妊娠前検査とは、妊娠・出産に影響する病気、もしくは妊娠後に胎児へ影響するような病気がないかを検査するものです。ブライダルチェックと呼ばれる場合もあります。
医療機関によって、検査内容が異なりますが、多くは血液検査、性病の検査、また女性特有の疾患の検査が行われます。また、妊娠前検査は、結婚前、もしくは妊娠を望んでから受ける人が多いといわれています。
妊娠前検査を受けると、これまで自覚症状が無くても、将来の妊娠や出産に影響するような病気を発見できる可能性があります。病気によっては、妊娠の可能性を低下させてしまうものや、妊娠中には治療ができないものがあります。
そのため、将来妊娠を望んでいる女性は、事前に検査を受けておくと、早い段階で病気の発見や治療に繋がります。
妊娠前検査には、がん検査や抗体検査、感染症検査や血液検査などがあります。
ここからは、妊娠前検査で多くの方がする6つの検査をご紹介してまいります。妊娠前検査がどのようなものなのか心配な方は、ぜひご覧ください。
妊娠前検査の種類と内容の1つ目は、がん検査です。妊娠前検査で受けるがん検査は、主に子宮頸がんと乳がんの検査です。
近年、子宮頸がんは、20代の女性でも発症する人が増えているため、2年に1回の検査が推奨されています。発症後に転移が見られる場合は、妊娠の継続ができない恐れがあります。
また、乳がんの場合、妊娠中に発症していると、ホルモン分泌の影響でがんの進行が早まる可能性があります。そのため、妊娠前に検査をしておくことが大切です。
ただし、乳がん検診に関しては、施設によって触診のみ行っている場合があります。超音波・マンモグラフィーも希望される場合は事前に調べておくのがよいでしょう。
妊娠前検査の種類と内容の2つ目は、抗体検査です。
妊娠を望んでいる女性は、風疹、麻疹、水ぼうそうなどの病気の抗体検査をすることが勧められています。なぜなら、これらの病気に対する抗体を持っていない場合、妊娠中には予防接種を受けることができないからです。
さらに、妊娠中にこれからの病気にかかってしまうと、胎児への影響がある場合があります。そのため、妊娠前に検査をしておくのが重要です。
腫瘍マーカーとは、血液検査からがん発症の可能性を測ることのできるものです。がんは、がんの種類によって異なる物質が多く分泌されます。それぞれのがん特有の物質を腫瘍マーカーと呼びます。
そのため、妊娠前検査にある腫瘍マーカーでは、子宮がんや卵巣がんなどの可能性を見るために使用されることがあります。
妊娠前検査の種類と内容の3つ目は、感染症検査です。感染症検査では、クラミジア、淋菌、カンジタ、トリコモナスなどの感染症へ感染していないか検査を行います。
もし、これらの感染症に感染していると、不妊の原因になったり、胎児にも感染する恐れがあります。また、感染症の種類によっては、早産や流産に影響する可能性もあるといわれています。
妊娠前検査の種類と内容の4つ目は、血液検査です。血液検査では、B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの感染症に感染していないかを検査します。これらの感染症は、母子感染する可能性があるため、妊娠前の検査が勧められています。
また、その他にも貧血や糖尿病を検査するためにも用いられます。糖尿病は若い女性では罹患率は低いですが、胎児の奇形発症のリスクがあがります。糖尿病と診断されたら、きちんと血糖コントロールをしてからの妊娠が望ましいでしょう。
妊娠前検査の種類と内容の5つ目は、ホルモン検査です。妊娠前検査のホルモン検査では、血液検査で女性ホルモンの基礎値や排卵の有無を検査します。
女性ホルモン値は月経中に測定することが一般的ですが、検査内容と受診時期は受診予定の婦人科にあらかじめ確認しておきましょう。
特に、月経周期が不安定、もしくは排卵しているか分からないという方は、ホルモン検査を受けることが勧められています。
ホルモン検査では、AMH値を検査することもできます。AMHとは、アンチミューラリアンホルモンと呼ばれるもので、これから発育する卵胞から分泌されるホルモンです。そのため、AMH値を測ることで、これからどれだけの卵胞が育つのかを検査することができるのです。
AMHは、最も早く正確に卵巣の予備能が低下を感知している検査といえるでしょう。
