【専門家監修】妊娠中の虫歯治療とは?妊娠中にできる虫歯治療4つをご紹介

妊娠中に虫歯の治療はできる?

妊娠中は、それまでとは体の変化が著しく、精神的にも不安定になることが多いでしょう。


そんな中で、赤ちゃんの健康のために、食べることや薬のことなど、いろいろなことに気を留めて生活される方が多いようです。ですが、お口の中のことは、気に留める優先順位が低くなりがちではないでしょうか。


問題ない妊娠期を過ごすためには、むしろ虫歯治療は積極的に行うことをおすすめします。今回は、妊娠中の虫歯治療について取り上げていますので、参考にしてください。

治療方法と赤ちゃんへの影響

妊娠中に、歯に違和感を感じたらどうすればいいでしょう。歯の治療で、どんな影響があるかわからず不安だから、我慢するしかないと思っている人は多いのではないでしょうか。


最近では、妊娠中のお母さんの虫歯による赤ちゃんへの影響がいくつか報告されています。


ですから、虫歯を放置することなく、歯科医院への受診をしましょう。妊娠中ということをしっかり伝えて相談すれば、安心して治療することができます。歯の痛みや違和感を放置しないで、早めに対処しましょう。

妊娠中にできる虫歯の治療4つ

基本的には、歯科医が妊婦への虫歯治療することは可能です。妊娠中の虫歯治療は、方法を選べば、安全とされています。


つわりの時期が終わったあとの妊娠中期に行うのが、最も適しているでしょう。それ以外の時期の場合、体調に不安がある場合は、産婦人科の医師や歯科医に相談してみましょう。


ここでは、4つの虫歯治療方法をとりあげてご紹介しますので、ぜひご参考になさってください。

妊娠中にできる虫歯治療1:麻酔

一般的に、歯の治療において強い痛みが出る場合は、麻酔を使用して痛みを緩和します。


麻酔に対しては、妊娠中に使ってもよいのか不安になる人も多いでしょう。麻酔不使用での治療は、強い痛みが続くことがストレスになる可能性があります。ストレスでお腹が張ってしまうこともあるかもしれません。


歯医者で使用する麻酔は、部分的に作用する局所麻酔です。妊娠中も問題なく使用できます。

妊娠中にできる虫歯治療2:レントゲン

歯の治療のために、レントゲン撮影をするのは一般的です。


歯のレントゲンはコンパクトにできるデンタルレントゲンと、大きな装置で顔の周りを 機械が回るオルソパントモグラフが有りますが、オルソパントモグラフの方が被爆率が低いです。


また、鉛の入ったプロテクターをして撮影した場合、赤ちゃんのいる下腹部への被爆は0とされています。


歯科医に妊娠中であることを伝えれば、安全な方法でレントゲン撮影することが可能です。

妊娠中にできる虫歯治療3:詰め物

虫歯の部分を削った後に、詰め物をする処置方法がありますが、その詰め物が何でできているのか気になるでしょう。


一般的に、保険適用での治療をする場合、歯科用プラスチック素材のコンポジットレジンというを使うことが多いとされています。コンポジットレジンは、厚生労働省から安全であるという発表が出されています。


それでも心配な場合は、治療の前に歯科医に確認してみてください。

妊娠中にできる虫歯治療4:治療中の虫歯

妊娠以前から始めていて、治療中の虫歯がある場合、どうすればいいでしょう。治療が終わらない状態で虫歯を放置すると、悪化する場合があります。さらに、妊娠による体質の変化で、口腔内は虫歯になりやすい環境になりますので、放置することは避けましょう。


妊娠時期や、体調、体質に合わせて治療方法を選べますので、通院を続けることが大切です。

妊娠中におすすめできない虫歯の治療5つ

先に妊娠中にできる虫歯の治療があることを説明しましたが、ここでは妊娠中に行う場合は、時期を慎重に判断するべき治療をご紹介します。


慎重に行う治療5つに含まれることであっても、自己判断しないで、我慢して放置することはやめましょう。時間を置かず、すみやかに歯科医に相談してください。

妊娠中にできない虫歯治療1:抜歯

抜歯をするまでには、レントゲンや麻酔、痛み止めの薬などが必要です。抜歯や、それに関わるいくつかの処置が妊婦さんの体に与える影響を考えると、治療の時期は慎重に判断したほうがよいでしょう。


妊娠初期は赤ちゃんの器官が作られるため、レントゲンや薬の影響を最も受けるといわれています。そのため、妊娠中期以降に行うのが望ましいでしょう。治療をしないことで、慢性的な疼痛や感染が起こるほうが悪影響と考えられます。体調をみながら治療時期を検討しましょう。

妊娠中にできない虫歯治療2:インプラント

インプラント治療とは、外科手術により顎の骨に人工歯根を埋め込み、人工の歯を埋め込むものです。


インプラントの手術では、CTやレントゲン撮影、麻酔薬の使用、手術後の内服薬の使用などが必要です。また、通常の手術より出血量が多くなることや、感染のリスクも考えられるため、妊娠中は負担が大きいと考えられます。妊娠中のインプラント治療は行わないのが一般的です。

妊娠中にできない虫歯治療3:鎮痛剤の服用

歯科治療後の痛みを緩和するために鎮痛剤を処方されます。


鎮痛剤は、妊娠中には使用できないものもあることを知っておきましょう。副作用として、胎児の循環器系への影響などが報告されています。もちろん、痛みを我慢しなければならないわけではありません。妊娠中に使用できる鎮痛剤もあるので、歯科医に相談しましょう。

