【専門家監修】臨月は体重が増える?増えてしまう理由や対策を解説

臨月の体重管理が必要なのはなぜか

妊娠後期、特に臨月に入ると、母体の体重が一気に増えることがあります。それに伴い、「一気に体が重くなった」や、「少し動くだけで辛い」と感じる妊婦さんも多くいます。


臨月に体重が急増する原因は様々ですが、妊娠中は特に、この臨月期の体重の急増に気をつけなければなりません。


臨月の急激な体重増加は、妊娠糖尿病や高血圧の原因となります。また、母体の体重が増えすぎることで赤ちゃんの体重が増えすぎ、難産になることも心配されます。さらに、体重増加が原因で、出産時に思いがけないトラブルに見舞われることもあるでしょう。


このような出産時や胎児に与える悪影響を減らすためにも、臨月に体重管理をすることが必要です。


この記事では、臨月の体重増加の原因や体重管理の方法について紹介していきます。もうすぐ臨月を迎える妊婦さんや体重管理の方法が気になる人は、ぜひ参考にしてみてください。

臨月に体重が増えてしまう3つの理由

臨月は、妊娠期間の中でも特に体重が増えやすい時期です。「少し食べただけですぐ増える」や、「食べてないのに増える」という妊婦さんも多くいますが、そもそも、臨月に入るとなぜ体重が増えてしまうのでしょう。


まずは、臨月に体重がなぜ増えるのかについて、3つの原因を紹介していきます。


臨月に入って体重が増えたことが気になる人は、以下の内容を参考に、自分の体重が増えた理由をチェックしてみましょう。またこれから臨月に入る人も、意識しながら体重管理をしていきましょう。

1:出産に必要な準備のため

妊娠によって増える体重の内訳には、羊水や胎盤、胎児の体重なども含まれています。臨月に入ると、出産の準備のため、これらの重量が増えて体重が増えることが考えられます。また、産後の授乳に備えて乳房が大きくなることが、体重増加の一因にもなるでしょう。


体重の増加原因にはこのような胎児の成長や、出産後の身体への準備もありますが、羊水や胎盤、胎児の重量は減らすことができません。そのため、体重管理をする場合には、胎児分や羊水分などの増加は諦めた上で、体重の増加を把握していく必要があります。


具体的には、羊水が約500g、胎盤が約500g、胎児が約3㎏、子宮約1㎏、血液増加量が約2㎏とされています。そのため、総合して約7kgの体重増加は仕方ないものとして、それ以外の体重増加を、コントロールしていくと良いでしょう。

2:体のむくみ

体のむくみが原因で、臨月に体重が増えてしまうこともあります。


妊娠中は、ホルモンの作用で血液量が増えます。また、同時に水分が体外に排せつされにくくなり、むくみやすい身体になっていくでしょう。さらに、臨月になって大きくなった子宮が原因で下半身の血行が悪くなり、むくみの一因ともなります。


このような体の変化を踏まえた上で、塩分量を調整したりカリウムを多く含む野菜を積極的に食べるなど、むくみにくい食生活を送ることが重要です。

3:食べすぎ

臨月に入ると、仕事が産休に入ったり、里帰りをする人もいます。産休に入って家でダラダラする時間が増え、ついお菓子に手が伸びてしまうこともあるでしょう。里帰りした実家で美味しい料理を振る舞われて、つい食べすぎてしまうこともあります。


また、臨月に入ると赤ちゃんの位置が下がり、胃が楽になる人も多いです。これまでつわりや胃の圧迫感に苦しんでいた人は、ここぞとばかりに食べてしまうこともあるでしょう。


このように、臨月に入ると、生活スタイルや体の変化によって、それまでより食べる量が各段に増えて、体重が増えてしまうこともあります。

BMIによって異なる臨月の体重増加目安

妊娠中の体重増加の目安は、妊娠前の身長と体重から算出されるBMI数値によって定められます。


BMIが18.5以下の痩せ型体型の人は9kg~12kg、BMIが18.5~25.0の普通体系の人は7kg~12kgの体重増加が理想的です。また、BMIが25.0以上の肥満体型の人は、産婦人科医の指示に従って体重増加の目安設定をします。


同じように、臨月の体重増加目安もBMIの数値によって異なります。BMIの数値でみた時に痩せ型、そして普通体型の人は、1週間で0.3~0.5kg、つまり2週間で1kg以下の増え方が理想的です。肥満体型の人はこちらの目安も産婦人科医の指示に従いましょう。


