【専門家監修】生卵でトキソプラズマに感染する?妊婦が卵を食べる時の注意点7選

トキソプラズマ症とは

トキソプラズマ原虫という寄生虫による感染症です。


トキソプラズマ原虫は猫などの哺乳類や鳥類などの体内に寄生していて、その動物の排泄物にも含まれているので、排泄物によっての汚染で土の中にも寄生していることもあります。


トキソプラズマ症は一度感染すると二度と感染することはありません。感染しても通常は症状が出ないことがほとんどですが、病気などで免疫力が低下している人は注意が必要です。


また、妊娠中に初めて感染すると胎児にも感染してしまい【先天性トキソプラズマ症】を発症してしまう可能性があります。


先天性トキソプラズマ症は死産や流産してしまったり、目や脳に障害が出たり、精神遅滞が出ることもあります。

妊娠中における生卵とトキソプラズマ症の関連性

妊婦は胎児を異物として攻撃してしまわないように体が免疫力を低下させる為、感染症にかかると重症化してしまう可能性があります。


なので食品による感染症にも注意が必要です。


特に生卵や生の魚介類などの(生もの)です。未加熱のチーズやトキソプラズマ症の原因でもある生肉には気を付けなければなりません。

生卵はトキソプラズマ症の感染源ではない

免疫力が低下している妊婦は食あたりや食中毒にかかりやすくなり、下痢になることで子宮を刺激してしまい流産や早産になってしまう可能性があります。


なのでそのリスクを減らすためにも妊娠中に生ものの摂取は避けるべきです。


生卵で気を付けなければならないのは食中毒で、トキソプラズマ症ではありません。


では生卵を摂取するとどのような菌による食中毒を引き起こす可能性があるのでしょうか。

妊婦が生卵を避けるべき理由はサルモネラ菌

卵の殻には【サルモネラ菌】という菌が付着している可能性があります。


卵を割ったときに中に入り、そのまま生卵を摂取することにより体内で菌が繁殖して食中毒を起こしてしまうのです。


妊娠中のサルモネラ菌による食中毒は胎児に直接影響があるわけではありませんが、発熱や嘔吐や腹痛を引き起こし母体に負担がかかるのと、下痢などで子宮収縮してしまうことで結果胎児に影響が出てしまう可能性があるのです。

妊婦が卵を食べる時の7つの注意点

食中毒を引き起こす可能性がある卵ですが、とても栄養価が高い食品でもあるのです。


なのでたくさんの栄養を必要とする妊婦にはとてもおすすめの食品で、1日に1~2個食事に取り入れて食べるのが良いとされています。


ですがやはり食中毒には気を付けたいので、食中毒にならない為に食べる時の注意点をこれから7つご紹介していきたいと思います。

妊婦が卵を食べる時の注意点1:割れがないものを選ぶ

通常の卵は殻に覆われているため中身には雑菌が入りにくくなっています。


ですが、殻にひびが入っていたり割れていたりするとそこから菌が入り込んでしまうことがあるのです。


なので、購入する際は卵にひびや割れがないかをしっかり確認するようにしましょう。

妊婦が卵を食べる時の注意点2:冷蔵庫で保管する

卵の賞味期限とは、10℃以下で保存されている場合の日数です。


10℃以上の保存では殻に付いた菌が増殖してしまう可能性があるので、購入後は必ずすぐ冷蔵庫に入れるようにしましょう。


冷蔵庫のドアポケットに卵保存用の場所がある場合が多いですが、ドアポケットは開けたときに温度が上がってしまったり、振動で卵がひび割れしてしまう可能性もあるので、卵は冷蔵庫の奥にパックのまま保存するようにしましょう。


