妊娠初期に起こる体の症状には、体調やお腹の変化があります。しかし妊娠初期は、体の症状が出ていても妊娠していると気付きにくく、見過ごしてしまいがちです。
妊娠に気付かずに市販の薬を飲んで対処しようとしたり、無理をしてしまったりすることもあるため注意しましょう。
妊娠初期に起こる体の症状として、基礎体温が軽度上がり風邪で熱があるときのように体熱感を感じる日々が続くことがあります。生理予定日をすぎても生理が来ず、体温が高い状態です。普段から体温を計っておく習慣があると、この変化に気付きやすいでしょう。
また、妊娠すると女性ホルモンの分泌が多くなるため、乳首が痛くなったり、胸が張り大きくなったりすることもあります。
妊娠初期には、便秘や下痢、頻尿などお腹の変化があります。トイレの回数が増えることで、妊娠に気が付く場合もあります。
便秘や下痢は、ホルモンバランスの変化により腸のぜんどう運動が弱まることが原因で起きます。頻尿も妊娠によって腎臓の働きが活発になることが原因です。
妊娠初期に起こるお腹の痛みで注意したい理由は、流産の可能性が出てくるためです。たとえば妊娠中に細菌感染してしまうと、子宮内感染を起こし、子宮収縮を起こしたり子宮口が開いてきたりする原因となり、腹の痛みが発生し、流産に至るケースがあります。
安静にしても痛みが続く場合や強く我慢できないような痛みを感じた場合は、病院に連絡をして診察を受けるようにしましょう。
妊娠すると母体やお腹の赤ちゃんに異常がなくても、お腹が痛むことがあります。安静にしていればすぐに痛みが去るようであれば、心配しなくても良い可能性があります。しかし、流産に繋がる場合もあるため注意が必要です。
それでは、妊娠初期にどのような原因があるか見ていきましょう。お腹が痛くなる理由はいくつか存在しているため、なぜ痛くなっているのか知ることで精神的に安心できる部分もあるでしょう。
妊娠初期に起こるお腹が痛くなる原因に、子宮の変化があります。妊娠前は鶏卵程度だった子宮は、着床すると数週間で一回り以上大きくなり、腹痛が生じます。
痛みは個人差があり、気付かない人もいますが、子宮周辺の腸や膀胱の刺激が痛みとして現れることがあるでしょう。
妊娠するとホルモンバランスの変化で、腸のぜんどう運動が弱まり、便秘になる方が多いでしょう。ガスや便が腸にたまってしまい、膨張感や腹痛を感じることがあります。
普段はお通じで問題がなく快便だった方でも、妊娠によって便秘になってしまうことも少なくありません。また普段から便秘が続いていた方は、さらに便秘が酷くなることもあります。。
妊娠中は便秘にもなりがちですが、下痢を引き起こすこともあります。妊娠により、黄体ホルモンの分泌量が増加してしまい、自律神経が乱れることで下痢に繋がることがあります。
腸のぜんどう運動が鈍くなるため、便秘が続いたと思ったら、一転して下痢が続いてしまう人もいます。
妊娠中のお腹の痛みで特に注意したいことは、流産の可能性がある場合です。お腹の痛みが強い、横になって安静にしても痛みが治まらない、出血がある場合は、流産の兆候の可能性があるでしょう。
ただ、妊娠12週前に起きる流産の多くは、受精卵の染色体異常で起きるものであり、この場合の流産は抑制できません。病院に電話しても、すぐに受診しないケースもあります。
妊娠初期でお腹が痛くなった時、焦ってしまうこともあり、そのような時のために、あらかじめどのような行動をとれば良いのか対処法を知っておくと良いでしょう。妊娠初期でお腹が痛くなった時は、以下の対処法を検討してみてください。
妊娠初期でお腹が痛くなった時、まずは医師に相談しましょう。病院に連絡して、出血はあるのか、便秘なのか、下痢の症状がでているのかなど、お腹が痛くなった時の症状を詳しく伝えます。
出血の量が多い場合や出血の箇所によっては、流産や子宮外妊娠の兆候という可能性があります。もし出血があった場合、少ない出血であっても念のため医師に相談しておきましょう。
