【専門家監修】妊娠は簡単?意外と複雑な妊娠の仕組み5つと準備することを紹介

妊娠は簡単にできる?

「妊娠を望んでいる」「いつかは妊娠したいと思っている」という方は多いのではないでしょうか。妊娠は望んだとき簡単にできるものではありません。これは、妊娠の仕組みが意外と複雑だからです。


妊娠には複雑なプロセスがあり、その過程に問題があると成立しません。こうした妊娠の仕組みや、妊娠するための準備、妊娠しにくい人の特徴を知っていることはとても重要です。これらを知っていれば、自分に合った対策をたてることができます。

自然妊娠とは

自然妊娠とは、「健康な男女が性交渉をおこない、医療的な介入なく妊娠が成立した」ことを指します。そして妊娠の成立とは、大まかにいうと「精子が卵子と結びついて受精卵となり、子宮で成長し始めた状態」です。


男女ともに年齢が上がるにつれて生殖機能が低下します。女性では、卵子の数が減る「卵巣予備能力の低下」や、受精卵がうまく成長しない「卵子の老化」などが確認されています。また、男性では勃起しづらくなったり、「精巣機能の低下」を起こすと言われています。


このように複雑な仕組みやさまざまな要因により、健康上の問題がなくても必ず自然妊娠ができるわけではありません。

不妊

不妊とは、「妊娠を望む男女が避妊をせず性交渉をしているにもかかわらず、1年以上妊娠しない」状態を言います。


性交渉をしていても妊娠に至らない場合、何か原因があるかもしれません。妊娠ができないと不安を抱えているなら、1年を待たずに医療機関へ相談し対策を考えると良いかもしれません。

意外と簡単ではない妊娠の仕組み5つ

妊娠には、「性交渉」→「排卵」→「受精」→「受精胚の発育」→「着床」→「着床後の胚発達」の6つのステップがあります。


これらの過程を紐解いていくと、さらに複雑な仕組みあります。詳しい妊娠の仕組みについて順番に説明していきます。

意外と簡単ではない妊娠の仕組み1:妊娠できる日は限られる

妊娠はいつでもできるわけではありません。これは、「排卵した卵子の寿命が24時間程度」であるためです。


生理の周期が28日間だとすると、この期間の中で受精できるのは1日だけです。これを単純計算すると、365日のうち妊娠できる日はたった13日間しかないということになります。


卵子が排卵後24時間の寿命があるのに対し、精子は3日程度の寿命があると言われています。精子は時間をかけて子宮口→子宮頸管→卵管へと進んでいきます。


そのため、精子が卵管にたどりついたときに、排卵された卵子が子宮頸管で待っている状態でないと妊娠しません。

意外と簡単ではない妊娠の仕組み2:生理周期は個人差がある

そもそも生理とは以下のサイクルで繰り返しており、生理開始1日目から、次の生理が始まった日の前日までの間隔を生理周期と呼びます。


①妊娠に向けて卵子が成熟する(卵胞期/低温期)
②成熟した卵子が卵管采に放出される(排卵期/高温期)
③妊娠に向けて子宮内膜が肥大し、赤ちゃんのためのベッドがつくられる(黄体期/高温期)
④受精卵にならなかった卵子が寿命を迎え、使わなかった赤ちゃんのベッドが剥がれ落ちる(生理/低温期)


そして、このサイクルを引き起こしているのが女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」です。このホルモンは脳の指令によって子宮や卵巣から放出され、生理周期を一定に保ちます。


生理周期は25~38日と範囲が広く、その月によって数日ずれることがあるので、個人差があると言えます。


また、子宮や卵巣、または脳に何かしらの問題があると、生理周期が早い・遅い、あるいは周期にバラつきが出る生理不順が起こります。単純な個人差や、何かしらの要因によって生理周期は変わってくるのです。