また、卵の丸い方には気室という空気のポケットがあるので、中で黄身が殻に当たらないように丸い方を上にして保存するのもとても良いです。

妊婦が卵を食べる時の注意点3:清潔な器具を使用する

生卵を割った手でそのまま食品に触ったりするのも気を付けなければなりません。


同様に生卵を扱ったボウルや箸などの調理器具などにも菌が付着している可能性があるので、使用後はしっかり洗い熱湯で殺菌消毒することが大切です。


卵の殻に菌が付着しているかもという意識を持って、卵を扱った際は手を洗うことも忘れないようにしましょう。

妊婦が卵を食べる時の注意点4:調理する直前に割る

生卵は割ってそのままにしておくと菌が増殖しやすくなってしまいます。


冷蔵庫に入れておけば安心と思っている方もいると思いますが、サルモネラ菌は5℃くらいの温度でも増殖出来るので、冷蔵庫に入れていても割り置きは危険です。


なので卵は使う分だけを調理直前に割り、すぐに調理するようにしましょう。

妊婦が卵を食べる時の注意点5:十分に加熱する

サルモネラ菌は75℃以上の温度で1分以上加熱すると死滅します。


免疫力が低下している妊婦はもちろんですが、高齢者や2歳以下の乳幼児などの免疫力が低い人も食中毒で重症化してしまう可能性があるので、生卵ではなくしっかり加熱した卵を食べるようにしましょう。

妊婦が卵を食べる時の注意点6:半熟も避けた方がよい

75℃、1分以上で加熱したからといって中心部までしっかり加熱されていない半熟状態では菌は死滅していません。


なので上記と同じく妊婦、高齢者、乳幼児などの免疫力が低い方は半熟でも食中毒の危険があるので避けた方が良いでしょう。

妊婦が卵を食べる時の注意点7:未加熱の卵が混ざっている食品を避ける

免疫力が低い方は未加熱の卵が混ざっている食品にも注意が必要です。

特に自家製のマヨネーズなどは生卵を使用しているにもかかわらず、非加熱である意識が薄くなりがちです。


外食などすると生卵が入った自家製マヨネーズやソースをかけた料理を提供しているお店もあります。自家製マヨネーズで食中毒の例もあるので妊婦などは気を付けた方が良いでしょう。


また、アイスクリームやババロアなど非加熱のスイーツなどでも生卵を使用していたりもするので、妊婦などで気になる方は避けた方が良いかもしれません。

妊娠中におけるトキソプラズマ症の予防策4選

トキソプラズマ症は健康で免疫力がであれば感染してもほとんど症状が出ずに済みますが、妊婦が初めて感染すると胎児にも影響が出てしまう可能性がある感染症です。


なので妊婦でトキソプラズマの抗体を持っていない方は感染しないように気を付けなければなりません。


では、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。これからトキソプラズマ症の予防策を4つご紹介します。

