おりものとは、腟や子宮の出口で作られる酸性の分泌物のことです。おりものは、善玉菌であるデーテルライン桿菌を含んでおり、この善玉菌が雑菌の増殖を防ぐ働きをしています。
このような役割の善玉菌が減少したり、いなくなったりすると腟内の抵抗力が落ちてしまいます。おりものは、女性の身体を守る大切なものといえるでしょう。
おりものは腟内を酸性にして適度な潤いを保ち、雑菌の侵入や増殖を防いでくれるといわれています。また、女性ホルモンと密接な関係にあり、生理周期に合わせて色や状態が変化していきます。
他にも性交渉の準備のため量が増えたり、排卵期には卵白のような透明のゼリー状のおりものが分泌され、妊娠しやすい状態を作るといった働きをします。
妊娠が判明した時に卵白のようなおりものが出たという経験がある方もいるでしょう。しかし、卵白のようなおりものがが出たからといって、妊娠しているとは限りません。
おりものの状態は個人差が大きいため、それだけで妊娠しているかどうか判断するのは難しいでしょう。
卵白のようだったり、伸びがある、白っぽいといったようなことで、妊娠の判断は難しいでしょう。通常おりものは、生理周期に合わせて増減を繰り返しています。妊娠をすると生理が止まりおりものの量にも変化が出てきます。
妊娠の可能性がある場合には、形状よりも量に注目するようにしましょう。
妊娠していない場合、おりものは生理終了後2~3日はほとんど分泌されず、そこから排卵期に向けて少しずつ増えていきます。排卵期には卵白のような伸びるおりものが出るようになり、排卵後は量が減るというサイクルを繰り返します。
妊娠すると女性ホルモンが分泌され、その影響でおりものが減らずに分泌され続けるといわれています。そのため、妊娠すると量が増えたと感じる人もいるようです。
妊娠するとおりもののにおいがきつくなったと感じる方もいます。酸っぱいにおいであれば、おりものに含まれる善玉乳酸菌が原因で病的なものではないケースが多いため、あまり心配することはないでしょう。
ただし、魚が腐ったようなにおいがする場合は病的なものの可能性があります。少しでもおかしいと思ったら、病院で診てもらうとよいでしょう。
おりものの量やにおいというのはあくまでも目安でしかありません。妊娠時に共通するのは、予定の日を過ぎても生理が来ない、基礎体温が下がらないといったことです。
妊娠初期症状には個人差があります。例えば、強く眠気を感じるようになった、腹痛や頭痛がある、食欲が増した等です。
おりもの以外にいつもと違う症状が出ていないか確認するようにしましょう。
おりものは、女性ホルモンの分泌や健康を判断する基準となるものです。量やにおい、色などは、妊娠以外でも生理周期や健康状態によって変化します。
妊娠をしたからといって、必ず卵白状のおりものが出るわけではありません。妊娠をしていなくても起こりえることです。おりものの変化は、女性ホルモンの影響で起こる生理周期と関わっています。
下記で生理周期によっておりものにどのような変化があるのか見ていきましょう。
生理が終わると卵巣にある原始卵胞の1つが発育し始め、卵胞ホルモンが分泌されると子宮内膜は少しずつ厚くなってきます。
生理直後のおりものは、血液が混じった茶色または褐色です。その後は一時的に量が減りますが、排卵期に向けて徐々に量が増えていきます。この時期のおりものはサラリとした状態で、基本的に卵白状ではありません。
卵胞期には卵胞刺激ホルモンと黄体刺激ホルモンの分泌がピークを迎え排卵するため、卵白のように透明でゼリー状の、よく伸びるおりものが2~3日続くでしょう。この時期は、量が最も増える期間といわれています。
ニオイはそれほど気にならないでしょう。また、まれにおりものに血が混じる場合がありますが、ほとんどは中間期出血という生理的な現象なので、心配することはないでしょう。
排卵をした後は黄体という組織に変化し、黄体ホルモンを分泌し、受精卵が着床できるように準備をします。
おりものは次第に量が減り、卵白状のものから白っぽいのりのような粘り気のある状態へと変わっていきます。下着に付着すると黄色っぽく見えたりします。
生理前になるとおりものの量は再び増えていきます。卵白状のものではなく、白く濁っていることが多いでしょう。においがきつくなり、出血が少し混ざる場合もあります。
このような変化は、生理が始まる目安となるでしょう。
おりものは生理周期や妊娠以外にも年代によって変化するといわれています。それは、深い関りがある女性ホルモンの分泌量が変わるためです。
初経が始まる10代では、まだ女性ホルモンが不安定なため分泌量が増減します。20代から30代にかけて分泌量がピークを迎えるため、量が最も多くなります。40代以降からは、女性ホルモンの分泌量が減り、おりものも減少していきます。
閉経後にはおりものは出なくなるでしょう。
おりものの量には個人差があります。明らかな異常でない限り、心配はないでしょう。排卵期に下着が濡れるほど多量な場合もありますが、これはしっかりと女性ホルモンが分泌されている証拠だといえるでしょう。
