影響や早産のリスクが考えられるため、安定期に受診することをおすすめします。
出典:最も安心して治療できる時期は?|竹林歯科医院
参照:http://www.take-shika.jp/original14.html
自治体の中には妊婦歯科検診を無料で行っているところがあります。自治体指定の場所へ予約を入れれば、料金を支払わずに検診を受けることが可能です。
無料の検診がない場合は、かかりつけの歯科医院で相談してみましょう。一般の歯科医院での検診費用は、保険が適用になるため数千円程度でしょう。
ただし、歯科医の判断で治療が必要となった場合、内容によっては治療費がかかる場合もあるため注意しましょう。
歯科検診へ持っていくものは自治体ごとに異なりますが、必要になるものが何点かあります。自治体から受け取った、受診のために必要な妊婦歯科健康診査受診票などの券、母子手帳や健康保険証です。
受け取った案内や書類、自治体のインターネットサイトで何を持参すればいいか事前に確認し、検診当日忘れないように準備しておきましょう。
妊婦さんの歯科検診は一般の歯科検診と特に変わりありません。歯や歯肉の状態を見て、虫歯や歯周病になっていないかを確認するほか、歯に歯垢や歯石がどの程度付いているかを見ていきます。
痛みがなく、飲食時に歯がしみることもなければ、初期の虫歯や歯周病には気づきにくいですが、検診を受けておくことで早期治療と予防の両方に役立ちます。可能な方は歯科検診を受けてみましょう。
妊婦さんは自分の身体とおなかの赤ちゃんを気遣わなければなりません。歯科検診に不安がある場合は、事前に相談し、気になる点を確認しておきましょう。
産婦人科から伝えられている注意事項がある場合は、安心して検診を受けられるよう事前に歯科医師へ伝えておきましょう。座った体勢がきついときは、我慢せずに楽な姿勢で検診を受け、途中で体調に異常を感じたらすぐに伝えましょう。
検診で治療が必要だとわかった場合は、歯の状態を詳しく知るためのレントゲンや、痛み止めの麻酔を治療で使う場合があります。ただし、どちらも妊娠中の使用は問題ないとされています。
ここでは、レントゲンや麻酔を使って治療を受ける際、妊婦さんが気をつけておきたいことを見ていきます。安心して治療できるように、しっかり確認しておきましょう。
レントゲンは、正確に見えない部分を治療するために撮影します。歯科用のレントゲンで撮る部分は赤ちゃんのいる子宮とはだいぶ離れており、撮影により浴びる放射線量も非常に少ないため、影響はほぼないといわれています。
ですが、それでも気になるときには歯科医師に相談し、防護用エプロンを準備してもらうといいでしょう。防護用エプロンの着用により、レントゲンに対する不安を和らげることが可能です。
出典:5.「妊婦さんが歯科医院でレントゲン撮影を行っても大丈夫?」|上前津歯科医院
参照:https://e-ha.ne.jp/x-ray-ct/
歯科で使われている麻酔は、一部分だけに麻酔をかける局所麻酔です。打つ量も少なく、お腹の赤ちゃんへ届かないため妊婦さんにも使われます。
ただし、過去に麻酔によるトラブルを経験している方は、歯科医師に話しておきましょう。妊娠中に無理して治療しなくても、出産後へ延ばせる場合もあります。
出典:Q.歯科治療時の麻酔の影響はありますか?|日本歯科大学附属病院
参照:http://dent-hosp.ndu.ac.jp/nduhosp/section/special/maternity/faq/index.html
妊婦さんの歯科検診について理解できたでしょうか。妊娠中は、普段より体も心もデリケートな時期です。口内環境を気にして、気分の悪いときに歯磨きしようとすればストレスになりかねません。
万が一、口内トラブルが心配なときは歯科検診を利用しましょう。口内環境をチェックするのに相応しい時期がいつ頃か知っておくのは、自分と赤ちゃんを守ることにつながります。時期がきたら検診を受け、必要ならば治療をすませて出産に備えましょう。