婿養子とは?婿養子のメリット・デメリット4つと6つのポイント

婿養子とは?

婚姻と養子縁組の2つを合わせたものを婿養子と呼びます。婿養子の歴史は古く、室町時代までさかのぼります。


養親と養子縁組をし、その娘と婚姻をすることで婿養子という立場が成立します。女性側の両親と養子縁組を行うので、女性側の両親は婿養子から見て養親という立場になります。養子縁組は事実上の親子関係が成立するので、婿養子となることで妻の親が事実上の親になるのです。

婿と婿養子の違い

婿養子という言葉の他に、婿という単独の言葉も存在します。婿養子と婿では使い方が異なります。婚姻時に妻の姓に改姓し、妻の姓を名乗っている男性を婿と呼びます。


婿養子は妻の親と養子縁組を交わし、入籍を行う制度です。婿養子の場合は、婚姻届と養子縁組の2つの手続きが必要となります。婿は妻と夫婦関係が成立し、婿養子は妻との夫婦関係の他に妻の両親との親子関係が成立します。

婿養子のよくある間違い

妻の両親と暮らしている男性を婿養子と呼ぶ人もいますが、これは間違いです。婿養子とは養親と養子縁組を交わし、なおかつその娘である妻と婚姻関係であることが前提です。


そのため妻の両親と暮らしているかどうかに関わらず、戸籍上の手続きを組んでいるかが重要になります。また、改姓して妻の姓を名乗っているだけの婿は、妻の両親と養子縁組をしていないため、婿養子とは呼びません。

戸籍

婿養子入りした場合、妻との戸籍は妻が筆頭者になります。妻の親と養子縁組関係であるため、養親の戸籍には養子として記載がされます。


戸籍上は妻の親と親子関係になるため、扶養義務や相続などが発生します。養親の家業を継ぐ場合、養子縁組を行うことで相続が円滑に進みます。

婿養子になるメリット・デメリット4つ

婿養子を考えている男性は、メリットとデメリットを把握したうえで検討をしましょう。人生を大きく左右するほど、婿養子をするのは大きな決断です。また、婿養子は自分だけの問題ではなく、関わる家族に問題が発生するケースも考えられます。


婿養子のメリットとデメリットを理解し、正しい知識を持つことが大切です。そこで、メリットとデメリットをそれぞれ2つ紹介します。参考にしてくださいね。

メリット1:妻側両親の相続権利

養子縁組とは、事実上の親子関係が成立します。そのため、養親からの相続権が発生します。妻の親と養子縁組が成立しても、男性側の親と親子関係が崩れる訳ではないので、両方の親から相続が可能な立場です。


また、相続人が増えたことにより相続税控除額が増えるため、節税できるメリットもあります。

メリット2:嫁姑問題

女性がお嫁に行く場合、嫁姑問題に悩まされるケースも少なくはありません。自分の母親と妻が仲良くなって欲しいと願うものの、上手くいかずに悩む男性は多くいます。


しかし、男性が婿養子に入ることで嫁姑問題に発展する可能性が低くなります。また、事実上親子関係である養子縁組をするわけですから、男性は養親と仲良くする努力が必要です。

デメリット1:扶養義務

養子縁組をすると自分の両親だけでなく、妻の両親の扶養義務も発生します。養親に多額の借金があった場合、それを相続させられてしまう可能性があります。


また、高齢になるほど医療費が高くなるケースも考えなくてはならず、自身の収入で扶養するリスクを考えなくてはなりません。

デメリット2:離婚した場合にリスクがある

婿養子は婚姻と養子縁組がセットになっている状態です。そのため、妻と離婚をする際に養親との問題も考えなくてはなりません。養子縁組を解消しない限り、事実上妻と養親とは親族関係が継続している状態です。


遺産の相続権もあるため、安易に離婚に踏み出せないリスクが高いでしょう。書類の手続きが面倒なだけでなく、人間関係がぎくしゃくすることも懸念されます。

婿養子の場合の結婚の時のポイント6つ

女性がお嫁に行く婚姻とは異なり、婿養子には複雑な手続きがあります。また、日本ならではの独特なマナーや礼儀作法が多いため、「知らなかった」では失礼にあたるでしょう。


婿養子を検討している人は、結婚のポイントを把握しておくことが大切です。以下で婿養子のポイントを6つ紹介しますので、理解を深めてみてはいかがでしょうか?