意外と簡単ではない妊娠の仕組み3:ストレスに影響される

ホルモン分泌はストレスに関りがあると言われています。


妊娠の希望の有無にかかわらずストレスを抱えていると、生理が遅れたり不順になったという経験がある方もいるでしょう。


生理はホルモンによって引き起こされる現象なので、ホルモンの分泌を妨げたり、過剰に分泌させるようなことが起これば、逆説的に生理周期が乱れます。


例えば、プロラクチンという女性ホルモンは、ストレスに関与すると考えられています。プロラクチンは母乳の分泌・産生、卵巣機能を抑制する働きがあります。母乳育児をしていると産後の生理開始が遅くなるというのは、このプロラクチンが排卵を抑制しているためです。


過度なストレスを抱えると、このプロラクチンの分泌量が増え、排卵しづらくなることがあります。その結果不妊になったり、生理周期が乱れて排卵日の予測が難しくなるといった影響が出るのです。

意外と簡単ではない妊娠の仕組み4:婦人科系の病気も

日本産婦人科学会によると、女性側が原因の不妊には「排卵因子」「卵管因子」「頸管因子」「免疫因子」「子宮因子」の5つがあると言われています。


生理周期が一定で、健康に問題がないように感じていても、気づかないうちに婦人科系の病気が隠れていることもあります。

意外と簡単ではない妊娠の仕組み5:男性不妊も

不妊原因の割合は男女半々とも言われ、男性側に原因があることは少なくありません。男性側の原因としては、主に「造精機能障害」「精路通過障害」「性機能障害」の3つが知られています。


最も多いと言われているのは、精子がつくられる量が少ない、精子がない、精子の運動性が低いといった造精機能障害です。


いずれにしても、男性の不妊は自覚症状がないことが多いです。なかなか妊娠しないと悩んでいる場合、女性だけでなく男性側の要因がある可能性を考慮しましょう。

妊娠するための準備9つ

ここまでは、妊娠の仕組みについて説明してきました。複雑な過程やさまざまな要因があり、妊娠は簡単にしないことを理解いただけたのではないでしょうか。


ここからは妊娠の成立に向けてやるべき準備について、具体的に説明していきます。

妊娠するための準備1:ストレスをためない

ストレスはホルモンバランスを崩したり、男性では勃起障害に繋がったりと、妊娠を妨げる要因になります。


赤ちゃんのことで頭がいっぱいになってしまうと、心に余裕がなくなり強いストレスを抱えてしまいます。ストレスを感じるときは、夫婦ともにリラックスを心がけて生活してみてください。

妊娠するための準備2:規則正しい生活を送る

妊娠するための準備と言っても難しいことばかりではありません。まずは規則正しい生活をおくり、健康な体をつくることが大切です。


睡眠中はさまざまなホルモンが分泌されるため、十分な睡眠をとれないとホルモンバランスが崩れたり、就寝時間や起床時間にばらつきがあると、自律神経のバランスが崩れることもあります。


日中に運動を心がけたり、ストレスを発散させ、寝る前はスマホの使用を控えるなど、質の良い睡眠を得ることも大切です。夜は早めに眠り、朝は決まった時間に起きるように心がけることが、規則正しい生活の第一歩です。

妊娠するための準備3:食事のバランスに気をつける

食事は栄養を取るだけでなく、ホルモンバランスを整えたり、身体の酸化を防ぐ効果への期待、そして妊娠によって不足するまたは赤ちゃんの成長必要になる栄養素を補充しておく意味でも大切です。


まずは1日3食栄養バランスを考えた食事を摂ることを意識しましょう。外食やコンビニ食が多い場合は、おにぎりだけ・パンだけではなく、サラダやスープを追加し、1食で複数の食材を摂ることが大切です。


また、急激な血糖値の上昇はホルモンバランスを崩すことにも繋がります。主食は玄米や全粒粉を選択したり、食物繊維を多く含むサラダを先に食べる、空腹時に炭水化物の暴飲暴食は避けるなども有効です。

妊娠するための準備4:適度な運動

適度な運動習慣は血流を改善し、卵巣や子宮へ栄養を運ぶという重要な意味があります。人の体は何をするにも栄養や酸素を必要とします。卵巣や子宮に血流が増えると、それだけ赤ちゃんが育つ環境が整いやすくなるといえます。


