妊娠中は体に色々な変化が訪れます。自覚症状がなく、順調に経過しているように見えてもトラブルが隠れている場合があります。そのため、妊婦健康診査の際に異常の早期発見や予防を目的とした血液検査を行います。
例えば、感染症に感染していないか、ウィルスに対する抗体があるかなど調べます。なぜなら、出産時に赤ちゃんに感染することがあるからです。血液検査の際に異常が見つかった場合、治療や入院が必要になることもあります。
一般的に妊婦検診は、妊娠23週(6ヶ月末)までは4週間に1回、妊娠24週~35週(7~9ヶ月末)は2週間に1回、妊娠36週(10ヶ月)以後出産までは毎週1回のペースで行います。
そして、血液検査が行われる一般的なタイミングは、妊娠初期、中期、後期です。その際、何回の血液検査があるのかは、次項でご紹介します。
妊娠中の血液検査は、妊娠初期、中期、後期に行われます。異常がなければこの3回のみで終わりますが、血液検査の値に異常が見られた場合は、再検査が必要となり3回以上となる場合があります。
採血が苦手なママにとっては憂鬱な検査ではありますが、ママと赤ちゃんを守るために大切な検査です。採血中に気分が悪くなる方は、前もって気分が悪くなることを伝えておくと横になった状態で採血してくれることもあるので、相談してみてください。
妊娠中の血液検査の費用は、1回約1万円かかるといわれています。また、検査する項目が増えればその分、費用が高くなるでしょう。
各自治体で母子手帳を交付してもらった際、妊婦健康診査助成券が交付されるため、助成券を使用すれば自己負担額を抑えることができるでしょう。しかし、各自治体によって助成金額は異なります。助成券を使用しても、血液検査が無料となるわけではないので注意しましょう。
妊娠中に行う血液検査では、妊娠経過が順調に進んでいるか、ママが感染症にかかっていないか、ウィルスに対する抗体が基準値まであるかなど、妊娠前には調べたことのなかったような項目も検査します。これらは、ママにとっても赤ちゃんにとっても大事な検査となります。
ここからは、妊娠中の血液検査には、具体的にどのような検査項目があるのかをご紹介していきます。
血液型の検査では、ABO式血液型とRh式血液型を調べます。この検査は妊娠初期に行われる検査です。
ママの血液型がRh(ー)の場合、1回目の妊娠では大きな問題はありませんが、2回目以降の妊娠で赤ちゃんに血液型不適合という状態が起こってしまい、貧血や黄疸の症状が強く現れる可能性があるといわれています。そのため、1回目の妊娠時に治療をしていく必要があります。
また、緊急手術や出産時に大出血して輸血が必要な際に備えるため、必要な項目となります。
風疹抗体の検査は、妊娠初期に行います。妊娠初期に初めて風疹にかかると、赤ちゃんが先天性風疹症候群になる可能性があります。
もし、抗体がない場合は妊娠中に風疹ワクチンを接種することはできないため、風疹にかからないようお母さんだけでなく御家族も感染予防に努めるなどの注意が必要です。
貧血の検査は妊娠初期、中期、後期に行います。妊娠すると赤ちゃんを育てるために、ママの血液量は増え血液は薄まるといわれています。これは、妊娠に伴う生理的な症状です。
しかし、貧血が進みすぎることや、逆に血液の濃度が濃くなると赤ちゃんの発育に影響がでる可能性があるため、定期的に検査します。
貧血が進みすぎてしまっている場合は、鉄分を補うため鉄剤など処方されることもあります。
血糖値の検査は妊娠初期、中期に行います。妊娠中は赤ちゃんに優先して糖分を送るため、ママの体は糖分が不足しないよう血糖値を下げるホルモンの分泌が抑えられるといわれています。
血糖値が高いと、妊娠糖尿病の可能性も考えられるため、糖尿病の検査が必要かどうかを調べるために検査します。
この検査が行われる直前に甘い物など食べたり、飲んだりすると、正常な値が検査できないため、注意が必要です。
血液凝固能検査は妊娠初期、中期、後期に行います。
女性の卵巣から出るホルモンには、もともと血液を固まりやすくする血液凝固作用があるといわれています。妊娠中には、このホルモンが増加するため妊娠前よりも血液が固まりやすい状態にあります。
血液凝固作用が高いと血管内に血の塊ができ、血管が詰まってしまいますが、逆に血液凝固作用が低いと血液が止まらず、大出血を起こしてしまう可能性があるため、検査を行い異常がないか確認します。