臨月の体重増加目安は体型によって異なりますが、いずれの体型の人も急に体重が増えることは好ましくありません。


緩やかな体重増加が理想的だと意識した上で、自分はどのくらい体重が増えても大丈夫なのかを調べ、増えすぎに注意しながら妊婦生活を送ることが重要です。

臨月の体重管理における6つの対策

臨月に入ると様々な理由から体重が増えること分かりましたが、体重の急激な増加を防ぐ具体的な方法として、どのようなものがあるのでしょう。


ここからは、臨月の体重管理における6つの対策を紹介していきます。「このままでは大変」と感じている臨月前の妊婦さんは、以下の内容を参考にしてみましょう。

1:1週間で増やしてもよい数値を把握する

臨月の体重管理における対策としては、1週間で増やしてもよい数値を把握することが有効です。


先にお伝えしたように、妊娠前の体型が痩せ型~普通の人は1週間で1kg以下の体重増加が理想的です。この数値を把握せずに1週間で2kgや3kg増やしてしまうと、産婦人科で指導が入るだけでなく、母体にも赤ちゃんにも負担がかかってしまいます。


週ごとの上限体重を意識して必要以上に体重を増やさないよう、食べすぎをセーブして運動量を確保するなどの対策を講じましょう。

2:バランスのよい食事を心がける

臨月の体重管理をスムーズするためには、バランスのよい食事をすることを心がけましょう。


妊娠すると無性に脂っこいものが欲しくなったり、甘いものばかりを食べてたくなることがあります。しかし、偏った食生活は体重増加に拍車をかけるため、避けた方が良いでしょう。


普段の食事メニューで野菜を多くとることを意識しながら、脂質や糖質の多いメニューを避けるよう、心がけることをおすすめします。

3:間食を控える

臨月に急に体重が増加する原因の1つとして、産休に入ったり里帰りして家にこもりがちになり、間食が増えるということがあります。


臨月の体重管理の方法には、間食を減らしたり、やめるという方法もあります。仕事や家事の合間に間食をとる習慣がある妊婦さんは、次の食事まで食べるのを我慢するようにしましょう。

4:適度に軽い運動を行う

臨月の体重管理には、適度に軽い運動を行うことも効果的です。


特に、取り組みやすいマタニティヨガやウォーキングなどの運動がおすすめです。安定期に入ってから産院で運動をしても良いか相談をした上で、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。


産院によっては、マタニティヨガなどの教室を開いているところもあります。検診で聞いてみるのも良いでしょう。


また、運動はストレス解消にも効果的です。食事制限のイライラも、運動することで少し気が晴れるでしょう。

5:食べ方の工夫をする

臨月の体重増加には、食べ方を工夫をすることも効果的です。食事の回数を増やす「分割食」にしたり、大きく切った野菜を食べて満腹中枢を刺激し、食べすぎを防ぐという方法もあります。


食べ方の工夫では、後ほど「体重が増えすぎないようにする7つのコツ」の箇所で詳しく紹介しています。そちらもぜひ、参考にしてみてください。

6:定期的に体重測定をする

臨月の体重増加を防ぐ方法として、定期的に体重測定をするという方法もあります。体重を意識しながら過ごせば、食事量も自然とセーブできるでしょう。


できることなら、毎日体重計に乗ることをおすすめします。妊婦検診の合間にも自宅で体重測定をすれば、緊張感を持って体重管理に臨むことができるでしょう。

体重が増えすぎないようにする7つのコツ

ここまで、体重管理の方法を紹介してきました。ここからはより具体的に、体重が増えすぎないようにする7つのコツを紹介していきます。


以下の内容を参考にしながら食事を工夫し、臨月体重の急増を防ぎましょう。

1:野菜から食べ始める

臨月の体重増加を防ぐためには、食事のはじめにサラダや汁物などから食べることをおすすめします。


食物繊維を多く含む野菜を食べれば、血糖値の急激な上昇を抑えるだけでなく、咀嚼数が増えて唾液が多く分泌されます。唾液が分泌されることで消化器官の働きが活発となり、体重が増えすぎないように働きかけてくれます。


また、野菜がたっぷり入った味噌汁やスープなどを最初に食べると、かさ増し効果により食べすぎを防ぐことが期待できるでしょう。

2:野菜を大きく切って満足感をアップさせる

野菜を大きく切ったものを食べると、歯ごたえがあるため、咀嚼数が多くなります。噛む回数が増えることで、満腹中枢が刺激され、満足感を得ることができるでしょう。このように、野菜を大きく切って満足感をアップさせることも、臨月に体重が増えないようにするのに効果的です。