妊娠してから運動を始めると、赤ちゃんへの影響や、つわり、体調の変化から運動をしにくくなることもあるため、妊娠前から体力や筋力をつけて、基礎代謝をあげておきましょう。


ウォーキングや、ストレッチ、ヨガなど日常に取り入れやすく、自分が楽しいと思える運動がおすすめです。無理なく続けられるような自分に合う簡単な運動を探してみてください。

妊娠するための準備5:葉酸を摂取する

赤ちゃんの脳や神経は妊娠7週頃までにつくられるため、この頃に葉酸が不足すると、脳やせき髄の発達に異常をきたす可能性があると言われています。


妊娠するための準備として、日ごろから葉酸を多く摂るように心がけましょう。ブロッコリーやホウレン草などに多く含まれています。


日常的に意識して葉酸を摂ることが難しい場合は、サプリメントを飲むと簡単に栄養摂取できます。

妊娠するための準備6:喫煙・飲酒

まず妊娠してから禁煙するのではく、妊娠するための準備として禁煙することが望ましいです。


たばこに含まれるニコチンやタール、一酸化炭素といった有害物質には、依存性だけでなく血管を収縮させる効果があります。血管が収縮するとは、血液が通る道が狭くなるということなので、当然血流が悪くなり子宮や卵巣へ必要な酸素や栄養が届きにくくなります。


また、妊娠をしていなければ、お酒を適量飲むのはストレス発散にもなりますが、注意して欲しいのは、赤ちゃんを望んで生活しているということは、妊娠している可能性があるという点です。


特に妊娠初期は、赤ちゃんの脳神経など重要器官が形成される時期です。妊娠に気づいたときには、日常的に大量の飲酒をしていたなんてことにならないように、早めの節酒・禁酒を始めましょう。

妊娠するための準備7:適度な体重を維持

痩せすぎまたは肥満は、直接赤ちゃんに影響を与えるだけでなく、母体にもさまざまな悪影響があると言われています。


人によって身長が違うので、適正体重と言われても何キロが目安なのかわかりません。適度な体重を知るためには、BMIを参考にしましょう。


適正なBMI値は19~25といわれています。

妊娠するための準備8:風疹の抗体チェック

妊婦が風疹にかかると、赤ちゃんが先天性風疹症候群にかかることがあります。


先天性風疹症候群とは、風疹に免疫のない母親が妊娠初期に風疹に感染することによって、母体を通して赤ちゃんにも感染し、先天性疾患を引き起こす病気です。この病気にかかると、生まれてきた赤ちゃんに心臓病や難聴を引き起こします。


幼少期に予防接種をしていても、時間がたつにつれて免疫が薄れている場合もあります。家庭内感染を防ぐためにも、男性・女性双方が免疫の有無を調べる必要があります。結果によっては、医師の指示に従い風疹ウイルスの予防接種を受けましょう。

妊娠するための準備9:婦人科系の検診と性病検査

妊娠への準備に必要な検査とは、子宮頸がん・乳がんの検診と、性感染症の検査を済ませておくことも大切です。


子宮頸がんは、20歳以上の女性であれば2年に1回の頻度で住民票がある自治体からの補助によって受けることができます。せっかく妊娠がわかっても、子宮頸がんが見つかると治療が必要になったり、場合によっては授かった命を諦めなければならない可能性もあります。


早期発見・早期治療につなげるため、婦人科系の検診は妊娠前に済ませておくことをおすすめします。


また、性感染症は自覚症状がないまま進行している場合も多いです。母体や赤ちゃんへの影響だけでなく、不妊の原因にもなるので、女性だけでなく男性も一緒に検査を受けましょう。

妊娠しにくい人の特徴6つ

年齢や体型、生活習慣、生理の状況など、妊娠しにくい人には特徴があります。これらの特徴を知り対策を考えてみましょう。

妊娠しにくい人の特徴1:35歳以上の女性

加齢とともに妊娠しにくくなるという話はよく耳にします。これは、生まれ持った卵子の数には限りがあり、新たに卵子をつくる機能がないため、加齢とともに減っていくからです。