トキソプラズマ症の予防策1:食肉は十分に加熱する

トキソプラズマという寄生虫は牛・豚・猫などの哺乳類や、鳥類の体内に寄生しています。


なので食肉にも付いている可能性があり、加熱が十分でないのに食べてしまうと感染してしまう恐れがあります。


この寄生虫は食肉の中心が67℃になるまでの加熱、もしくは-12℃になるまでの凍結で死滅するので、調理する際はしっかりと加熱するようにしましょう。


冷凍してからの加熱もおすすめです。

トキソプラズマ症の予防策2:猫との接触を避ける

トキソプラズマは猫を終宿主とし、猫の腸に卵を産みつけます。


腸に産みつけられた卵が猫の糞と一緒に外に出されて、最低24時間で感染を起こせるようになります。


なので、妊婦の方は猫との接触を避けた方が良いですが、自宅で猫を飼っているという方は猫の排泄物の処理は24時間以内に他の人にしてもらうようにしましょう。


また、飼っている猫を屋外に出さないことや、生ものを与えないなどしてトキソプラズマに接触しないようにするのも大事です。


猫と接触した場合は必ずしっかり手を洗いましょう。

トキソプラズマ症の予防策3:素手で土を触らない

土や砂にはトキソプラズマに感染した猫の排泄物が混ざってしまっていることがある為、それを触ることによって感染する可能性があります。


なのでガーデニングなどで土を触る場合は必ず手袋をして直接土に触れないように気を付けることと、土を触った後はしっかりと手を洗うようにしましょう。

トキソプラズマ症の予防策4:井戸水や湧き水は避ける

井戸水や湧き水などもトキソプラズマに汚染された土壌が流れ込んでいる可能性があるので避けた方が良いでしょう。


また、井戸水や湧き水はトキソプラズマだけでなく、カンピロバクターや大腸菌など様々な病原菌に感染する可能性もあるので注意が必要です。


水は飲料水以外は飲まないようにしましょう。

生卵や生肉以外に妊婦が避けるべき食品4つ

これまで妊婦が生卵や生肉を食べるのを避けた方が良い理由をお伝えしてきましたが、この他にも妊婦が食べると胎児に影響が出てしまう可能性がある食品があります。


これから生卵と生肉以外で妊婦が避けるべき食品を4つご紹介していきたいと思います。

妊婦が避けるべき食品1:加熱処理されていない食肉加工品

非加熱食肉加工品には生ハムが挙げられます。


なぜ生ハムなどを避けた方が良いのかというと、この非加熱食肉加工品にはリステリアという菌が付いている可能性があるからです。


健康な人がリステリア菌に感染しても症状が出ないことがほとんどですが、妊婦は免疫力が低下している為重症化する可能性があります。


妊婦がリステリア菌に感染すると、髄膜炎や敗血症などを起こしてしまったり、胎盤を通して胎児に感染してしまい流産や早産の原因になることもあります。

妊婦が避けるべき食品2:加熱処理されていない乳製品

これにはナチュラルチーズなどが挙げられます。


ナチュラルチーズは非加熱の生乳で作られているのでリステリア菌が付着している可能性があります。


特に輸入品には注意が必要です。日本はナチュラルチーズを加熱殺菌するように義務付けているので国産品であれば感染の可能性はありませんが、念のため加熱したものを食べるようにしましょう。

妊婦が避けるべき食品3:加熱処理されていない魚介類加工品

こちらはスモークサーモンなどが挙げられます。


スモークサーモンは低温で燻製しただけなのでリステリア菌は死滅しません。


スモークサーモンをそのまま食べるのは避けた方が良いですが、新鮮なものをしっかりと加熱したものであれば少量なら食べても問題ないでしょう。

妊婦が避けるべき食品4:生魚

生魚にはリステリア菌が付着している可能性に加え、アニサキスによる食中毒にも注意が必要です。


アニサキスとは多くの魚介類に寄生する寄生虫の一種で、アニサキスが寄生した魚介類を生で食べることによって体内に入り込みアニサキス症を引き起こします。


アニサキス症が直接胎児に影響を与えることはないようですが、母体に負担がかかり流産や早産の原因になることもあるので気を付けなければなりません。


魚はとても栄養豊富な食材なので、妊娠中はしっかりと加熱した魚料理を食べるようにしましょう。

避けるべき食品を食べてしまったら?

これまで妊婦が避けるべき食品をいくつか挙げてきましたが、これらの食材を食べてしまった場合、胎児は大丈夫なのか不安になる方も多いと思います。

そんな場合はどうしたら良いのでしょうか。

不安な場合は医師に相談をする

避けるべき食品を食べてしまったからと言って、必ずしも菌に感染するわけではありません。むしろほとんどの方が大丈夫だと思います。


ですがやはり妊娠中は胎児への影響が心配になってしまうと思います。


不安な場合はかかりつけの医師に相談して検査してもらうなど、医師の指示に従い不安を取り除きましょう。

症状がでたら早めの受診を

症状とは、トキソプラズマ症の場合は微熱やリンパ節の腫れなど軽いインフルエンザに似た症状などで、リステリア症の場合は発熱や嘔吐や下痢などの症状が出ます。


避けるべき食品を食べてしまい、上記のような症状が出るようなことがあれば早めに受診して、その際しっかりと避けるべき食品を食べたことを医師に伝えましょう。

妊娠中の食事には注意が必要

これまでトキソプラズマ症やリステリア症などがどのような感染症なのかをお伝えしてきたのと同時に、それらの感染症が食べ物によって起こる可能性があることがおわかりいただけたと思います。


ただ注意点を守って保存や調理をすれば大丈夫なこともわかっていただけたと思います。


妊娠中は色々なことを制限されるのに、その上食事にまで気を付けなければならないとなるとストレスが溜まってしまうかもしれませんが、必ず感染してしまうというわけではないので、あまり神経質になりすぎずゆったりとした妊婦生活を過ごしましょう。