出産手当金とは、会社員として働く女性が出産したときに受け取れるお金です。
出産手当金は勤務先の健康保険から受け取れるため、産休で働けない状態でも出産後の生活に不安を持たずに暮らせる補助として給付されます。
勤務先の健保に加入していれば受け取れるので、正社員だけでなくパート・アルバイトでも受け取り可能です。国民健康保険や夫の健康保険に扶養で入っている場合は、手当金受け取り対象外となります。
出産手当金と名前が似ているのが出産一時金です。正しくは「出産育児一時金」と言い、出産一時金と出産手当金とではもらえる対象者が違います。
出産手当金は健康保険加入者で『出産のため休業』する人で、出産一時金は妊娠4ヶ月以上(85日)で出産する『すべての』健康保険加入者が対象になります。
出産一時手当金は1児につき約42万円と決められているのに対し、出産手当金は出産する人の収入や産休の期間によって異なります。
出典:出産手当金、出産育児一時金とは。2つの違いは?|常陽銀行
参照:https://www.joyobank.co.jp/woman/column/201605_01.html
出産手当金は自身が健康保険に加入している女性が出産するときに受けられますが、ほかにも忘れてはならない条件があります。
支給条件は、出産手当金をいくらもらえるのかを知ること以上に重要です。ここからは、出産手当金の支給条件を5つ解説します。
前述したように、出産手当金は「出産のために休業中状態にある人」がもらえます。
しかし、給料を満額受け取っている、もしくは出産手当金よりも給料が多い方、公務員などで産休中も給料が支払われる方は支給対象外になります。
出産手当金よりも給料の額が少ない場合は、出産手当金と給料の差額分だけもらえます。自分の場合は出産手当金がいくらになるのかあらかじめ知っておきましょう。
出典:働きながらお母さんになるあなたへ|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563060.pdf
出産手当金をもらうためには、出産する本人が勤務先の健康保険に加入していなければなりません。勤務先の健康保険に加入しているなら、雇用形態に関係なく、パートやアルバイトの方でも出産手当金の支給対象になります。
勤務先の健康保険に加入していることが条件なので、パートやアルバイトの方もいくらもらえるのか調べておきましょう。
フリーランスや自営業の方で国民健康保険に加入している人、夫の健康保険に扶養で加入している方は、出産手当の支給対象外となります。
出産手当金を受け取るためには、妊娠日数のチェックも大切です。妊娠4ヶ月目以降の出産(85日以上)であることが条件で、妊娠4ヶ月を過ぎてからの早産・死産・流産または人工中絶も含まれます。
また、出産日が予定日よりも遅れた場合、その期間にも出産手当金は支給されますので、いくらになるか計算する際は足し忘れないようにしましょう。
出典:妊娠4ヵ月(85日)以上で出産したとき|東邦ガス健康保険組合
参照:https://www.thgkenpo.or.jp/tetsuzuki/shussan/shussan_ichiji/
出産のために退職した場合に出産手当金を受け取るためには、退職前に継続して1年以上被保険者として加入している(任意継続被保険者期間を除く)必要があります。
同じ会社で1年以上勤務し続けている人であれば、問題なくこの条件はクリアできるでしょう。「継続して1年以上健康保険に加入している」ことが重要なので、2ヶ月勤務して一時退職したのち、また10ヵ月勤務したという場合などは支給されません。
出典:出産手当金について|全国健康保険協会 協会けんぽ
参照:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/
出産手当金には支給期間が定められており、この期間内に退職した状態でないと受けられません。出産予定日から42日、多胎の場合は98日以内に退職しているのが条件です。
出産で退職を考えている人は、出産手当金がどのくらいもらえるかを計算する前に、これらの条件を満たすように退職日を設定しましょう。実際の出産日もしくは出産予定日から算出しますが、出産当日は出産日以前の期間に含まれるため注意が必要です。
出典:出産手当金について|全国健康保険協会 協会けんぽ
参照:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/
出産手当金がいくらもらえるのかは、決められた計算方法で算出できます。その際、出産手当支給の対象期間・1日当たりの支給額・支給される時期を把握しておくことが大切です。実際の計算例も紹介します。
計算に必要な所定の期間の範囲が分からない場合は、全国健保協会(協会けんぽ)のホームページ内の「産前産後期間一覧表」を参照にしてください。