B型肝炎(HBs抗原)検査は妊娠初期に行います。B型肝炎ウィルスは血液感染し、母児感染では産道を介する感染がほとんどだといわれています。
B型肝炎の赤ちゃんは生後12時間以内に感染防止対策の開始が推奨されており、ワクチン投与など治療が行われます。感染の早期発見のため大事な検査です。
C型肝炎(HCV抗体)検査は、妊娠初期に行います。C型肝炎は、約10~20%の確率で母子感染する可能性があるといわれています。
C型肝炎にかかると、肝機能が低下し発熱や全身倦怠感などの症状が出現する人もいれば、無症状の人もいます。また、C型肝炎は肝炎の中でも、慢性肝炎や肝硬変、肝がんへと移行する確率の高いといわれています。
梅毒の検査は、妊娠初期に行います。梅毒は性感染症の1つです。感染からの期間や症状によって、第1期〜第4期に分けられています。
ママが梅毒に感染している場合、高い確率で胎盤から赤ちゃんに感染してしまうといわれています。ママと赤ちゃんへのリスクが高い感染症のため、早期発見と早期治療をするために重要な検査です。
トキソプラズマはトキソプラズマ原虫という病原体が原因の感染症で、それに対して抗体があるかを検査します。この検査は任意検査ですが、妊娠初期の血液検査項目としている病院が多いです。
妊娠初期に感染した場合、胎盤から赤ちゃんへ感染し、約10%が先天性トキソプラズマ症を引き起こす可能性があるため、大事な検査といえます。
サイトメガロウィルスは、ヘルペスウィルスの一種です。多くの人が幼少期にかかりますが、通常の免疫機能があれば、症状が出ないといわれています。
妊娠中のママが感染すると胎盤から赤ちゃんに感染する可能性がありますが、必ずしも感染し、症状が出るわけではありません。この検査も任意の検査ですが、妊娠初期に検査することができます。
不規則抗体検査は、妊娠初期に行われます。場合によっては、中期と後期にも行われます。
検査で陽性の場合、緊急手術や出産時の大出血に対して輸血を投与した際、同じ血液型であるにもかかわらず、副作用を起こしてしまう可能性があります。
また、この不規則抗体が胎盤を通って赤ちゃんの血液中のヘモグロビンと交わることで、赤ちゃんに貧血などのトラブルを起こしてしまう可能性も高くなってくるため、大事な検査となります。
HTLV-1抗体検査は、ヒトT細胞白血病ウィルス1型というウィルスに感染していないかを検査します。この検査は、妊娠後期に行います。
このウィルスに感染している場合、母乳を介して赤ちゃんに感染する可能性があるため、早期発見し感染が確認された場合には、ミルクにするなど赤ちゃんが感染しないような対策を考える必要があるでしょう。
HIV検査は、エイズになる原因のHIV(ヒト免疫不全ウィルス)に感染していないかどうかを調べる検査です。この検査は、妊娠初期に行います。必須の検査項目ではありませんが、その他の感染症と一緒に検査する病院がほとんどです。
この検査で仮に陽性が出たとしても、約95%は偽陽性といわれており、すなわち陰性であることがほとんどです。陽性が出た際は、より精度の高い検査を行い、それでも陽性であった場合は治療が必要となります。
妊娠中に血液検査が行われる際、中には生活習慣によって検査値が左右されるものもあります。
どのようなことが検査値を左右するのか、血液検査を受ける際に気を付けた方がよいことを詳しく説明します。
血液検査で血糖値以外の項目は、直前に食事をしても影響のないものがほとんどだといわれています。
しかし、前日の寝る直前の食事、また日頃から糖分の多く含まれる食べ物や飲み物をよく摂っているママは注意が必要です。なぜなら、検査前に多くの糖分を摂取すると、血糖値が高く出てしまう可能性があるからです。
また、病院によっては当日朝食を摂らないよう指示があり、空腹時の血糖値を測ることがあります。しかし、特に指示がない限りは、朝食を摂っても問題はありません。
血液検査の値や体重を気にして、前日や当日の食事を抜くママもいるでしょう。しかし、直前に食事を抜いたとしても、検査結果には普段からの食生活が反映されます。
普段から、肉・魚・野菜類をバランスよく食べるように心がけることが大切です。
妊娠中は妊娠初期・中期・後期と、最低3回血液検査があることがわかりました。これは、ママの体の異常を早期発見するためと、妊娠が順調に進んでいるかどうかを見るためです。
妊娠際の血液検査について理解し、不安な要素がある場合には検査をしたりかかりつけ医に相談しながら安心してマタニティライフを過ごせるようにしましょう。