【専門家監修】化学流産について知っておきたい8つのこと|繰り返すときの対処法

化学流産とはどういう状態?

化学流産とは生化学的流産とも呼ばれ、英語ではchemical abortionと言います。


妊娠検査薬で陽性が確認できたのに、出血したり生理が始まったりして、エコーで確認できるはずの胎嚢(たいのう)は確認できず、のちに陰性になる状態といわれています。


妊娠のかなり早い時期の流産ですが、尿検査や採血で妊娠反応が出る場合もあり、人によっては腹痛や嘔吐などつわりのような症状を感じる人もいます。

通常の流産との違い

化学流産は、着床はしたけれど胎嚢が確認できない状態の妊娠なので通常の流産には含まれていません。


通常の流産には妊娠12週未満で起こる早期流産と、12週から22週未満で起こる後期流産があります。一般的な流産を定義づけると「妊娠約5週で胎嚢が確認できた後、22週以下で起こる流産」といわれています。


流産の分類としては、進行流産・完全流産・不全流産・稽留流産があります。

化学流産について知っておきたい8つのこと

化学流産は普通の流産と違い、人によっては気づかないケースもあるくらいですが、妊娠を待ちわびる人にとっては陽性反応が出たのに妊娠できなかったという悲しい思いにつながるつらいものです。


化学流産が起きるタイミングや妊娠検査薬が使える時期、化学流産に気づくきっかけや原因、予防策、化学流産を繰り返してしまうケースなど、化学流産について知っておきたい8つのことを紹介します。

化学流産について知っておきたいこと1:化学流産が起きるタイミング

化学流産について知っておきたいことの1つめは、化学流産が起きるタイミングについてです。


化学流産は受精卵が着床する妊娠3週目ごろから、妊娠検査薬を使える4~5週目ごろまでに起こりやすいといわれています。つまり妊娠検査薬で陽性反応がでてから、エコー(超音波)で胎嚢を確認するまでの時期です。


検査の時期によっては化学流産に気付かないこともあります。

化学流産について知っておきたいこと2:妊娠検査薬を使える時期

化学流産について知っておきたいことの2つめは、妊娠検査薬を使える時期についてです。妊娠検査薬は、生理予定日を過ぎても生理がこない状態に気づいて使われることが多く、一般的なもので生理予定日1週間後の使用を目安につくられています。


トイレで検査薬に尿をかければ手軽に妊娠しているか判定できます。ドラックストアで簡単に入手することができます。

一般的なタイプ

一般的なタイプの妊娠検査薬は、生理予定日1週間後から使うことができます。尿に含まれる血中hcgホルモンの濃度が50mlu/mL以上になると反応するしくみです。


生理予定日を過ぎても生理が来ない、と気づいてから使い始める人が多く、このタイプでクッキリ陽性が出ればほぼ妊娠しているでしょう。しかし、病院で妊娠が確定されるのは妊娠5週目以降に胎嚢が確認できてからです。生理の周期により胎嚢がみえる時期も前後する場合があります。

早期タイプ

早期タイプの妊娠検査薬は生理開始予定日当日から使えます。尿に含まれる血中hcgホルモンが25mlu/mL以上あれば反応するしくみです。


hcg値は妊娠3週目で25~50mlu/mL分泌され、妊娠していれば早期タイプで陽性反応が出ます。生理予定日前のフライング検査でもうっすら陽性反応が出ることもありますが、フライング検査で一喜一憂するのが嫌な人は用法通り生理予定日以降に検査しましょう。

化学流産について知っておきたいこと3:化学流産に気づくきっかけ

化学流産について知っておきたいことの3つめは、化学流産に気づくきっかけについてです。化学流産に気づくきっかけの多くは妊娠検査薬の使用と不妊治療を始めとする妊活であると言われています。


妊娠検査薬の精度が高まったことにより、超初期妊娠と呼ばれる3~4週目の陽性反応に気づく人が増え、化学流産にも気づく人が多くなりました。

化学流産について知っておきたいこと4:化学流産が起こる原因

化学流産について知っておきたいことの4つめは化学流産が起こる原因についてです。化学流産が起こる原因はまだはっきりとわかっていないものの、妊娠12週未満の早期流産の場合、受精卵の染色体異常が影響していると言われています。


そのため、お母さん側に何か原因があるのではなく、胎児側の原因だととらえてよいでしょう。染色体に異常があると受精卵は育つことができないため、早期流産や化学流産が起こるといわれています。


流産の確率は全妊娠の15%程度といわれており、流産を経験する割合も40%程度といわれています。流産してしまったあとは、どうしても自分自身の生活の仕方などが悪かったのではと考えがちですがそんなことはありません。考えすぎないようにしてください。

化学流産について知っておきたいこと5:化学流産の予防策

化学流産について知っておきたいことの5つめは、化学流産の予防策です。


化学流産にははっきりした原因がなく、あっても受精卵の染色体異常の可能性が高いため、化学流産の予防方法は確立されていません。


化学流産は健康なカップルでも起こると言われていますし、気づかない人もいます。正しい知識を身に付けて気にし過ぎないようにしましょう。

化学流産について知っておきたいこと6:化学流産後に治療は必要なし

化学流産について知っておきたいことの6つめは、化学流産後に掻爬手術などの治療は必要ないことです。受精卵は着床したが育たなかったために流れてしまったということです。