妊娠前検査の種類と内容の6つ目は、超音波検査です。妊娠前検査の超音波検査では、膣内に超音波機器を入れて、子宮と卵巣を検査することができます。この超音波検査をすることで、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープなどを発症していないかを確認します。
超音波検査では、子宮内膜の状態、または筋腫などの腫瘍がある場合は、腫瘍の状態や位置などを見ていきます。さらに、卵巣の大きさなども合わせて確認します。排卵の時期に検査を受ければ、きちんと排卵されているか否かもわかります。
妊娠前検査には、どのような検査があるのか理解したところで、ここからは受診する際の注意点をご紹介します。
妊娠前検査を受ける上で気をつけたい2つの注意点をご紹介するので、これから妊娠前検査を受けに行くという方は、ぜひ参考にしてみてください。
妊娠前検査の受診の注意点の1つ目は、保険適用の検査かどうか確認することです。日頃から何か気になっている症状がある場合には保険適応にできる可能性が高くなりますが、すべての検査が該当するわけではありません。検査を受ける前に、保険が適用されるのか確認をしておきましょう。
例えば、超音波検査、子宮頸がん検査、甲状腺検査などは、保険適用の可能性が高い検査です。さらに、子宮頸がんの検査は、20歳以上の女性には、2年に1度、国から検査費用の補助があります。
ほかには、風疹の抗体価検査についても補助が出ます。産婦人科で確認したり、自治体のホームページをチェックしておくとよいでしょう。
妊娠前検査の受診の注意点の2つ目は、自費検査かどうかを確認することです。妊娠前検査の全てが保険適用の検査ではありません。検査の種類によっては、自費で検査を受ける必要があります。
例えば、AMH検査は、保険適用外で自費検査となります。費用は病院によって異なりますが、目安として4,000円〜8,000円といわれています。
妊娠前検査と合わせて、「不妊治療」という言葉を耳にしたことがある女性も多いでしょう。しかし、妊娠前検査と不妊治療は、どのような違いがあるのかご存知でしょうか。
まず、不妊症とは、避妊をしていない夫婦が一定期間(基本的に1年以上)あるにもかかわらず、妊娠しない状態を意味します。その不妊症の原因を検査で調べて、原因に合わせて治療を行うことを、不妊治療といいます。
原因に合わせた治療をする必要があるので、いくつかの不妊治療法があります。の治療法も、すべての産婦人科で対応しているわけではありません。あらかじめホームページなどで確認しておきましょう。
不妊治療には、一般不妊治療と高度不妊治療と呼ばれる、異なる治療法が確立されています。
まず、一般不妊治療と呼ばれるのは、タイミング法、排卵誘発法、人工授精などの治療方法です。女性の体の中での受精を補助する治療法と言えるでしょう。
前項でご紹介したように、一般不妊治療でも、不妊症の原因によって、提案される治療方法は異なります。
次に、高度不妊治療とは、生殖補助医療とも呼ばれ、体外受精と顕微受精という治療方法のことを意味します。これらの高度不妊治療は、一般不妊治療では妊娠が困難と判断された夫婦へ提案される治療方法です。
体外受精と顕微受精は、どちらも卵巣から卵子を取り出し体外で受精を補助する治療ですが、受精方法が異なります。体外受精では、培養液の中で卵子と精子が自然受精した受精卵を体内に戻します。
しかし自然に受精しなければ、顕微受精を行います。顕微授精では、直接卵子へ精子を細い針で注入し、その受精卵を体内へ戻すのです。
体外受精と顕微授精に関しては、費用の一部を助成する制度があります。しかし、対象者に限りがあったり所得制限等もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
妊娠を希望する女性は、妊娠前検査を受けることが推奨されています。なぜなら、妊娠前検診を受けることで、今後妊娠や出産に影響を与える病気の有無を確認できるからです。
また、病気によっては、妊娠中には治療ができないもの、胎児に影響を与えるものもあります。そのため、事前にそのような病気がないかどうかを確認しておくことが大切です。
保険適用の検査もあるので、事前に確認してから、妊娠前検査を受けに行くようにしましょう。