逆におりものの量が少ない方でも、生理周期が安定していて、分泌にも周期性があれば問題ないでしょう。ただし、ほとんど分泌がないようなら、ホルモンバランスの乱れ等のトラブルが考えられるため気をつけましょう。
おりものの変化で感染症や病気に気づくこともあります。自ら早期発見できることで迅速に病院を受診し、治療を開始することができるでしょう。
普段から、おりものの状態を知っておくことは大切です。感染症や病気にかかったときどのような症状が出るのか確認していきましょう。
クラミジア・トラコマティスという微生物が原因で起こる感染症です。おりものの量が増え、水っぽくなるといわれています。無症状のことが多いようですが、人によっては腹痛や排尿痛、発熱することがあります。
卵管炎をおこすと不妊症の原因となることもあります。妊娠初期で感染すると流産しやすくなる場合があり、出産時には赤ちゃんに産道感染する恐れがあります。
カビの一種であるカンジダ属の真菌によっておきる病気です。風邪等で免疫力が低下すると菌が増殖し、性器が赤く炎症を起こしたり、かゆみが出るといわれています。おりものはカッテージチーズのような白くてぽろぽろした状態になるのが特徴です。
妊娠中、赤ちゃんに感染すると口腔内に鵞口瘡が出現することがあるため、病院を受診するようにしましょう。
トリコモナス原虫が寄生することによっておこる性感染症です。男性にも寄生するといわれており、互いの病原菌をやりとりするピンポン感染をおこしやすいので注意しましょう。デリケートゾーンにかゆみや痛みが出ます。
おりものが黄色、又は黄緑色になったり、泡が混じったりする場合もあります。また、腐ったような悪臭がするのも特徴です。
妊娠中に感染すると早産の原因になる可能性があるため注意しましょう。
別名淋病とも呼ばれ、淋菌の感染によっておこる病気です。主に性行為によって感染しますが、まれに抵抗力のない女性や子どもが浴場やプールなどで感染することもあります。
黄色くねばねばと粘着質のあるおりものが出るようになり、量が増えるといわれています。悪化するとかゆみや排尿痛がおこります。出産時に赤ちゃんに感染すると、赤ちゃんが化膿性結膜炎を起こす恐れがあります。
非特異性膣炎とは女性生殖器系の器官である腟に、細菌が増殖して炎症が起こる疾患であり、別名細菌性膣炎とも呼ばれます。排尿痛やかゆみといった症状が出るといわれています。
おりものは灰色または黄色の水っぽい状態になり、魚のような生臭い悪臭を伴う場合もあります。においが発生するかどうかは増殖した細菌の種類によって異なります。
生理後や性行為後は細菌が増えるため、特ににおいが強くなるでしょう。
子宮腟部びらんとは子宮の腟に面した部分の粘膜が赤くなり、ただれているように見える状態です。びらんというのは赤くただれることをいいますが、この場合は子宮膣部がただれているわけではないので心配ないでしょう。
子宮膣部びらんは生理的変化であり病気ではないといわれています。ほとんどの女性が無症状ですが、おりものの量が増えたり、不正出血や性交後の出血が数回見られる場合は治療が必要です。
子宮筋腫とは、こぶのように硬い球形の子宮の筋肉にできる腫瘍です。女性の病気の中でも多く、米粒ほどの小さな腫瘍も含めれば、半数以上の方が持っていると考えられます。
主に生理時の出血が多い、長引く、強い生理痛、貧血や動悸、息切れをおこす等の症状がみられます。おりものは水っぽいものが多くなり、血が混じったり、黄色っぽくなる場合もあります。
子宮頸がんとは、子宮頸部の上皮から発生するがんのことを指します。30代で増え始め、40、50代が多い病気といわれていますが、20代でも80歳を超えても発症する可能性があります。
進行した際の自覚症状としては、不正出血が最も多く、性交時に出血しやすくなります。下腹部痛、腰痛、下肢痛や血尿、排尿障害、血便、下痢といった症状が現れることもあります。また、膿のようなおりものが出ます。
妊娠初期のおりものの変化は、量が増えた、サラサラと水っぽくなったと感じる方が多いようです。また色の変化もよくみられ、白や黄色、クリーム色になる場合があります。ドロッとしたかたまりが出てくることもあるようです。
着床出血で血液がおりものに混じることもあります。薄いピンク色だったり、酸化具合によって茶色っぽく見えたりもします。しかしこのような変化があっても、必ずしも妊娠したとはいい切れません。
おりものは人それぞれで違いがあるため、卵白状になったから妊娠した、というような絶対的な基準はありません。生理前のおりものと妊娠初期のおりものを見分けるには、いつもと違うかどうかが着眼ポイントとなります。
今はまだ妊娠を考えていないという方も、いざその時が来た時にすぐ気づけるよう日頃からおりものを意識しておく必要があるでしょう。変化に気づいたら、婦人科を受診することをおすすめします。
妊娠初期症状は個人差が大きいものです。人によって乳房が張ったり、便秘になったり食欲や味覚に変化が出たりと症状も様々です。おりものが卵白状になるなどの変化はあくまでも目安のひとつと考えてください。
これらの症状の有無だけでは、妊娠したかどうか確定することはできません。妊娠する可能性があるなら、適切な時期に妊娠検査薬を使用し、陽性であれば必ず産婦人科を受診するようにしましょう。