妊娠検査薬で陽性が出た後、受診し妊娠していないことがわかった場合、特別な処置は必要ありません。


ただし、陽性反応が消えない時は受診するようにしましょう。約1週間後のエコーで胎嚢確認ができない場合は子宮外妊娠も考えられます。医師より再診の指示があった場合には必ず受診するようにしましょう。

化学流産について知っておきたいこと7:妊娠可能な体に戻る時期

化学流産について知っておきたいことの7つめは、妊娠可能な体に戻る時期についてです。化学流産した場合、生理が1回来て検査薬で陰性になり、出血がいつまでも続く等のからだの変調が起こらなければ、次の妊娠が可能といわれています。


化学流産後、異常がない場合は妊娠可能な体に戻っていると考えられるので、すぐに妊活を再開しても問題はないでしょう。

化学流産について知っておきたいこと8:繰り返すときは産婦人科を受診

化学流産について知っておきたいことの8つめは、2~3回連続して化学流産を繰り返すときは産婦人科を受診する必要があるということです。不正出血や生理の出血量が多い場合や、コアグラと呼ばれるレバー状の血の塊が出る場合も同様です。


流産が2回連続することを反復流産といい、3回以上続くことを習慣性流産といいます。。また、流産・死産を繰り返すことを不育症といいます。


一般的には反復流産の時点で検査・治療をすることが多いです。また、妊活を1年続けても妊娠に至らなかった場合は不妊症にあたると定義されています。どちらの場合も、産婦人科に相談するとよいでしょう

妊娠に向けて体を整える方法5つ

妊活中は化学流産やフライング検査で重い気持ちになってしまいがちですが、化学流産したのは妊娠できるということだと前向きにとらえて、妊娠に向けて体を整えておくことを忘れないようにしましょう。


ここからは、食事や睡眠などの生活習慣に加え、お酒やたばこなどの嗜好品やストレス対策に至るまで、妊娠に向けて体を整え、妊娠しやすい体をつくるための方法を5つ紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

妊娠に向けて体を整える方法1:規則正しい生活する

妊娠に向けて体を整える方法の1つめは、規則正しい生活をすることです。規則正しい生活の要とも言えるのが睡眠時間の確保です。充分な睡眠を取り、バランスの良い食事や休養、ストレスにも注意しましょう。


寝つきが悪い場合は、起きる時間と寝る時間を決めて習慣づけるだけでなく、適度な運動を心がけて睡眠の質を上げることをおすすめします。食事の時間も整えれば、おのずと体調も良くなっていくでしょう。

妊娠に向けて体を整える方法2:食生活を見直す

妊娠に向けて体を整える方法の2つめは食生活の見直しです。食べたものは栄養素として体に吸収され細胞の1つ1つをつくります。卵子の質にも食生活は影響するといわれています。


栄養が不足すると、ホルモンバランスが崩れ無月経や生理不順を招き、排卵が起きにくくなる原因にもなります。たんぱく質やビタミン類に加え、葉酸・鉄・カルシウムも積極的に摂りましょう。


特に葉酸は、妊娠前より積極的に摂取することが推奨されています。栄養バランスを考えながら適量を食べることが大切です。

妊娠に向けて体を整える方法3:お酒を飲みすぎない

妊娠に向けて体を整える方法の3つめはお酒を飲み過ぎないことです。お酒と妊娠の関係については様々な見解があり、一概に悪影響があるとはいいきれません。ただ、飲酒が不妊に影響しているという報告もあります。


妊娠を強く希望している場合は、飲酒は最低限にするのがよいでしょう。また、妊娠中の飲酒は胎児の発育・発達不全や早産率が増加します。量や妊娠期時期の安全域が存在しないため、禁酒が望ましいといえます。


妊娠に気付かないで飲酒してしまう可能性もあるため、妊活中から飲酒量や頻度に注意しましょう。

妊娠に向けて体を整える方法4:たばこを吸わない

妊娠に向けて体を整える方法の4つめはたばこを吸わないことです。たばこに含まれるニコチンなどの有害物質は、ホルモンバランスや卵胞の成長阻害、卵子への悪影響、閉経の早期化の原因となります。


受動喫煙であっても妊娠へ悪影響を及ぼすでしょう。妊娠中にたばこを吸うことは百害あって一利なしです。流早産率が2~3倍となり、低出生体重児や精神発達の遅れの可能性も高くなります。


ただ、妊娠を機に禁煙に成功する人は非常に多いです。パートナーも同様です。妊娠は禁煙の最大のチャンスともいえます。

妊娠に向けて体を整える方法5:ストレスをため込まない

妊娠に向けて体を整える方法の5つめはストレスをため込まないことです。ストレスは女性ホルモンへの悪影響が大きく生理不順などの原因になりかねません。また、いつ生理がくるんだろうと悩むとストレスが増え悪循環になります。


時に休息しながら周期を整えましょう。適度な運動は、余分な水分の排出も促し体調を整えます。妊活には不安がつきものですが思いつめすぎてストレスをためないようにしましょう。信頼できる人や医療スタッフに不安な気持ちを相談してみましょう。

化学流産について理解しておこう

妊娠検査薬の精度が高まり、化学流産が広く知られるようになってきています。一般的流産と違い、化学流産は異常がなければ特別な治療は必要ありません。


しかし、繰り返し化学流産する場合は不育症の可能性もあるので、産婦人科の受診をしてみましょう。化学流産について正しく知り、妊娠に向けて体を整えることが大切です。


悩みや不安がある場合は、産婦人科の医師や助産師・看護師に相談しましょう。自身の状態を把握し、正しい知識を得ることで安心できるでしょう。