一般的に、女性が妊娠できるのは閉経の10年前までといわれています。


そのため、平均閉経年齢から考えると35歳以上は妊娠をしにくいと言えますが、35歳を超えると妊娠できないと決まっているわけではありません。妊娠を望むなら、早めに産婦人科へ相談へ行きましょう。

妊娠しにくい人の特徴2:冷え性

冷え性とは体をめぐる血液の流れが悪く、手足などの末端の毛細血管に血液が流れにくくなっている状態です。血流が悪いということは、卵巣や子宮に酸素や栄養を運びにくい体質とも言え、卵巣機能の低下を招きます。


冷え性には「お風呂にゆっくり浸かる」「体を温める食材を食べる」「運動不足を解消する」ことが有効です。


女性は男性に比べ筋肉量が少なく基礎代謝が低いため、熱をつくりにくいという特徴があります。しっかりと冷え対策をして、授かりやすい体質を目指しましょう。

妊娠しにくい人の特徴3:痩せすぎや太り過ぎ

妊娠中は体重管理が必要ですが、痩せすぎや太り過ぎは妊娠のしにくさにもつながります。


痩せすぎでは卵巣年齢を高めたり、排卵性不妊を引き起こすリスクがあります。そのため、妊娠に至るまでの期間が正常体型の女性の4倍ともいわれています。また妊娠しても貧血や赤ちゃんが低体重児になるといったリスクが考えられるので、体重を増やすことは重要です。


太り過ぎでも、卵巣年齢の高齢化や排卵障害のリスクがあり、妊娠に至るまでの期間は正常体型の女性の2倍といわれています。


さらに妊娠後も、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症を引き起こしたり、流産・早産のリスク、帝王切開のリスクが高まったり、赤ちゃんの発達にも悪影響があると言われています。

妊娠しにくい人の特徴4:ストレスフルな生活

ストレスを感じる原因として、仕事・睡眠状態・人間関係・経済状況・健康への不安などが挙げられます。妊娠しづらいと悩みを抱えていると、それだけでも心理的負担が大きいです。それに加え本格的な妊活を行っていると、経済的な負担も大きいです。


早朝出勤や頻繁な残業、夜勤業務など規則的な生活を妨げる要因があったり、多忙や心理的負担から慢性的な睡眠不足があると、不妊の原因にもなります。可能であれば、働き方の相談をして規則的な生活を送れるよう環境を整えていきましょう。


またストレスとは自分の考え方にも左右されます。ポジティブな思考を意識し、仕事とプライベートでオンオフを分け、ストレス発散を心がけましょう。


つらいことや悲しいことがあったあとには、自分へのご褒美をあげたり、好きなことをする時間をとるよう意識して、気分転換を図るのも有効です。

妊娠しにくい人の特徴5:重い生理痛

「生活に支障をきたすような強い痛みがある」「年々生理痛が重くなる」「突然生理痛が重くなった」といった症状がある場合、婦人科系の疾患が隠れている可能性があります。


重い生理痛の原因には、子宮内膜症や子宮筋腫、卵管炎などの病気が考えられます。こうした婦人科系の疾患は、受精や受精卵の着床を妨げるなど、不妊の原因になります。


ただの生理痛だからと我慢せず、早めに受診をしましょう。

妊娠しにくい人の特徴6:生理不順

生理周期が一定であることは、受精のタイミングを計るうえで重要な要素になります。


生理周期は25日~38日が正常と言われています。「生理の周期が早すぎるまたは遅すぎる」「月によって生理周期にバラつきがある」場合、ホルモンの異常や無排卵などの卵巣機能障害の可能性があります。

妊娠は意外と複雑で簡単ではないのでしっかりと準備しよう

パートナーがお互いに生殖機能の問題を抱えていなくても、必ず妊娠できるとは言い切れません。


妊娠しづらいと感じていたら、まずは自分とパートナーの体を知ることから始めてみましょう。また、生活習慣の改善や、ストレスフリーな生活を目指すなど、できることから始めて幸せな未来への足掛かりとしてください。