ポイント1:新婦側から新郎側へ3倍程度の結納金を贈る

結納金とは結婚準備に必要なものを揃えるために、男性側から女性側へ納めるお金です。女性が嫁ぐ婚姻が一般的な日本では、結納金は男性側から送るものという認識を持つ人も多くいます。


しかし婿養子の場合は、男性側と女性側の役割が逆になります。婿養子に迎え入れる女性側が結納金を納めます。嫁入りの結納金は平均100万円ですが、婿養子の場合は2倍から3倍のお金を納めるため300万円程度が必要です。

ポイント2:披露宴会場の高砂やゲストテーブルは新婦側が左

女性が男性に嫁ぐ結婚式とは異なり、婿養子の場合は高砂に向かって右側が新郎、左側が新婦です。女性が男性に嫁ぐ場合は、高砂に向かって右側が新婦、左側が新郎です。


婿養子の場合は一般的な結婚式とは逆になります。そのため、披露宴やゲストテーブルでは、男性が右側と覚えておくと良いでしょう。

ポイント3:招待状の宛名、名前の表記は新婦の名前が上または左

女性が男性に嫁ぐ場合、横書きの招待状は上に男性の名前、縦書きの招待状は右に男性の名前を書きます。しかし、婿養子の場合は逆の書き方です。


横書きの招待状であれば上に妻となる女性の名前、縦書きの招待状は右側に妻となる女性の名前を記載します。一般的な招待状とは真逆になるため、覚えておきましょう。

ポイント4:婿養子の結納手順は役割が逆

結納とは日本の伝統文化です。婚約を公にした儀式の一つでもあり、結納を行うことで婚姻に対するけじめをつけることができます。


婿養子の場合、女性側が結納を納めます。結納の流れや品に変わりはなく、男性と女性側の役割だけが逆になります。


婿養子で結納を行う場合、女性側の家族が男性の自宅へ足を運ぶことが一般的です。しかし、互いの家の事情や環境から、ホテルやお店など、自宅以外の場所で行う人が増えています。

ポイント5:謝辞は新婦の父がおこなう

結婚式や披露宴で、参列者に感謝を述べる謝辞は、新郎側の父が行うのが一般的ですが、この点でも、婿養子の場合は逆になります。


婿養子に迎え入れた新婦の父が謝辞を行い、家族の代表として挨拶をします。このように、婿養子の場合は謝辞も逆になるのです。

ポイント6:婚約記念品は女性からもらう

女性が嫁ぐ場合の婚約記念品は、男性側から贈られる婚約指輪が主流です。しかし、婿養子の場合は女性から男性へと品物を贈ります。


婚約記念品で女性が贈る品として一般的なものは、スーツや腕時計です。日本では結納の場で記念品を贈る風習もあり、家族の意見を交えながら行われます。


しかし現代では、結納の場以外でも贈られるケースが増えています。地域やその家で代々行われてきた習わしによる違いもあります。家族に確認をしながら行うと良いでしょう。

婿養子を迎え入れる理由

女性側に男兄弟がいない、もしくは女性が一人っ子で後継ぎがいないことが理由に挙げられます。特に、女性側の家族が家業を営んでいる場合に多いでしょう。


また、女性側の両親が後継ぎを視野に入れた婿養子の場合、男性を長男として迎え入れます。家業を継続したい気持ちから、婿入りした男性を家族の一員として大切に接してくれるでしょう。たとえ家業をさておいても、妻の父は長男ができたことに喜びを隠せない人も多いです。

婿養子になる場合はデメリットもきちんと把握しておこう

日本の風習として古くから伝わる婿養子ですが、現代の日本では女性が嫁ぐことが一般的です。しかし、婿養子を検討した方がスムーズな婚姻生活を送れる家庭環境の人もいます。


財産分与などにおいては両方の親からの相続権があるため、得な印象を受ける人もいます。しかし扶養の義務が発生するため、メリットばかりを追い求めるのは現実的ではありません。


デメリットがあることを理解したうえで、婿養子入りを考えましょう。