出産手当金が適用されるためには、いくらもらえるか計算する前に、対象期間がいつからいつまでなのか知っておくことが大切です。
原則的に出産予定日である42日前から出産後56日目までの98日間が対象期間ですが、出産が予定より遅れた場合はその日数もプラスされます。
また、産後56日間は変動することはありません。
出典:出産手当金について|全国健康保険協会 協会けんぽ
参照:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/
出産手当金の1日当たりの支給金額は以下のように計算できます。
支給開始以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した金額÷30日×2/3
この計算により算出された額×98日が出産手当金の総支給額です。出産が予定日より遅れた場合は、「遅れた日数分の1日当たりの支給金額」を加算し、逆に出産が早まった場合は、「早まった日数分の1日当たりの支給金額」を差し引きます。
出典:傷病手当金・出産手当金 支給額の算出について|近畿電子産業健康保険組合
参照:http://www.kinkidenshikenpo.or.jp/data/news/1_115.pdf
出産手当金は、申請して2週間から2か月後に一括で振り込まれます。出産手当金を満額受け取るためには、産後(出産した翌日)56日以降で産休開始日から2年以内という申請期間の期限を守ることが大切です。
2年を過ぎてしまうと出産手当金は時効となり、その日を過ぎると支給される権利が失われてしまうので注意しましょう。
出典:出産手当金、出産育児一時金とは。2つの違いは?|常陽銀行
参照:https://www.joyobank.co.jp/woman/column/201605_01.html
出産手当金を実際に計算し、いくらもらえるか調べましょう。計算の仕方は標準報酬月額÷30日=標準報酬日額(1日当たりの支給額)で1日当たりの支給額×2/3×98日と計算します。
標準報酬月額が20万円の場合を例に計算すると20万円÷30日=約6670円(10円未満が出たときは切り捨て)というふうになり、約6670円×2/3×98日=約43万5800円となります。98日というのは予定通り生まれた場合です。
出典:傷病手当金と出産手当金の計算方法|公文健康保険組合
参照:http://www.kumon-kenpo.or.jp/system/data/news/50/50_2.pdf
出産手当金を受け取るためには、産休前にもやっておくべき手続きや準備等があるので、忘れないようにチェックしておきましょう。
ここからは、出産手当金の申請手続きをする際の大切な4つの流れを紹介します。
妊娠がわかり自分が出産手当金の受給資格に当てはまるかチェックしたうえで、まずは会社に申し出てください。必要な申請書は社会保険事務所で発行されており、会社の総務部や人事部などに準備されている場合もあります。
個人で申請するように指示された場合は、管轄の社会保険事務所または協会けんぽのホームページからダウンロードできます。よくわからないことがあるときは、早めに質問して解決しておけば安心です。
健康保険出産手当金支給申請書を受け取ったら、内容や記入欄をチェックしてください。本人や事業主が記入すべき欄に加え、出産で入院する先の医師や助産師が記入すべき欄があります。医師の記入があることで、出産した証明書類となるのです。
出産後に記入手続きをすれば一度に済みますので、入退院の際は忘れないようにしましょう。
出産手当金の申請書類には、健康保険証(コピー可)、母子手帳(コピー可)、印鑑、事業主の証明書類他にも添付すべき必要書類がありますので、合わせて準備しておきましょう。
出産手当金申請書の記入には時間のかかる医院もありますので、その際は自宅に郵送してもらうと良いでしょう。
申請書への記入が不備なく完了したら、次は会社に出産手当金の申請書類を提出しましょう。出産手当金を満額受け取るためには産後日、産休の開始日から約2年以内という期限があります。
その日を過ぎてしまうと時効になりますので忘れずに申請してください。
出典:健康保険給付の申請期限について|全国健康保険協会 協会けんぽ
参照:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/tochigi/2013112901/20180416001/2019120205/jikou.pdf
出産は女性にとっての一大イベントであるだけでなく、働く女性にとっては産休中の収入が途絶える不安もあるでしょう。約1年以上勤務し、健康保険に加入していれば出産一時金だけでなく出産手当金制度を利用できます。
出産手当金がいくら支給され、いつもらえるのか、申請方法などについて把握しておくことが大切です。出産手当金は赤ちゃんを育てていく上で大切なお金ですので、家族とも情報を共有し、さらに安心度を高めましょう。