【専門家監修】黄体機能不全を起こす主な原因4選|伴うリスクと治療法とは?

黄体とは

黄体とは、排卵後に卵胞が変化したもののことを言います。


女性は、妊娠の準備のために、毎月卵巣の中で同じ動きを繰り返しています。卵巣の中で卵子のもととなる卵胞を作り、そこから卵子が排出されます。これを排卵と言います。排卵後、卵胞は黄体に変化し、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌によって、子宮内膜が厚く、妊娠に適した状態になります。黄体に変化し、黄体ホルモンが出るこの時期を黄体期と言います。

そもそも黄体機能不全とは?

黄体機能不全とは、黄体ホルモンの分泌が十分でないために、子宮内膜の環境が悪くなることを言います。子宮内膜の環境が悪いと、受精卵が着床しにくくなるために妊娠がしにくくなります。また、黄体ホルモンは子宮収縮を抑える働きがありますが、その分泌が少ないと、流産しやすくなります。


黄体機能不全は不妊症の原因の1つですので、妊活をしてもなかなか妊娠できない場合は、一度検査してみるといいでしょう。

黄体機能不全の検査内容は?

黄体機能不全の検査をする場合は、おそらく不妊の疑いがある場合がほとんどでしょう。ですので、産婦人科や不妊外来で行う場合が多いです。黄体機能不全専用の検査というよりも、不妊の原因を探すためにあらゆる検査をし、その結果を総合的に見て診断される、という流れです。


ここでは、不妊症に使われる検査を3つ紹介します。これらの検査をもとに、不妊の原因を探っていきます。

ホルモン検査

妊娠をするため、または継続させるためには、様々なホルモンが作用しており、それらのホルモンの中で黄体ホルモン(プロゲステロン)の数値が低い場合は、黄体機能不全の可能性が非常に高いです。


検査方法は、基礎体温の高温期の7日目頃、または排卵後7日目頃に採血を行います。黄体ホルモンの分泌が増えるのがこの時期なので、この時期の数値でしか判断ができません。

子宮内膜検査

子宮内膜は、黄体期には妊娠に適した厚み(通常8mm以上)である必要があります。子宮内膜検査では、子宮内膜の厚さがどれくらいなのかをエコーで見たり、高温期の5〜7日目頃に内膜を少しだけ採取して、妊娠に適した内膜になっているかを調べる検査です。


検査を行う周期には避妊する必要があるので、1周期妊活をストップすることになりますが、不妊の原因が分かれば治療できるので、焦らずに検査に臨みましょう。

基礎体温の確認

不妊症の検査をする場合、一番初めに行うのが基礎体温のチェックです。基礎体温は、朝目覚めてすぐに毎日同じ時間に起き上がる前に測ります。基礎体温計は口に加えて図ります。


基礎体温を毎日記録すると、正常な基礎体温は排卵日を境に低温期と高温期がニ相に分かれており、高温期が継続して14日前後続き、低温期との温度差は0.3~0.5℃程度です。これらから外れる場合は、黄体機能不全の可能性があります。

黄体機能不全を起こす主な原因4選

黄体機能不全は、不妊症の検査をして初めて知る人が多く、妊娠を望んでいない場合は特に問題がありません。しかし、妊娠を望んでいる場合は、治療しなければ妊娠の可能性が低くなってしまいます。女性は年を重ねるたびに妊娠率が低くなっていきますので、早く原因を突き止めて適した治療を始める必要があります。


黄体機能不全を起こす原因はいくつかありますが、ここでは4つ紹介します。原因によって治療法も変わってくるでしょう。

黄体機能不全を起こす主な原因1:下垂体腺腫

下垂体腺腫とは、ホルモンの分泌をコントロールする下垂体にできる良性腫瘍のことで、これによって妊娠に必要な黄体ホルモンの分泌が上手くいかず、黄体機能不全となってしまうことがあります。


治療法としては手術が行われることが多く、一般的には経鼻手術となります。薬物治療もありますが、長期の通院が必要ですので、不妊症でできるだけ早く治したい場合は手術が選択されます。

黄体機能不全を起こす主な原因2:高プロラクチン血症

高プロラクチン血症とは、プロラクチンが過剰に分泌される症状のことです。プロラクチンは、乳腺を刺激して乳汁を分泌し、排卵を抑制して無月経とする働きのあるホルモンです。これが過剰分泌されることによって、無排卵となり、妊娠が難しくなります。


治療は薬剤が基本です。下垂体腺腫が原因となって起こる場合もあるので、その場合はまず下垂体腺腫を治すために手術を行う場合もあります。

黄体機能不全を起こす主な原因3:卵巣機能が低下

卵巣機能が低下すると、排卵が上手くいかず、その結果、黄体が誘導されずに黄体機能不全になってしまいます。


卵巣機能が低下している状態で妊娠を望む場合、ホルモン補充療法を行いながら排卵誘発剤を使用して排卵を促すことになりますが、卵巣機能低下がさらに進むと40歳前で閉経に向かってしまいます。


