妊娠中期とは、妊娠16~27週の期間のことをいいます。この時期にはつわりが治まり、体調が安定してきます。また、お腹の赤ちゃんの動きが感じられる胎動が始まり、お腹も目立ってきます。
一方で、お腹が大きくなることにより、さまざまな症状が出る時期です。体調管理に、より注意が必要な時期でもあります。
妊娠中期に入ると、つわりが治まってきます。しかしこの時期には、下腹や足の付け根にチクチクとした痛みを訴える妊婦さんが多くいます。歩くと痛いと感じる方も多いようです。
安定期といわれる時期ですが、腹痛が続くと心配になり、赤ちゃんへの影響も気になるでしょう。ここでは、妊娠中期に腹痛が起きる原因を見ていきます。
妊娠中期には、赤ちゃんの成長により子宮が大きくなります。大きくなった子宮がお腹を圧迫して腹痛を感じるようになります。
特に、妊娠中期の終わりごろには、子宮の上側がへその上にくるほどに大きくなります。人によっては、生理痛に似た痛みを感じるようです。
妊娠中期には、特に異常がなくても子宮は収縮と弛緩を繰り返します。この子宮の収縮を、痛みと感じる妊婦さんもいるようです。子宮の収縮は、疲労やストレス等が原因と考えられています。
人によっては、キリキリとした胃痛を訴える方もいます。1時間ほど安静にして治まるようであれば、大きな問題ではないでしょう。しかし、横になっても治らない痛みなど子宮が強く収縮すると子宮頸管が短くなり、これが早産の原因になることもあるため注意が必要です。
妊娠中期には、足の付け根がチクチクと痛むことがあります。この痛みは、子宮が大きくなり、子宮を支えている靭帯が伸びることでおこります。どちらか片側だけ、もしくは左右交互に痛むことが多いようです。
靭帯が伸びることでおこる痛みのため、お腹が大きくなる妊娠中期特有の痛みです。妊娠週数が進むと、痛みは治まっていくようです。痛む場合は、安静にして様子を見てください。
妊娠中は、プロゲステロンという黄体ホルモンが多く分泌されます。プロゲステロンは妊娠には必要なホルモンですが、腸の働きを悪くします。
また、つわりによる食欲不振や子宮が腸を圧迫するなどの要因で、妊婦は便秘になりやすくなります。その結果、便秘による腹痛を訴える妊婦が多くいます。
出典:便秘と女性 |全国健康保険協会
参照:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/201609270001.pdf
妊娠中期の終わりごろから、陣痛のような継続した下腹部の痛みがある場合は、早産や切迫流産の可能性があります。
その原因の多くは、感染症といわれています。感染症が原因で、子宮口が柔らかくなり、破水が起こることもあります。定期的に健診を受診し、トラブルの早期発見を心掛けることが大切です。いつもと違う痛みを感じたら、医療機関に相談しましょう。
妊娠中期にはつわりも治まり、安定期に入ります。しかし子宮が大きくなる時期のため、腹痛や腰痛、息切れなどの体調不良が起こりやすい時期でもあります。
体調不良の中でも腹痛は、赤ちゃんに影響がありそうに感じて不安になりがちです。
妊娠中期に起こる腹痛の対処方法を紹介します。自分で対処できない場合は、医療機関に相談しましょう。
痛みがある方を下にして横になったり、姿勢を変えたりすることで痛みが和らぐことがあります。また、腹帯やガードルでお腹を支えると、楽になることもあります。
激しい運動や急な動きは、身体に負担がかかって痛みが増す場合があります。どうしても痛みが軽減されない場合は、医療機関に相談しましょう。
子宮の伸縮・弛緩による痛みは、ツーンとした腹痛と感じられます。痛みを感じたら、しばらく横になるか寝転んで、安静にすると痛みが和らぎます。できれば1時間ほど安静にしましょう。寝転べない場合は、座って安静にします。
しかし、安静にしても痛みが治まらない、出血を伴う、強い痛みが何度も続くようなら、掛かりつけの医療機関に相談が必要です。治まらない痛みは、異常を知らせる腹痛の場合もあります。
生理痛のようなズキズキした痛みは、子宮が大きく伸びていることが原因と考えられます。ほとんどの場合は、しばらく安静にすると痛みが治まるでしょう。
痛みが長続きする、お腹が張って苦しいような状態の場合は、掛かりつけの医療機関に相談してください。自分の判断で、市販の薬は飲まないでください。