妊娠中にできない虫歯治療4:矯正

矯正治療は、2,3年かかるのが一般的です。


矯正期間中は何度かレントゲン撮影による検査をしますが、この検査と妊娠時期のバランスが問題になります。また、妊娠中は妊娠性歯周炎という状態になりやすく、矯正器具をつけることで、歯周炎のリスクが上がります。


妊娠がわかってから矯正治療を始めるのは避けた方がいいでしょう。

妊娠中にできない虫歯治療5:歯周病

歯周病とは、口の中の細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。


歯と歯茎の境目に歯垢がたまり、歯肉周辺が腫れます。これが進行すると、歯を支える土台が溶けて歯が動くようになり、最悪の場合は抜歯をしなければならなくなります。進行中に強い痛みがないために、進行に気づきにくいのが難点です。

歯周病が赤ちゃんに与える影響

妊娠中に歯周病になると、早産および低出生体重児出産のリスクが約7倍になるといわれています。


これには、口の中の歯周病菌とそれらがつくる物質が、子宮の収縮を促すとともに子宮口を広げる作用を起こすことが影響します。前もって歯周病治療を受けておくことが大事です。妊娠を希望しているときには、早めに歯周病治療を受けておくことが望ましいでしょう。

妊娠すると虫歯や歯周病になりやすい理由2つ

妊娠中はそれまでと体質や体調の変化が多く、その一つとして、虫歯や歯周病がなどがあります。虫歯は歯の組織が、歯周病は歯肉の組織が病原菌に侵される症状です。


ここでは、妊娠期の虫歯や歯周病などの原因を取り上げます。虫歯や歯周病の原因を知り、予防方法を知っておくと、心強いでしょう。

つわり

妊娠初期は、つわりの影響によりブラッシングが難しくなります。また、つわりにより胃酸が逆流することで、口腔内が酸性になりやすく、虫歯のリスクが高まります。


つわりの影響で、虫歯や歯周病が増える可能性があるといえます。


つわりがひどい時は、体調の良い時間に歯みがきをしましょう。歯磨きが難しいときは、マウスウォッシュでうがいをすることもおすすめです。

ホルモンバランス

妊娠すると女性ホルモンの分泌が増えます。


歯周病菌の中には、女性ホルモンを栄養源として繁殖する菌がいるので、歯周病のリスクが高まります。また、妊娠性エプーリスという歯茎にできる良性の腫瘍も女性ホルモンの影響とされています。この症状は出産後に自然消失しますが、歯周病を併発する特徴があります。


女性ホルモンの影響により口腔内の環境が変化することは、歯周病などの要因と考えられます。

妊娠中の虫歯を放置するリスク3つ

虫歯を治療しないで放置することは避けたほうがいいということは、先に取り上げました。
ここでは、虫歯を放置した場合にどういうリスクがあるかをご紹介します。


虫歯を放置した場合のリスクを参考にして、放置することないよう心がけてください。

妊娠中の虫歯を放置するリスク1:感染症を引き起こす

感染症とは、ウイルスや細菌、寄生虫などが原因で、起きる病気のことをいいます。つまり、虫歯は虫歯菌、歯周病は歯周病菌の感染によって起きる感染症です。


虫歯や歯周病を放置すると、病原菌が増殖して、口腔以外の場所にも感染症を起こします。虫歯、歯周病が原因の感染症は、軽度のものから命にかかわるものがあります。

妊娠中の虫歯を放置するリスク2:虫歯が移る

虫歯菌は、唾液などを通じて自分以外の人に移るので、虫歯は移るといえます。


赤ちゃんの口腔内には虫歯菌はいません。虫歯菌が口に触れるものを介して移ることで、乳歯が生える時期の虫歯の原因になります。赤ちゃんに限らず、虫歯菌が唾液を介して移る可能性がありますので、自分以外の人に移さない意識を持つことが大切です。

妊娠中の虫歯を放置するリスク3:産後の歯がボロボロになる可能性

子供に栄養を摂られて歯がボロボロになるという説がありますが、それは間違いのようです。


妊娠中は、つわりなどで口腔内のケアがおろそかになり、悪い環境になります。その結果、口腔内の病原菌が増え、歯周病や虫歯が進んでしまいます。また、女性ホルモンを好む口腔内の病原菌の影響も考えられます。


妊娠中に虫歯や歯周病を放置すると、歯がボロボロになると言えます。

妊娠中の虫歯治療のタイミング

一般的に、妊娠中の方が虫歯治療をするタイミングは、安定期である妊娠第16週から第27週の場合が良い時期と言えます。


可能であれば妊娠を希望した時点で、歯の検診をうけることをおすすめします。虫歯があったとしても、早めに治療を始めることができます。さらに、妊娠中の歯のケアについてアドバイスを受けることも期待できます。

妊娠中だからこそ虫歯治療は大事

虫歯かもしれないと不安を抱えたまま、出産まで我慢することは避けたいでしょう。出産までの心配事を一つでも減らすため、赤ちゃんへの悪い影響を減らすためにも、虫歯治療を受けることをおすすめします。


虫歯の治療は、妊婦さんそれぞれに合う方法があります。歯科医に妊娠中であることを伝えて相談してください。