妊娠するとホルモンの影響で腸のぜんどう運動が弱まってしまい、それまで便秘ではなかった方も便秘気味になる傾向があります。左下腹部の痛みは、便秘が関係している場合があります。
便秘で辛い思いをすると、お腹の痛みだけではなくストレスにも繋がるため、医師に相談して便秘を解消する方法を確認しましょう。
妊娠によるホルモンバランスの関係で便秘を引き起こすこともありますが、逆に下痢を起こしてしまうこともあります。下腹部からお尻にかけてキリキリする痛みは、下痢の時に発生しやすい痛みとされています。
すぐに症状が治まれば良いですが、下痢が続く場合、脱水症状に陥ることもあるため、早めに医師と相談しましょう。
お腹に痛みを感じたら、安静にしましょう。安静にするとは、横になって体を休めることを言います。どうしてもしなければならない家事がある場合は、安静にすることが大事な時期であることを説明し家族の人に協力してもらうと良いでしょう。
体が冷えてしまうと、お腹を壊して下痢をしたり、筋肉のこわばりから下腹部に痛みを感じたりしやすくなります。
冷えを感じたら、裸足では過ごさず、靴下を履いて足元を冷やさないよう心がけましょう。腰も冷えやすいので腹巻もおすすめです。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランス良く食事にとり入れることで便秘が解消しやすくなります。
不溶性食物繊維は、腸を刺激してぜんどう運動を活発にします。水溶性食物繊維を積極的に摂り入れると、便の水分が増すことで便が柔らかくなり、排出しやすくなります。
不溶性食物繊維は、大豆やごぼう、きのこなど、水溶性食物繊維は昆布やわかめ、こんにゃく、果物などです。
下痢によるお腹の痛みが出ている時、脱水症状にならないようにしましょう。すでにつわりが発生していて嘔吐の症状がある場合、下痢をしてしまうと一気に脱水症状に陥ることがあります。
ただ、脱水症状を気にして一度にたくさん水を飲むと、さらに下痢が続くことがあるた注意が必要です。少ない水分をこまめに摂り入れるようにしましょう。
妊娠によって胃や腸の具合が悪くなる方もいるでしょう。お腹が痛い時は、胃や腸に負担のかからない食事をしましょう。
胃や腸に負担のかからない食事は、消化しやすい、おかゆやうどんが良いでしょう。バナナ、リンゴ、キャベツ、豆腐、白身魚、鮭なども消化しやすい食べ物です。
消化のことを考えた調理方法としては、油をできるだけ使わず、茹でる調理にしましょう。水分の摂取量を気にする場合は、味噌汁がおすすめです。具材はできるだけ細かく刻み、消化に時間がかかりにくくする工夫も大切です。
妊娠初期の4~12週あたりでは、お腹の赤ちゃんの臓器が形成される時期にあたります。そのため、この時期安易に市販の薬を飲んでしまうと、薬の成分によって赤ちゃんに悪い影響を与えることがあります。市販薬を飲む時は、医師に指示を仰ぐようにしましょう。
次は、病院へすぐに行く必要のある腹痛症状について紹介します。妊娠初期でも、お腹の痛みが出てしまうことがあります。
流産や子宮外妊娠が原因で引き起こされる痛みもあり、注意が必要です。以下のようなお腹の痛みがある場合は、できるだけ早く病院に連絡してください。
お腹に痛みがあり発熱がある場合、ノロウイルスやサルモネラ菌、腸炎ビブリオなど胃腸炎を起こしている可能性もあります。潜伏期間を経て症状が出てくるため、最初は発熱だけということもあります。
発熱後にお腹を壊し、長時間下痢や嘔吐が続けば脱水症状に陥ってしまうこともあります。脱水症状になると、お腹の赤ちゃんへの栄養不足に繋がるため病院で診断を受けましょう。
妊娠初期で出血量が多い時は流産の原因になることがあります。出血量が多いかの目安は、出血量が月経より多い場合です。治療が必要なケースもあるため、すぐに病院で診察を受けましょう。