下痢をしていないのに、下痢のような痛みがあるときは、ホルモンバランスが崩れていることが多いようです。安静にして痛みが治まるようなら、大きな問題はありません。また、痛みが起きたときに、手足が冷えているなら身体を温めてください。痛みが改善する場合があります。
痛みが長く続く場合は、病気の可能性もあります。特に、出血を伴うときには注意が必要なため、掛かりつけの医療機関に相談してください。
便秘からくる痛みがある場合は、便秘対策が必要です。規則正しい生活やバランスの良い食事、充分な水分の摂取などです。便秘自体は、赤ちゃんに悪影響を与えるものではありませんが、お腹に負担を掛けることはよくありません。
また、下痢の場合は脱水症状にならないように、意識して水分を補給するようにしましょう。一時的な下痢ならば心配ありませんが、長引くようなら医療機関に相談してください。自己判断で市販の薬を飲むことはせず、必ず受診して薬を処方してもらいましょう。
下腹部痛と腰痛があり、出血を伴うようなら切迫流産や切迫早産のリスクもあります。すぐに医療機関を受診することをおすすめします。出血がないなら、とりあえず安静にして様子をみてください。
マタニティガードルや腹帯をすると、お腹や腰にかかる負担を軽減でき、痛みが治まることがあります。また、お風呂に入るなど、身体を温めてリラックスすることも大切です。冷え症の方は、カイロ等を常備しましょう。
妊娠中期に入ると、腹痛や腰痛といった体調不良が出やすくなります。お腹を圧迫するような姿勢を避け、就寝時も横向きになる等の工夫が必要でしょう。ほとんどの場合は、安静にすると治まる体調不良です。
しかし、中には注意が必要な腹痛もあります。妊娠中期の腹痛は、切迫流産の兆候になることもあります。ここでは、注意が必要な腹痛を見ていきます。
妊娠中期に、下腹痛やお腹が張る感じがあるときは横になって安静にしましょう。しかし、いつもと違う痛みを感じたときには注意が必要です。動けないほどの激痛や息苦しさを伴う場合や、子宮が石のように硬く感じるときには、すぐに病院を受診したほうがいいでしょう。
下腹部痛が30分に2回程度起きる、安静にしても痛みが治まらない、胎動を感じない、下痢が続くなどの場合も受診の必要があります。
ほとんどの妊婦さんは、妊娠中期に入ったころから胎動を感じるようになります。赤ちゃんは元気なら動き、寝ていると動かなくなります。赤ちゃんは20分サイクルで寝たり起きたりを繰り返しています。1時間以内に胎動を感じるようなら問題はありません。
胎動の感じやすさには個人差があります。リラックスしている状態で、胎動を感じなくなったら、病院を受診しましょう。胎動を感じなくても、超音波検査で赤ちゃんの状態をチェックできます。
妊娠中期は安定期と呼ばれて、妊娠生活の中ではアクティブに過ごせる期間でしょう。しかし、腹痛やお腹の張りがある場合は、切迫早産が心配な時期でもあります。ほとんどの腹痛は、自宅で安静にすることで改善されるでしょう。
もし切迫早産と診断されても、安静にすることで妊娠が継続できることがほとんどです。妊娠中期の腹痛時に、自宅で安静に過ごすポイントを見ていきます。
医療機関で、自宅で安静にするように診断を受けたら、生活全般を見直しましょう。家事はなるべく楽に行うことを心掛けてください。
しかし、里帰り出産でない限り、家事を誰かが行うことになります。立ち仕事を減らし、できるだけパートナーや家族に家事をやってもらうのが好ましいでしょう。
特に掃除や洗濯は、身体への負担が大きくなります。家族の手助けが見込めないなら、プロの手を借りることも考えてください。買物は宅配サービスがおすすめです。料理はお総菜を利用する等、長時間の立ち仕事を避けるようにしましょう。
家事の負担を減らした上で、安静にすることを心掛けます。睡眠を十分に摂ることだけが安静ではありません。身も心もリラックスできる時間を過ごします。
個人によってさまざまですが、心地よい時間を過ごせることが大切です。音楽を聴く、絵本を読む、編み物をする等々、個人によっていろいろとあります。ぜひ、ご自分がリラックスできるものを用意してください。
妊娠中期の腹痛は切迫流産の兆候の可能性があるというと、怖いイメージを持ってしまう方も多いでしょう。しかし、妊娠時の体調不良はよくあることです。
妊娠中期の腹痛の症状を理解し、正しく対応することが大切です。分からないことや不安なことがあれば、掛かりつけの先生に質問しましょう。心穏やかに妊娠中期を過ごすことが肝要です。