閉経してしまうと妊娠は不可能ですので、その可能性がある場合は卵子凍結などの方法が取られることもあります。

黄体機能不全を起こす主な原因4:ホルモン分泌不足

黄体機能不全は、黄体ホルモンの分泌不足が原因となって起こることがあります。分泌が足りないので補充する必要がありますが、黄体ホルモン自体を補充するホルモン剤の投与と、黄体を刺激して分泌を促すホルモン剤の投与によって、必要量の黄体ホルモンを子宮内に存在させます。


ホルモン剤の効果を最大限活かすために、ビタミン剤などを一緒に投与する場合もあります。

黄体機能不全に伴うリスク3選

黄体機能不全は、身体に痛みやだるさなどはあまり起こらないので、日常生活に支障がないことがほとんどです。不妊症の検査をして初めて気づく人が多いので、生理不順になったりPMSがひどくなる、というわけでもありません。


しかし、特に問題ないからといって放置しておくのはやめましょう。ここで、黄体機能不全に伴うリスクを3つ紹介しますので、もし自身が黄体機能不全だと分かっている場合は、医師に相談してください。

黄体機能不全で伴うリスク1:不妊症

不妊症の原因は数多くあり、それは女性に限らず男性側にもあります。妊娠を希望している人が黄体機能不全と診断された場合は、不妊治療が必要となります。不妊治療は、毎周期おこなっても妊娠できる保証はありません。そのため、妊娠できるまで治療費がかかり続けます。


また、黄体機能不全は不妊症の他の原因を併発している可能性もあるので、それぞれの原因を突き止めなければなりません。

黄体機能不全で伴うリスク2:習慣流産

習慣流産とは、妊娠はするものの流早産を繰り返して妊娠が継続できない状況のことを指します。流産自体は珍しいことではありませんが、流産が3回以上続く場合は不育症の疑いがあります。


黄体機能不全がその原因となっている場合がありますので、もし流産が続くようであれば、一度検査をしてもらいましょう。

黄体機能不全で伴うリスク3:不正性器出血

黄体機能不全は、不正出血の症状が出る場合があります。特に黄体期に出血することが多く、注意が必要です。


生理以外での出血は、身体に何か問題が起きていることを示すサインです。量が少ないから、1日だけだから、など軽くとらえるのではなく、不正出血であることを医師に相談しましょう。

黄体機能不全の治療法5選

黄体機能不全にはいくつか治療法があり、黄体機能不全の原因が何かによって治療法も変わります。また、妊娠を望んでいるかどうかや年齢などによっても治療法は選択されます。


ここでは、黄体機能不全の治療法を5つ紹介します。医師と相談の上、自分に一番合った治療法を選択しましょう。

黄体機能不全の治療法1:黄体賦活化(刺激)療法

黄体賦活化(刺激)療法は、黄体ホルモンを直接増やすのではなく、黄体を刺激するHCGというホルモン剤を投与することによって、黄体ホルモンの分泌を促し、黄体機能を改善させる治療法です。


排卵日前後に性交渉を持った状態でこの治療をすると、黄体ホルモンが上手く働いて妊娠につながる可能性があります。

黄体機能不全の治療法2:排卵誘発法(クロミフェン療法)を行う

クロミフェン療法とは、経口の排卵誘発薬の投与によって排卵を誘発する治療法です。一般的に、月経3~5日から1日1~3錠を5日間服用します。


ただし、副作用もありますので、体調に変化があってつらい場合は必ず医師に相談しましょう。また、長期の服用により子宮内膜が薄くなることがあるので、注意が必要です。

黄体機能不全の治療法3:黄体ホルモン補充療法

黄体ホルモン補充療法とは、黄体賦活化(刺激)療法とは異なり、黄体ホルモンを直接注入する治療法です。黄体ホルモンの分泌量が少ないのを外部から注入して補うやり方なので、根本的に治すわけではなく、その周期の妊娠の確率を上げることが目的です。

黄体機能不全の治療法4:ドパミン受容体作動薬

ドパミン受容体作動薬とは、下垂体腺腫が原因でも手術ができない方や、原因が分からない方に投与する薬です。この薬は脳の下垂体にはたらき、排卵を抑制する働きを持つプロラクチンの分泌を直接的に低下させます。それによって、排卵が回復する効果を期待します。

黄体機能不全の治療法5:黄体形成ホルモン補充療法

黄体形成ホルモン補充療法とは、妊娠に必要なホルモンを分泌させる働きのある黄体形成ホルモンを注入する治療法です。


黄体形成ホルモンは、子宮内膜を厚くするエストロゲンと、内膜を柔らかくして、血管を作るプロゲステロンという2つのホルモンを分泌させる働きがあり、これらは妊娠が継続するために必要なホルモンです。

黄体機能不全を良く理解し早めに対処しよう

黄体機能不全は、不妊の原因になるにもかかわらず、妊活を始めるまで気づきにくい病気です。黄体機能不全の場合は、不妊治療が必須となりますので、信頼できる医師のもとで適した治療を行いながら、妊娠を目指しましょう。


妊娠は歳をとるごとにできにくくなりますので、黄体機能不全が見つかるとさらに可能性が低くなってしまいます。早めの対処で妊娠につなげることができますので、まずは医師に相談してみましょう。