刺すような強い痛みを感じた時は、病院で検査を受けましょう。時間の経過で痛みが落ちついてくることケースもありますが、産婦人科系の疾患や、消化器系の病気を抱えている可能性もあります。自己判断は控え、医師に相談しましょう。
短時間で何度も痛む場合は、子宮が大きくなることで痛んでいる可能性があります。子宮が徐々に大きくなるために収縮を繰り返しているのです。子宮が大きくなる痛みは、生理痛のような痛みに近いとされています。
しかし、安静にしていても痛みが治まらない場合は、出血がなくても切迫流産が考えられます。1時間のうちに何度も襲われる痛みを感じるのであれば、迷わず診察を受けましょう。
安静にしていても、だんだんと痛みが強くなってしまう時は、流産が始まっている進行流産や子宮外妊娠の可能性があります。痛みが強くなる様子を感じた時は、ただちに病院に行きましょう。
病院に到着するまで症状が悪化することもあるため、病院へは自分で運転して向かうことは控え、家族に送ってもらうかタクシーを利用するようにしましょう。
妊娠中期、後期になるとむくみが激しく出てきますが、初期からむくみが出てしまう時は注意が必要です。むくみは細胞の中の水分が多くなってしまった状態です。
お腹の痛みと共にむくみが出ている場合は、腎臓や肝臓の機能が弱まっている可能性があります。急激な体重増加があったり、血圧が高かったりする場合は重篤な病気が潜んでいることもあるため、病院で診察を受けるようにしましょう。
ここでは、お腹の膨らみが少ない妊娠初期から始めておきたい生活習慣について紹介します。妊娠初期は、お腹の膨らみもなく、妊娠前と同じように自由に動けるため、お腹の赤ちゃんに配慮した行動がとりにくい場合があります。
そのため、妊娠初期から姿勢や食生活、睡眠などに気を配ることで、赤ちゃんの健康を維持しやすくなるでしょう。
体力づくりや便秘予防、体重管理を兼ねて軽い運動をしましょう。過度な運動をして体に負荷をかけないよう、マタニティヨガやストレッチ、ウォーキングなど適度な運動が良いでしょう。
妊娠週数が経過するにつれて、お腹が大きく膨らむことで重心が前に移動してしまい、体に負担がかかってきます。対策として、妊娠初期から正しい姿勢を意識しておくことで、体に負担をかける姿勢の予防に繋がるでしょう。
立っている時は、顎を引いて背筋を伸ばし、胸を張りましょう。無理に力を入れすぎる必要はありません。両足に体重が均等に乗るような姿勢で立ち、外に出る時はヒールなど重心が傾きがちな靴は控えます。
座っている場合、椅子には深く座りましょう。お腹にもたれかかるような姿勢は、背筋を曲げてしまうので気を付けてください。立っている時と同じように背筋を伸ばし、顎を引いて胸を張ることを意識すると良いでしょう。
妊娠中は女性ホルモンの作用で、昼間でも眠たくなりがちです。夜はしっかりと睡眠がとれるように、就寝時間に気を配りましょう。
妊娠するとホルモンバランスが変化するため、体調を崩し、イライラしてしまうことも増えるでしょう。そこに睡眠不足が重なると、さらに辛くなってしまう場合があります。休日など、昼間でも眠れる時は横になって仮眠をとることをおすすめします。
妊娠中は、食事内容にも気を付けましょう。妊娠中は、食べるのを控えたほうが良いものや量を制限したほうが良いものなどがあります。
妊娠中に食べないほうが良いものとしては、基本的に生ものです。生魚や生肉、生卵、生ハム、ナチュラルチーズなどは感染症や食中毒のリスクがあります。またアルコールも、胎児性アルコール症候群を引き起こすことがあるので口にしないようにしましょう。
食べる量を制限したほうが良いものには、レバー、うなぎなどビタミンAを多く含むもの、魚は種類によって水銀の含有量を気にする必要があります。
妊娠中は体温が高くなり、鼻水が出たり、風邪と似たような症状が出てきたりすることがあります。眠気を感じやすくなり、普段より体が疲れやすくなることもあるでしょう。
