妊娠中、体調管理に気を付けていてもインフルエンザウイルスに感染してしまう場合があります。妊婦はインフルエンザにかかるとほかの病気を合併したり、状態が悪くなりやすいと言われています。
お母さんだけでなくお腹の中の赤ちゃんへの影響も心配です。
インフルエンザの予防接種を受けておくとインフルエンザに感染するリスクを減らせます。予防接種に使われるワクチンは不活化されているため、妊婦でもインフルエンザの予防接種は可能です。
不活化ワクチンは必要な成分だけを使用して作られており、生きたままのウイルスや細菌は含まれていません。妊娠中、どの期間に接種してもお母さんやお腹の赤ちゃんへはほとんど影響しないと言われています。
妊婦は特別な理由がある場合を除き、できるだけインフルエンザの予防接種を受けるよう勧められます。自治体によっては助成金を受け取ることができるので、少ない費用で接種できるでしょう。
インフルエンザの予防接種を受けておくと感染リスクや重症化リスクを減らせ、お母さんにもお腹の赤ちゃんにもメリットがあります。予防接種がなぜ推奨されているのか、詳しい理由を知っておきましょう。
妊婦は通常時よりも免疫が下がると考えられています。
妊娠初期、つわりで胸やけや吐き気が起こり思うように食事がとれないときは栄養不足になりがちです。妊娠後期も子宮が大きくなり胃を圧迫するため食欲不振で食べられない場合があります。
栄養不足が原因となり生活パターンが乱れると免疫力の低下につながります。
新型インフルエンザ(A/H1N1)が流行した2009年のデータから妊婦がインフルエンザに感染すると重症化しやすいことが分かっています。その年の10月にWHOは特に妊娠後期にあたる28週目以降の妊婦がハイリスクになると注意を促しました。
重症化の理由は解明されていませんが、妊娠中にインフルエンザへ感染すると肺炎などほかの病気を引き起こす可能性があるとされています。
インフルエンザの予防接種を受ければ、お腹の赤ちゃんに対するリスクも一緒に減らせます。お母さんが感染した場合、インフルエンザウイルスによる胎児への影響はないとされていますが報告数は0ではありません。
お母さんの感染リスクを減らせれば、ウイルスが胎盤を通り抜け届く可能性が少なくなるほか、予防接種によって作られた抗体で赤ちゃんを守れます。接種後に感染してしまってもお母さんが重症化しなければ、胎児へのダメージも防げるでしょう。
妊娠後はどの週数であってもインフルエンザの予防接種を受けられます。例年インフルエンザは冬場から春先まで流行し、1月~3月頃にピークを迎えます。流行期間内のリスクを減らしたいなら12月半ばまでに一緒に住んでいる家族全員が受けるようにしましょう。
妊婦の場合、妊娠週数によっては必要となる度合いが高くなります。重症化のリスクを回避するためにいつ頃打つのがいいか考えられるよう週数ごとに見ていきましょう。
インフルエンザの予防接種は不活化ワクチンを使用するため、妊娠前に打っても問題ありません。不妊治療中であっても接種できるので担当の医師に相談し流行する前に打ち、インフルエンザのリスクを低くしておきましょう。
微量ではありますが、インフルエンザワクチンは製造の過程で卵の成分が使われています。妊娠の有無にかかわらず、卵に対するアレルギーがある場合は念のため接種前に医師へ相談してください。
アメリカでは以前、赤ちゃんの器官が作られる妊娠初期はインフルエンザの予防接種を打たないようにしていました。現在はどの時期でも予防接種を受けるよう変わっています。
妊娠初期にインフルエンザの予防接種を受けたことにより、胎児に異常が認められ流産のリスクが高まったといったデータはないとされています。日本でも妊娠初期からインフルエンザの予防接種は推奨されていますが、心配ならば安定期に入ってから打つといいでしょう。
