【専門家監修】妊婦が膀胱炎になりやすい4つの理由|疑いを感じたらするべきこと

膀胱炎の原因とは?

「膀胱炎」の原因は、外から細菌などが尿道に侵入して炎症を起こすことです。外から細菌が入り込みやすいかどうかの違いにより、男性よりも尿道の短い女性の方が、膀胱炎になりやすい傾向にあります。


ほとんどの場合、尿道に細菌が侵入したとしても、尿と共に排出されますので問題ありません。しかしトイレに行くのを長時間我慢したり、体調が悪かったりすると膀胱炎になってしまう可能性が高くなります。

膀胱炎の主な症状7つ

ここからは、膀胱炎によって起こる主な症状を7つ、詳しく紹介していきます。


膀胱炎では尿道に炎症が起きるため、多くは尿に関する症状となっています。すぐにトイレを流すのではなく、いったん尿の様子を確認してみるとよいでしょう。膀胱炎かなと疑問に思った時、これらの症状が出てはいないか確認してみましょう。

膀胱炎の主な症状1:残尿感

トイレで排尿した後、まだ出し切った感覚がなく、すぐにトイレに行きたくなるのが残尿感です。


ほとんどの場合トイレで排尿するとスッキリした感じがありますが、膀胱炎で残尿感がある時はスッキリとはせず、まだ膀胱に尿が残っている感覚があるのに出ないのが特徴です。


膀胱炎の場合は残尿感があるからといって実際に出し切っていない訳ではなく、炎症による知覚異常と考えられています。

膀胱炎の主な症状2:排尿時の痛み

膀胱炎では排尿時に痛みを感じることがよくあります。排尿時といっても、排尿の途中からや後から痛むことも多いです。


排尿時の痛みは主に尿道のあたりや、下腹部となっています。排尿時の痛みは炎症によって膀胱炎になっている膀胱が、排尿によって縮小するために起こる痛みです。通常では、排尿時に痛みを覚えることはありません。

膀胱炎の主な症状3:血尿

尿に赤い血が混じったり、少し赤くなったりする「血尿(けつにょう)」の症状が見られます。


膀胱炎による血尿は、細菌によって膀胱の粘膜が傷つくことにより起こります。尿に血がまじるということで目につきやすいため、血尿の症状から膀胱炎に気づくことが多いでしょう。


心配な方は、排尿した尿が正常な色をしているか、血尿になっていないか確認するとよいでしょう。

膀胱炎の主な症状4:白濁した尿

膀胱炎になると血尿以外に、白濁した尿が出てしまうことがあります。尿が白濁しているのは、膀胱炎を治すために増えた白血球や、細菌によって炎症を起こした粘膜が傷つきはがれたものが混ざっているためです。


血尿のように分かりやすく赤くなっているということはありませんが、尿全体が白く濁ったり、ドロリとした白いものが混ざったりしていると要注意です。

膀胱炎の主な症状5:頻尿

ふだんにはありえないほどトイレの感覚が狭まり、30分から1時間に1回トイレに行きたくなったり、中には10分から15分ごとにトイレに行きたくなったりする、「頻尿(ひんにょう)」の症状があります。


残尿感がある場合には、頻尿にもなりやすい傾向にあります。頻繁にトイレに行きたくなるといっても、実際に排尿すると少量の尿しかでないことが多く、出してもまだ尿が残っている感じがしてまたトイレに行きたくなります。

膀胱炎の主な症状6:発熱

膀胱炎で発熱している時は、すでに炎症が膀胱だけにとどまっていない可能性があるため、ただちに病院を受診した方がよいでしょう。


膀胱炎で発熱することは稀です。しかし膀胱炎が悪化して細菌が腎臓の中の「腎盂(じんう)」と呼ばれる部位まで到達してしまうと、38度近く発熱することがあります。発熱した場合は、膀胱炎ではなく「腎盂腎炎(じんうじんえん)」の可能性が高いでしょう。

膀胱炎の主な症状7:尿の異臭

ふだんは尿の臭いを感じることは少ないのですが、膀胱炎の時は排尿直後からアンモニア臭を感じることがあります。


尿の異臭は尿道や膀胱に侵入した細菌の働きによるものです。そのため、排尿した直後の尿からアンモニア臭がある場合(尿の臭いが強い場合)は、尿道の炎症や膀胱の炎症が起こっている可能性が高いでしょう。