3:コース料理のように前菜から順に食べる

臨月の体重増加を防ぐためには、コース料理のように前菜から順に食べることも効果的です。


コース料理と言っても、手の込んだフランス料理を毎食用意するわけではありません。いつものおかずを「サラダ=前菜」、「おかず=主菜」と想定して、小皿に控えめな量でそれぞれ準備します。


時間をかけながらゆっくり少量ずつ食べることで、満足感が得られ、過食を防ぐことができるでしょう。

4:1日の食事を4~5食にする

臨月に急激に体重を増やさない方法として、1日3回の食事を4~5回に増やすという方法もあります。これは、単に食事の回数を増やすというわけではありません。1回につきの食事量を控えめの量あるいは半人前の量に減らし、食事の回数を増やすようにします。


この方法は、空腹感が辛くなる前に次の食事をとるため、過食を防ぐことに効果的です。また、1回の食事量を減らすことで食事の血糖値の上昇も抑えることができます。少し準備は大変ですが、「食事と食事の間の空腹感が辛い」という人におすすめです。

5:甘いものを食事の一環として取り入れる

妊婦さんの中には、「甘いものはダメって分かっているけど、どうしても食べたい気持ちが抑えられない」とい人もいるでしょう。


このような場合は甘いものをひたすら我慢するのではなく、むしろ少ない量の甘いものを食事として食べて、食欲を抑えるという方法もあります。デザートやフルーツなどを食事の一環として、取り入れてみるのがおすすめです。


「食事で食べたから」と気持ちが落ち着いて、間食を我慢することができるでしょう。

6:自分の中で食べてもいい日を作る

臨月の体重管理は母体のためにも子供のためにも大切なことですが、「食事制限はストレスが溜まる」や、「思い切り食べたくてイライラしてしまう」という妊婦さんもいることでしょう。


そのような人には、「何を食べても気にしない日」を作ることをおすすめします。例えば、「妊婦検診の後は好きなものを食べてもいい」と決め、その日までに食事制限を頑張るようにすると良いでしょう。こうすることで、気持ち的にもメリハリがつき、ストレスが少なく済みます。

7:口寂しさを紛らわすものを用意する

臨月に体重が増えすぎないようにするための対策には、ガムなどの口寂しさを紛らわすものを用意するという方法もあります。


好みのフレーバーのものを複数買っておいて、何か食べたくなったら口に含むようにしましょう。この方法で、一時的な対策ですが、食欲を紛らわすことができるでしょう。

臨月に体重が増えすぎるリスク

臨月に体重が増えすぎると、母体と胎児のどちらにも、負担がかかるリスクがあります。


特に妊娠糖尿病になると、赤ちゃんのサイズが大きくなりすぎて、難産になることがあります。自然分娩を望んでいたのに赤ちゃんが産道を通れず、帝王切開となるケースもあるでしょう。さらに、妊娠中の糖尿病は出産後の糖尿病リスクも高めるため、注意が必要です。


また、太り過ぎが原因で出産の際に微弱陣痛になってしまうことや、出血量が多くなるリスクも考えられます。出産時のトラブルは、母体や赤ちゃんにとって命の危険に関わります。このような事態に陥らないよう、出産前から注意していきましょう。


一方、体重が増えないことも母体や胎児にとって、リスクの可能性があります。体重が増えなければ、赤ちゃんの成長が進まず、低体重で生まれることがあります。低体重で生まれた赤ちゃんはその後の発育に影響をきたすことが心配されるため注意が必要です。

臨月の体重管理をしっかりして出産に備えよう

今回は、臨月に体重が増える理由や臨月の体重増加の対策などについて紹介してきました。


臨月は、体型の変化によってむくみやすくなることや、生活スタイルの変化から食べすぎることなどが原因で体重が増えてしまいがちです。臨月に体重が増えすぎると、母体だけでなく胎児や出産に悪影響を及ぼすことがあるため、体重管理をしっかりすることが大切です。


体重増加の目安は妊娠前の体型によって異なる数値となります。また、妊娠期間の体重増加が少なすぎるのも、胎児の成長を妨げてしまいます。


自分の体重増加の目安や、胎児の成長による増加分などを正確に把握した上で、どのくらい増えるのが理想的なのかを知っておきましょう。


記事の内容を参考に、自分に合った方法を見つけて、空腹感を紛らわしながら体重の増加を防いでいきましょう。