妊娠線とは、皮膚の深い部分が裂けてできる、赤紫色のひび割れのような線のことを言います。時間が経つと、白っぽく変化します。
人によって、太さや本数は違います。形状や模様も異なり、細いものがたくさんできる人、太いものが少しだけできる人、その両方ができる人もいます。
正式には「線状皮膚萎縮症(線状皮膚萎縮症)」「皮膚伸展線条」と言い、ストレッチマークや肉割れとも呼ばれます。乳房あたりにできると、授乳線とも言われます。
腹部の中心に発生するため一括りにされてしまうこともあるのですが、妊娠線と正中線はまったく別のものです。
妊娠線は新しくできるものですが、正中線とは生まれた時からもともと誰もが持つものです。通常はほとんど分からないのですが、人によってうっすら見える濃さで存在することもあります。
この正中線を中心に受精後、生物はどんどん細胞分裂を繰り返すことで体の形が作られていきます。その名残が正中線として残るのです。
妊娠線は個人差がありますが、お腹が本格的に大きくなる妊娠5ヶ月以降にできやすいと言われています。食べづわりなどで体型が急速に変化してしまう人は、妊娠線がでるのも早いです。
お腹にできるイメージが強いのですが、太ももやおしり、バスト、二の腕、ふくらはぎなどにできる人もいます。
ここで、妊娠線ができる原因を5つ見ていきましょう。
妊娠や体重の増加、胎児の成長などに伴う急速な皮膚の伸びが原因で発生します。
急に体重が増えると、肌の表面は柔らかいので対応できるのですが、その下にある真皮や弾性繊維などの皮下組織はついていけないのです。妊娠16週頃のつわりが落ち着き食欲が増すときには特に注意が必要です。
また、妊娠線という名前はついていますが、男性や成長期の子どもであっても急激な体重の変化で現れるので、誰にでも起こりうる現象なのです。
乾燥している肌は角質や真皮層の水分量が減っている証拠です。皮膚が硬くなっていると、伸びにくいため妊娠線はできやすくなります。
また、外からの刺激も受けやすいため痒みも増えます。アトピー肌体質の人も同じで、皮膚が硬く弾力が少ないので注意が必要です。
身長が低い人だと骨盤が小さいので、お腹が前に出やすくなります。皮膚の表面積が小さいため胎児が成長するにつれ、皮膚が大きく引き伸ばされやすくなってしまいます。
妊娠初期は、胎児が1人でも2人でもお腹の大きさは変わりませんが、多児妊娠ですと妊娠6ヵ月頃から急に大きくなり、妊娠線ができやすくなります。妊娠8カ月頃には単胎妊娠の人の臨月ほどの大きさになります。そして最終的には13~15kgも体重が増えるそうです。
1人よりのときより、どうしてもお腹が大きくなってしまうことから多胎妊娠の場合は妊娠線ができやすくなります。
加齢により皮膚の弾力性は落ちています。
そのため、皮膚の柔軟性が低くなっていると真皮が表皮の伸びについていけないことが多く、高齢出産の場合は妊娠線が発生しやすいと言われています。
妊娠中の肌の悩みとしてあげられる正中線は、早くて妊娠中期の妊娠16週ごろから気づく人もいるようです。この時期は妊娠5ヶ月に入り、つわりも収まって、人によっては赤ちゃんの胎動も感じられるときです。
初めは薄茶色っぽい縦線から徐々に濃く太い線になり目立ってきます。ただし濃さにも個人差があるので、妊娠すると必ずしも立つようになるわけではありません。
この正中線、目立つのには3つの原因があるのでご紹介します。
まずあげられるのは、メラニン色素の増加です。
妊娠中は、胎盤がメラニン細胞刺激ホルモンを多く産生するため、乳輪や鼠径部の色が濃くなったり、日焼けしやすくなったり、シミができやすくなったりします。そして正中線もこのホルモンの影響を受けているのです。
通常、ほとんど確認できないくらいの薄い正中線が、メラニン色素により茶褐色になるうえ皮膚も引き伸ばされていくので、より一層はっきりと確認できるようになります。
女性ホルモンがたくさん分泌されることで、ホルモン同士のバランスが乱れると、腕や足の毛などの体毛も濃くなります。お腹の毛が濃くなるのもその一つです。
妊娠中は、中期から後期のお腹が大きくなるころに産毛も濃くなるので、正中線がさらに濃く見えることもあるのです。
しかし、色素によって濃くなっているだけの現象であるため、妊娠線とは違って皮膚組織がダメージを受けないので、かゆみが出ることもありません。
お腹が大きくなると、影になる部位があります。ちょうど正中線ができる位置も影になるので、余計に濃くなっているように見えるのです。
産後は、お腹も元どおりの大きさに戻りますので心配はいりません。
実のところ、妊娠線や正中線に確実に有効であると医学的に実証されている予防策はないのです。しかし、一般的に効果があると言われている方法はいくつかあります。
「どうせできてしまうのだから…」とあきらめてしまわないで、自分なりの予防方法を見つけていきましょう。
では、何をすれば良いのでしょうか。その予防ポイントを4選ご紹介しますので、担当医に相談して無理のない範囲で実践してみてください。
妊娠線を予防するのによくあげられるのが、保湿です。お腹が大きくなるにつれて皮膚が引き伸ばされても、肌に水分と油分がちゃんと保たれていれば柔軟性が高くなり妊娠線はできにくいと考えられます。
ホルモンの影響でのかゆみも軽減が期待できます。妊娠線ケアのクリームと一般的なボディクリーム、どちらを使用しても大丈夫でしょう。
新しく購入するときは、店員さんに相談したりレビューを見たりして自分に合ったものを選びましょう。
妊娠線予防でよく言われているのが保湿ケアです。ボディクリームやオイルなどを肌に塗ってからマッサージをすることで、保湿に加えた効果が期待できます。おすすめはバスタイムや入浴後です。