つわりの症状が落ち着く妊娠安定期に入ってからインフルエンザの予防接種を受けるよう勧める医療機関もあります。抗体は接種後すぐにできないため、体調が良ければできるだけ早く受けるといいでしょう。
インフルエンザの流行中に妊婦が心肺機能の悪化で入院する確率は産後と比較すると高く、妊娠14週目~20週目では1.4倍になると言われています。
赤ちゃんに母乳を飲ませている間もインフルエンザのワクチンは接種できます。残念ながら授乳中のお母さんが予防接種を受けたときの詳しいデータはありません。
母乳にワクチンの成分が混ざり赤ちゃんが口にしても、ほんの少しだけなので影響は出にくいとされています。お母さんがインフルエンザにかかれば赤ちゃんも少なからず感染するリスクがあるので、授乳期間であってもしっかり予防接種を受けておくといいでしょう。
免疫力が低下している妊婦は風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。インフルエンザにかかると症状が強く出る可能性があるため気を付けなければなりません。
インフルエンザにかかったときに、赤ちゃんを守れるよう注意しておきたい症状が3つあります。症状が激しいとどどのようなことが起こりうるのかチェックしておきましょう。
妊娠初期にインフルエンザにかかり高熱が出ると、羊水の温度が上がるためお腹の赤ちゃんへの影響が心配です。高熱は心奇形など先天的な奇形に関係しているとの報告もありますが明らかではありません。
急に38℃以上の熱が出て全身がだるく、筋肉痛、関節痛、頭痛といった症状が表れたときはインフルエンザを疑いましょう。高熱によるリスクを避けるよう、早めに医療機関で診察を受けてください。
インフルエンザへの感染によって激しく咳がでる場合は要注意です。妊婦さんは咳き込むと腹圧が高まり、お腹の張りが強くなる場合があります。
また、激しい咳により子宮が収縮しお腹の痛みや出血などの症状が出ることも考えられます。状況によっては切迫流産や切迫早産の危険性が高まるでしょう。もともと喘息を持っている妊婦さんは呼吸器に症状がでやすいため特に気を付けてください。
呼吸が苦しいときは肺炎を併発している恐れがあります。インフルエンザの治療を受けた後であっても、なるべく早くもう一度医療機関を受診しましょう。
早い時点で適切な処置を受けなければ重症化する可能性があり、お母さん自身も赤ちゃんも危険です。必要ならば入院し、ひどくならないうちに治療を受けましょう。
急な発熱などによりインフルエンザかもしれないと思ったときは、できるだけ早く医療機関を受診して治療を受けるようにしてください。妊娠中は症状がひどくなるおそれがあることを忘れないようにしましょう。
感染が疑われる状態での受診では気を付けなければならないことがあります。どのような点に注意が必要なのかを見ていきましょう。
インフルエンザは感染症ですのでいつもと同じように産婦人科を訪れると、ほかの妊婦さんや患者さんにうつしてしまう可能性があります。かかりつけの産婦人科で対応してもらえるかどうか、まずは電話で確認し必要ならば予約を取りましょう。
かかりつけの内科でもインフルエンザの治療は受けられます。内科を受診するときも最初に電話で妊娠中であることや、症状を伝えておきましょう。
インフルエンザかどうか確認するためにクリニックや病院を訪れる場合は、必ずマスクを着けてきましょう。感染している可能性のある人がマスクをしていれば感染を広げる確率は低くなると考えられます。
咳やくしゃみの症状がでていなくてもマスクは必須です。隙間を作らないようぴったりと顔に密着させ感染を広げないよう努めましょう。
インフルエンザの予防接種を受けないと、重症化する確率は上がります。妊娠中のワクチン接種は自分のためだけでなく、お腹の赤ちゃんのためでもあります。
体調の悪いときに無理して打つ必要はありませんので、調子のいい日を選んで予防接種を受け、インフルエンザウイルスによって起こる様々なリスクを少なくしましょう。