妊娠中に腹痛をおこし、赤ちゃんは大丈夫かと不安になることはよくあることです。特に、流産が多い妊娠初期は、腹痛に対して敏感になりがちです。
妊娠初期に腹痛がおこることはめずらしいことではありません。そして、妊娠初期の腹痛には、さまざまな痛みの種類と原因があります。それぞれの状況に応じて、対処していきましょう。
ここでは、妊娠初期におこる腹痛について紹介します。
妊娠初期とは、妊娠16週未満を指します。つまり、妊娠初期の腹痛とは、妊娠4ヶ月までの腹痛のことです。
一般的に、妊娠5ヶ月になると安定期と呼ばれ、流産の確率が減少します。そのため、妊娠初期の腹痛は流産につながるのでは、と不安を抱く妊婦さんも多いでしょう。
問題のない痛みも多いので、やみくもに不安を抱かないようにしましょう。
妊娠初期は、新しい生命を育むためにホルモンのバランスが劇的に変化し、子宮への血流が増加したり靱帯が引っ張られたりします。そのため、妊娠初期の腹痛は、誰にでも起こる可能性があります。
また、人によって痛みの種類や強さの感じ方はさまざまです。中には、腹痛だけではなく、併せて腰痛や脚の付け根の痛みなどを感じる人もいるでしょう。
受精および着床が成立すると、子宮は受精卵を育てる準備を始めます。そのため、妊婦さんの体の中は、大きな変化がおこります。子宮が大きくなれば、その影響で他の臓器が圧迫されたり、子宮周りの靭帯が引っ張られたりします。
特に不安が強い妊娠初期には、少しの痛みでも妊婦さんは気になってしまいがちです。そんな妊娠初期の腹痛の特徴を見ていきましょう。
妊娠初期におなかが締め付けられるように痛む場合は、少し注意が必要です。子宮が収縮している可能性があるからです。
子宮の収縮は、特に異常のない生理的なものから、腟内の細菌感染などでもおこります。何度も強い子宮収縮を感じるようであれば、受診する必要があります。
また、性感染症を防ぐためにも、避妊具なしでの性交渉は避けましょう。
お腹が張るような痛みは、便秘やガスがたまったことによる痛みの可能性があります。
黄体ホルモンの影響を受けて腸の蠕動運動が鈍るため、妊娠中は便秘になりがちです。また、子宮が大きくなりだすと、腸を圧迫することも理由の1つです。すると、便やガスが腸にたまって膨満感が続き、ときに張るようなお腹の痛みを感じることがあります。
そのようなときは、安静にして様子をみましょう。便秘による痛みと、子宮が収縮する痛みの区別がつかない場合は、医師や助産師に相談しましょう。
妊娠初期には、下腹部がちくちくとした痛みを感じる人もいます。原因は、徐々に大きくなる子宮によるものと考えられています。
また、人によっては受精卵が着床する頃に、いわゆる着床痛と呼ばれる痛みを感じることがあります。受精卵が子宮内膜に入り込む痛みと思われていますが、実は着床痛に医学的根拠はありません。
ちくちくした痛みは、長く続かなければ様子を見ても大丈夫でしょう。
妊娠初期でも、子宮が大きくなってくると脚の付け根が痛むことがあります。これは、子宮を支えている靭帯が子宮に引っ張られるため、両脚の付け根や下腹部につるような痛みを感じます。
この痛みは特に危険性はありませんが、歩行に支障が出るほど痛む場合は、医師に相談しましょう。
上記の痛みのほかにも、下腹部の痛みを感じることがあります。
例えば、子宮筋腫があると重苦しい痛みや締め付けられるような痛みを感じることがあります。妊娠すると、ホルモンの影響で筋腫が大きくなり、痛みを感じやすくなるからです。
子宮筋腫は、場所や数、大きさによって妊娠や分娩に影響を及ぼす可能性もあるため、医師に相談しましょう。
このように、妊娠初期はさまざまな原因で腹痛をおこす可能性があります。また、下腹部痛だけでなく、つわりのために胃が痛むこともあります。腹痛は不快で心配なため、すぐに治したいと考える妊婦さんも多いでしょう。
しかし、自己判断で痛み止めなどの薬を服用してはいけません。必ず、医師に相談し、処方してもらった薬を服用しましょう。ここからは薬に頼らない腹痛の克服法を紹介します。
妊娠中の便秘、下痢によっておこる腹痛を防ぐには、食生活を改善してみましょう。
普段は腸の調子が良好な人も、妊娠すると運動不足や黄体ホルモンの分泌によって腸の働きが悪くなる場合があります。しかも、大きくなった子宮による腸の圧迫などで、便秘や下痢をしやすくなります。