妊婦が膀胱炎になりやすい4つの理由

もともと膀胱炎は尿道の長さの違いもあり、男性よりも尿道の短い女性に多い病気ですが、妊娠中の妊婦は通常時よりも膀胱炎になりやすいと言われています。


ここからは、妊婦が膀胱炎になりやすい4つの理由を詳しく見ていきます。ぜひ参考にしてみてください。

妊婦が膀胱炎になりやすい理由1:免疫力の低下

妊婦が膀胱炎になりやすい理由の1つに、妊娠中は免疫力が低下しているため細菌による炎症が起こりやすい状態になっていることがあげられます。


妊婦の免疫力が低下するのは、免疫力によって胎児を異物と認識し、攻撃してしまわないためです。胎児を守るために、妊婦は自分でも気づかないうちに免疫力を低下させているのです。

妊婦が膀胱炎になりやすい理由2:膀胱収縮力の低下

妊娠すると女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」や「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が増えますが、こういったホルモンが平滑筋(へいかつきん)の力を弱め、膀胱の収縮力を低下させることで尿を出し切れず、細菌が繁殖しやすくなります。


女性ホルモンの働きは、いずれ胎児を分娩する際には必要な働きです。しかし妊婦が膀胱炎になりやすい理由の1つにもなっています。

妊婦が膀胱炎になりやすい理由3:尿管や腎臓の圧迫

妊娠月数が進むと妊婦の体の中で胎児が大きくなるにつれて子宮も大きくなり、それに伴って腎臓や尿管が圧迫されることで腫れたり、尿が逆流しやすくなって細菌に感染しやすくなったりします。


本来は排尿によって膀胱の中にある細菌も出ていきますが、逆流すると細菌感染を引き起こしやすい、膀胱炎が起きやすい状態になってしまいます。

妊婦が膀胱炎になりやすい理由4:膣の自浄作用の低下

妊娠していない状況では膣内を酸性に保つ「デーデルライン桿菌」という常在菌があるため膣には自浄作用があるのですが、妊娠するとこの菌の数が減少して自浄作用が低下し、膣から尿道に細菌が侵入しやすくなっています。


妊娠することで膣の自浄作用が低下し、妊婦の膣内に細菌が繁殖してそのまま近い尿道に侵入してしまうのです。

膀胱炎による胎児への影響とは?

妊婦の膀胱炎がただちに胎児に影響を与えるかというとそんなことはないのですが、放置するのは危険です。


妊婦は膀胱炎になりやすいのですが、膀胱炎になっただけではすぐに胎児に悪影響がでることはないでしょう。しかし膀胱炎がなかなか治らなかったり、放置しすぎて悪化したりすると危険です。

放置すると早産や流産の可能性も

膀胱炎の状態ではさほど影響はなくても、膀胱炎を放置すると「腎盂腎炎(じんうじんえん)」まで発症してしまい、子宮内にも影響を与えて早産や流産に繋がる可能性があります。


尿道から入った細菌が膀胱で炎症を起こし、さらに腎臓内の腎盂にまで到達した状態が腎盂腎炎です。腎臓にまで来た細菌が子宮内に到達して卵管に感染してしまうと、子宮を収縮させて早産や流産を引き起こす可能性があります。

膀胱炎の疑いがある妊婦がするべきこと3つ

ここでは膀胱炎の疑いが見つかった場合、妊婦はどうすればよいのか対策法を3つ紹介していきます。


膀胱炎は妊娠中の妊婦にとってなりやすい病気の1つであると同時に、放置した場合に胎児が早産や流産するリスクが高くなる可能性のある病気です。妊婦が早めに気づいて、適切な対応をすることが大切です。

膀胱炎の疑いがある妊婦がするべきこと1:早めに産科へ行く

もしも膀胱炎かもと思ったら、早めに産婦人科へ行き、診察してもらいましょう。膀胱炎の段階では、まだ妊婦にも胎児にもそれほどの悪影響はありません。また膀胱炎の症状の1つ、頻尿は妊婦にも多い症状であるため気づきにくい場合もあります。