新しく買うときは、店員さんに相談したりレビューを見たりして自分に合うものを選びましょう。
強い力でマッサージしてしまうと、余計に広がってしまうこともあるので注意が必要です。また妊婦さんはお腹が張っているときは避けてください。
急激な体型の変化が一番の原因なので、まずは体重管理をしましょう。
急速な増量は妊娠線ができやすいだけでなく、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、巨大児のリスクが高まるので、注意が必要です。担当医の指導に従った適切な栄養管理は、健康のためにも妊娠線の予防としても欠かせません。
妊娠線ができにくい理想の体重増加量は妊娠前のBMIで変動しますが基本はプラス8~10kgほどです。12kg以上は増えないように気をつけなくてはなりません。
いつから対策を始めたらいいのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
体質によって差はありますが、早めに対策をとるに越したことはありません。保湿ケアなどはとくに継続して行うことで効果が出てきますし、習慣化させることが大切です。
安定期に入るころから始める人が多いようですが、体調が悪いときは無理して行わないようにしましょう。お腹が大きくなっきたら、朝晩2回塗ると良いでしょう。
気をつけていろんな対策をしていたにも関わらずできてしまった、ということはよくあります。産後もくっきりと残った妊娠線や正中線は気になってしまうと思います。
妊娠線のように、断絶した真皮と皮下組織を元の状態に戻す方法は確立されていません。なかなかシワが消えないように、妊娠線は簡単に消すことができないのが現状です。
初めて出産をする人は気になると思いますが、2人、3人目となると気にしない人も多いです。なぜなら、ホルモンの影響によって色素が濃くなっているだけなので、いずれは目立たなくなるからです。
妊娠線とは違い、正中線はホルモンバランスが元に戻るにつれて徐々に消えていくのです。薄くなるのにかかる時間は個人差がありますが、半年から1年ほどで消えていくことが多いようです。早くて数週間で消えた人もいるようです。
産後は、お腹は皮がたるみ、妊娠線が目立って見えます。また、痩せたら目立つようになることもあります。自分で治すことは難しいですが、しっかりケアをすることによって目立ちにくくすることはできます。
スキンケアのほかにもおすすめなのが、筋トレです。筋トレによって成長ホルモンの分泌を促進させ、真皮層や、表皮の代謝を促されます。肌が生まれ変わることで、妊娠線を目立たなくすることが可能です。
妊娠をして、実際に体感がないとなかなか妊娠線や正中線に対する悩みやどういうものなのか想像するのは難しいでしょう。
しかし、できてしまった妊娠線や正中線を薄くするために、ケアや対策はできますので具体的に何をすれば良いのか見ていきましょう。
ここではその方法を5つご紹介します。
妊娠線や正中線が強くでていると、その後も跡が残ってしまう可能性もあります。それを防ぐ為には長時間の肌の保湿も行っていくと良いでしょう。化粧水で水分を与えるだけでは、十分とは言えません。
化粧水をつけると一時的には肌が潤って弾力は良くなるのですが、しばらくすると蒸発してしまうので、化粧水で潤した水分を肌が保っていられず乾燥してしまいます。潤いを持続させるために、肌の水分を保つ保湿力に注目しましょう。
妊娠線を消す専用のクリームを塗ることも効果的です。アルガンオイルなどのオーガニック成分や美白成分、新型ビタミンC誘導体を配合しているものはたくさん販売されています。
厚生労働省により美白効果が認められている成分は約20種類ほどあるので自分に合ったものを選びましょう。
また、妊娠線を消す専用のクリームには新陳代謝を促してくれる葉酸が含まれているので、正中線対策に合わせて使用するのがおすすめです。
皮膚のターンオーバーを整えることもポイントです。皮膚組織の一番上の肌の細胞で起こる生まれ変わりをターンオーバーと呼びます。これは約6週間のサイクルで起きています。
このときに注意しなければいけないのが、紫外線と乾燥です。紫外線で肌がダメージを受けることや乾燥でターンオーバーは速くなります。
ターンオーバーを整えるには、紫外線対策を万全にすること、保湿をすること、新陳代謝を促すことなどがあげられます。
新陳代謝を促進するような食事や生活習慣を心掛けましょう漢方を飲んだり、ツボを押したりしましょう。
また、正中線を目立たなくさせるのには、ビタミンCを摂取することが効果的です。メラニン色素を弱めてくれるのでおすすめです。
皮膚摩擦は避けましょう。メラニン色素の沈着によって、色素沈着してしまいます。妊娠線や正中線を消したい一心で強くマッサージしてしまいがちですが、かえって悪化する原因になります。
ほかにも、ナイロン製のタオルを使うことや合成繊維の下着や、マッサージ機器などによる強い刺激を長期間過度に加えてしまうと、摩擦による刺激によって薄くすることから遠ざかってしまいます。
正中線はいずれ消えるものですし、これまでご紹介した方法も効果的なのですが、すぐには消えるといったことではありません。時間をかけて、頑張った割には薄くならない人もいます。
そういう場合は、医療機関を利用するのも良いでしょう。産後の悩みに寄り添ってくれる美容皮膚科も増えています。一人ひとりに合わせた治療方法の提案やカウンセリングを行ってくれます。
ここまで妊娠線や正中線についてご紹介してきましたが、お腹が大きくなってきたと感じたときにはすでに皮膚へのダメージが加わってしまっているので、手遅れになる可能性もあります。
絶対にできてほしくないという人は、お腹が大きくなる前に早めの予防対策をおすすめします。毎日の積み重ねが大事です。