妊娠初期は、なるべく規則正しく食事を摂り、刺激物を避けて、消化の良いものを食べましょう。ただし、つわりがひどい人は、無理に食べる必要はありません。
妊娠中も、仕事や家事、育児のために忙しく動いている人も多いでしょう。しかし、疲れがたまっていたり、立ちっぱなしだったり、長時間動きすぎたりすると、子宮の収縮や便秘・下痢などにつながります。
妊娠中は動きすぎず、ときどき腰を下ろして安静にするなど、体を休めましょう。また、腹痛が起きたときは、横になれるとより良いでしょう。
さらに、睡眠不足は心身ともに悪影響を及ぼすため、特に妊娠中は睡眠時間をしっかりと確保しましょう。
体を締めつける服装は血流を悪くし、冷えの原因になります。そして、子宮の収縮や便秘・下痢などを起こす可能性があります。
妊娠中はバスト、ウエスト、ヒップを締めつける服装は避けましょう。きつい洋服や下着を着けていて腹痛をおこしたら、なるべくゆったりとした服装に変えましょう。
妊娠初期でも、お腹だけでなく胸の大きさも徐々に変化します。妊婦さんにとって快適になるよう工夫されたマタニティ用インナーに変えるのも良いでしょう。
また、特に妊娠初期はつわりが出る時期です。締めつける服装はつわりも助長するため、服装選びは重要です。
妊娠していなくとも、身体の冷えは人体に悪影響を及ぼします。特に、妊娠中は冬季だけでなく、夏季でも冷房対策などに注意すべきでしょう。
妊娠中の腹痛は身体の冷えが原因で強くなる場合があるため、腹痛がある場合は腹部を中心に身体を温めましょう。服装も肌の露出を避けたり、状況に応じてカーディガンや腹巻きなどを着用したりしましょう。
また、足首や手首、首など3首を温めるようにすると冷え性予防にも効果的です。
なお、妊娠中の身体の冷えは腹痛だけでなく、むくみも強くします。身体を温めることは大切です。
腹痛があるなしにかかわらず、妊婦さんは水分を十分に補給する必要があります。
前述したとおり、妊娠中は便秘になりがちです。腹痛の原因となる便秘の対策として、食生活の改善とともに、水分を十分に摂ることが大切です。
それ以外にも、羊水のために体の水分が使われたり、新陳代謝が活発になったりすることなどから、妊娠中は水分不足になりがちになるため、積極的に水分を摂るようにしましょう。
妊娠初期の腹痛の多くは、妊娠による変化がもたらす生理的な現象で、珍しいものではありません。しかし、注意すべき腹痛もあります。
もっとも注意すべき腹痛は、流産の兆候となる下腹部痛です。切迫流産(流産の可能性がある状態で、出血や下腹部痛などの症状がある。)の場合は、早急に対処する必要があります。
1時間ほど安静にしていても治まらない腹痛は注意すべきです。
問題がない痛みの場合、しばらく安静にしていたら徐々に治まってきます。しかし、強い痛みが続いて治まらない場合や徐々に痛みが増す場合は、受診した方が良いでしょう。
強い痛みに加えて出血を伴う場合は、注意すべき兆候です。妊娠初期のわずかな出血は問題ない場合が多いですが、生理よりも多い出血が認められた場合は、切迫流産や流産の可能性があります。
出血を伴う腹痛があったら、すぐに安静にして病院に連絡するか、産婦人科を受診しましょう。そして、出血の色や量などを医師に伝えましょう。
規則的な腹痛を感じる場合は、子宮が収縮している可能性があります。短時間に痛みが現れては消える、を繰り返すときは注意が必要でしょう。
特に、締めつけるような強い下腹部痛や冷や汗が出るほどの腹痛が規則的におこる場合は、病院に相談しましょう。
これまで経験したことのない痛みを感じた際は、注意しなければいけません。
また、突然つわりを感じなくなるなど、体調に変化があったり、違和感を抱いたりした場合は、安静にして体調の変化を確認しましょう。
そして、医師に連絡する際にしっかりと説明できるよう、妊娠週数、痛みの時間や感じ方などをメモしておくと良いでしょう。
妊娠初期の腹痛は、すべて切迫流産や流産につながるわけではありませんが、腹痛がこれらの兆候の場合もあるため、注意しておきましょう。とはいえ、妊娠初期の腹痛はよくあることで、腹痛があるたびに強い不安を抱いていては、大きなストレスとなります。
腹痛の種類や症状、出血の有無、基礎体温の変化など、さまざまな症状も含めて、受診するかを落ち着いて判断しましょう。
なお、腹痛の市販薬を自己判断で服用してはいけません。必ず医師に相談してから服用しましょう。