これはホルモンバランスの変化で起きる現象であり、妊娠初期は体調が安定せず体に影響が出てきます。疲れやすい時期なので、妊娠前と同じような負荷がかかる行動は控え、できるだけ疲れをためないように過ごしましょう。
最後に、妊娠初期や妊娠の可能性がある女性に注意してほしいことを紹介します。何も考えず妊娠していない時と同じような行動をとってしまうと、流産に繋がるリスクが潜んでいることがあります。
妊娠4週目あたりから、お腹の赤ちゃんの心臓や四肢、耳、目などの形成がスタートします。ここで薬を服用してしまうと、細胞分裂が正常に行われず、赤ちゃんに形態異常が現れてしまうことがあります。
妊娠初期や妊娠の可能性がある場合、もともと飲んでいた薬などがあれば、医師に飲んでも問題がないか指示を仰ぎましょう。
喫煙しないことも妊娠初期や妊娠の可能性がある女性にとって大切です。妊娠中に喫煙していると、未熟児や低出生体重児、全先天性異常児、早産、周産期死亡などのリスクがあります。
それまで喫煙してきた方は「今更禁煙しても意味がないのでは?」「タバコを吸わないとストレスになりそう」など、考えてしまうこともあるでしょう。
しかし妊娠初期に禁煙すれば、上記のようなリスクは軽減されると言われています。お腹の赤ちゃんのことを第一に考えるならば、喫煙は控えましょう。
妊娠中にカフェインは良くないと耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。妊娠中は代謝スピードが落ちてしまうため、カフェインを摂取すると、分解・排泄に時間がかかり、カフェインが体の中に長く居座ることになります。
そして、カフェインは胎盤を通じてお腹の赤ちゃんまで移行してしまいます。赤ちゃんは肝臓の発達が未熟なため、カフェインを排泄できず体内に高濃度のカフェインが留まってしまいます。
カフェインを過剰に摂取し続けることで、流産や死産にも繋がってしまうこともあります。コーヒーや紅茶を飲む場合は一日数杯程度に抑えるようにしましょう。
出典:食品中のカフェイン|食品安全委員会
参照:https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf
アルコールを摂取すると、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんの血液に流れ込み、脳や体の形成を遅らせる胎児性アルコール症候群を引き起こすリスクが発生します。
胎児性アルコール症候群は、低体重や出生前より始まる発育障害、脳障害、顔を中心とした奇形などさまざまな症状があります。
風疹や水痘、トキソプラズマ症、B型肝炎・C型肝炎(ウイルス性肝炎)などの感染症も、お腹の赤ちゃんに影響を与えます。
風疹の場合は、お腹の赤ちゃんが心臓疾患、難聴、眼の障害など、水痘ではお腹の赤ちゃんに皮膚の萎縮や眼の障害、手足の低形成などを引き起こします。トキソプラズマ症は、お腹の赤ちゃんに眼の異常が現れ、脳内石灰化や水頭症などの危険性もあります。
B型肝炎・C型肝炎(ウイルス性肝炎)は、子供のうちは無症状ですが、将来的に肝炎や肝臓がん、肝硬変を発症するリスクが高まります。
感染症にかからないように、妊娠前に予防できるものは予防接種を受けておく、生ものは食べない、血液が付着するようなものを他の人と共用しないなどの行動が大切です。
妊娠すると妊婦健診で感染症検査を受けることが可能ですが、妊娠を希望している、または妊娠した可能性がある時は、あらかじめ感染症予防に力を入れましょう。
妊娠初期でお腹が痛くなった時の対処法や原因について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
妊娠初期は体調が安定せず、お腹の痛みもさほど問題がない場合でも起きますが、流産の可能性も潜んでいます。安静にしても痛みが継続する時や、出血を伴う時は早い段階で病院に行きましょう。