しかし、膀胱炎を放置して腎盂腎炎になってしまうと危険です。膀胱炎かもしれないと感じたら、早めに産婦人科へ行きましょう。

膀胱炎の疑いがある妊婦がするべきこと2:尿検査を受ける

膀胱炎の疑いがある場合、尿検査を受けて尿の中の白血球や細菌の数を調べて膀胱炎かどうか確定します。


膀胱炎だった場合、妊婦は早めに治療を開始した方がよいですし、尿の中に血が混じったり一定の量以上の白血球や細菌が混じっているときは、尿検査すると分かりやすいのです。

膀胱炎の疑いがある妊婦がするべきこと3:服用できる薬で治療する

妊婦が膀胱炎になっていた場合、妊娠中でも服用できる「抗菌薬」で治療するのでとくに心配はありません。


妊婦の薬の服用には注意が必要です。そのため抗菌薬を服用するのを躊躇する妊婦もいらっしゃいますが、膀胱炎にかかったまま放置するリスクの方がよほど高いでしょう。


なるべく妊婦でも影響の出にくい薬で治療するため、病院の指示に従ってください。ほとんどの場合は、3日から4日の服用で改善することが多いでしょう。

妊婦が膀胱炎を予防する方法5選

ここからは、膀胱炎にならないよう予防するために何をしたらよいのか、予防方法について紹介します。


妊婦の膀胱炎で大切なことは早めに見つけて治療することですが、そもそも膀胱炎にならないように予防することも大切です。


ただ、妊婦はいくつかの理由で妊娠する前よりも膀胱炎になりやすくなっているため、しっかりと意識して予防する必要があります。

妊婦が膀胱炎を予防する方法1:尿意を我慢しない

妊婦は膀胱炎の他に頻尿にもなりやすいのですが、トイレが近いからといって尿意を我慢するのではなく、尿意を感じたらすぐにトイレに行くようにしましょう。


尿意を我慢して膀胱の中に長く尿をためていると、それだけ細菌が繁殖しやすい状態が続いてしまいます。早めに排尿して細菌を外に出してしまうことが大切です。

妊婦が膀胱炎を予防する方法2:清潔に保つ

きちんと細目に入浴したり下着を取り換えたりして体を清潔に保つことも、細菌の繁殖を防ぐことに役立ちます。


とくに尿道周辺は清潔に保つことを心がけると、膀胱炎の予防に効果が期待できるでしょう。

妊婦が膀胱炎を予防する方法3:後ろ方向に拭く

トイレで排尿や排便した後に、清拭の向きを後ろ方向に拭くよう気をつけることで、尿道付近に細菌が繁殖することを防げます。


とくに排便後に前方向に拭いてしまうと、肛門付近の大腸菌が膣や尿道の近くについてしまい、膀胱炎の原因になってしまうことがあります。排尿後もそうですが、排便の後の清拭方法にも注意して、尿道付近を清潔に保てるように意識しましょう。

妊婦が膀胱炎を予防する方法4:水分を摂る

頻尿になることを嫌がって水分量を減らしてしまう人もいますが、妊婦の場合は膀胱炎を予防するために水分はなるべくしっかりと摂って、細菌を排尿で流せるようにしておきましょう。


トイレが近いことが気になる人もいるでしょう。しかし、トイレを我慢したり水分摂取量を減らすのは悪手です。多少トイレの回数が増えたとしても、しっかりと水分を摂って細菌を流した方が膀胱炎予防になるでしょう。

妊婦が膀胱炎を予防する方法5:免疫力を高める

妊婦はふだんより免疫力が低下しているため、免疫力が高める生活習慣に切り替えていくことも膀胱炎予防に効果的です。


とくに注意したいのは、疲労や睡眠時間です。長時間勤務で疲労がたまったり、睡眠時間が短いような状態が続いたりすると免疫力が低下しやすくなります。


妊婦であることから、お酒も控えた方がよいでしょう。バランスの良い食事を摂り、規則正しく、免疫力を高める生活にしましょう。

妊婦が「膀胱炎かも」と感じたらまずは産婦人科へ

妊婦は膀胱炎になりやすいということを理解し、尿や下腹部、膀胱に異変を感じたらまずは産婦人科を受診することをおすすめします。


膀胱炎はけして恐ろしい病気、という訳ではありません。膀胱炎の状態では胎児にも悪影響は出ていないため、過度に心配する必要はないです。


しかし膀胱炎が怖いのは、長引いたり放置で悪化すると胎児にまで悪影響を及ぼす可能性があるということです。早く発見して、早めに治療することが大切です。