出産費用はどのくらい?出産費用10個と負担を軽減できる6つの制度

出産費用はどのくらい貯蓄があれば良い?

出産費用はあらかじめ準備したほうがよいと言われていますが、実際には、20万円から30万円程は必要でしょう。


公益社団法人国民健康保険中央会が2017年に公表したデータによると、妊婦が負担する出産費用の全国平均は約50万円となっていますが、地方によって差があります。


正常分娩で、もっとも出産費用が安いのは鳥取県の396,331円、逆に一番出産費用が高いのは東京都で621,814円です。ただし、軽減措置がある場合もあり、必ずしも全額が自己負担になる訳ではありません。

出産費用 平成28年度|公益社団法人 国民健康保険中央会

出産に掛かる費用10個

出産費用が思いのほか高額だった、と驚いている方もいるかもしれません。出産では子どもを産むための分娩費用だけでなく、その他にもさまざまな費用が発生します。


ここからは、出産費用として考えておかなければならない費用を紹介いたします。出産費用がどうして高額になってしまうのか、節約する方法はないものでしょうか。それぞれの費用について、細かく見ていきましょう。

出産に掛かる費用1:マタニティ用品

妊婦として必要になるマタニティ用品は、3万円から5万円程度の額は必要になるとみておきましょう。


妊娠してだんだんとお腹が大きくなってくると、ふだん着ていた服も着られなくなってきます。そのうちお腹の部分がゆったりしている、マタニティウェアが必要になってきますので、これらのマタニティウェアやグッズにかかる費用を、マタニティ用品として計算します。


出産が初めてではない場合や、身近な人が必要なくなったものをもらえる場合は、節約することも可能です。

出産に掛かる費用2:妊婦検診

妊娠すると受ける必要がある「妊婦検診」は、1回につき5,000円から15,000円程度かかることがありますが、自己負担額が少なくなるケースもあります。


妊婦検診は、自治体による公費負担がある場合があります。ただし公費負担額は自治体によって異なるため、事前に確認をしておくとよいでしょう。


また、一般的な妊娠期間より長い場合や、それ以外で妊婦検診回数が増えた場合には、全額自己負担で検診を受けることになるため、多めに見積もっておくことをおすすめします。

妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について|厚生労働省

出産に掛かる費用3:入院・出産費

出産費用のうち、削れない費用として入院・出産費用がありますが、平均して25万円程度はかかるといわれています。


ただ、出産費用は地域や出産方法によって、金額に大きな違いがでてきます。たとえば「普通分娩」の場合は、20万円から25万円程度が一般的ではないでしょうか。普通分娩は医療行為ではないため、保険適用外になります。

おかねとほけん

出産に掛かる費用4:出産・帝王切開

妊娠時の妊婦の健康状態や、出産時の胎児の状態によって、医師により「帝王切開(ていおうせっかい)」が選択された場合は、出産費用として40万円程度が必要になるでしょう。


普通分娩は健康保険適用外ですが、帝王切開の場合は医療行為であると見なされ、健康保険の適用対象となっています。しかし、普通分娩での出産よりも処置が増えるため、一般的に10万円から15万円程度の費用が上乗せになります。

おかねとほけん

出産に掛かる費用5:出産・無痛分娩

出産のときに「無痛分娩」を選択した場合の出産費用は、普通分娩よりも10万円から20万円程度高くなることが多いでしょう。


無痛分娩を選択した場合、麻酔科医による処置を受ける必要がでてくるため、普通分娩のときよりも費用がかかってしまいます。ただし、無痛分娩にどのくらいの費用がかかるかは病院によっても差があるため、複数の病院の情報から費用を計算してみてはいかがでしょうか。

出産に掛かる費用6:入院費用

出産のため入院した場合、入院費用として検査や処置代を含めて10万円~20万円程度はかかることになるでしょう。入院時に個室を選択した場合は、病院で設定した個室代が別途加算されますので、そちらも計算が必要です。


個室を希望していなくても、他の部屋に空きがなくて個室に入る場合にも、個室代が請求される可能性があります。希望していないのに個室になりますと言われた場合は、事前に金額を確認しましょう。

出産に掛かる費用7:産科医療補償制度

「産科医療補償制度」は、出産時に何らかのトラブルにより、赤ちゃんに障害が残ってしまった場合などに補償を受けられる制度のことです。


産科医療保障制度に加入している施設で出産しなければなりませんが、平成26年度の段階で99.8%が加入していることから、基本的にどの病院でも受けることができると言えるでしょう。また、産科医療保障制度分は出産育児一時金に加算されているため、実質負担はありません。

暮らしに役立つ情報|内閣府大臣官房政府広報室

出産に掛かる費用8:新生児管理保育料

「新生児管理保育料」とは、生まれたばかりの赤ちゃんを病院で管理・保育してもらうためにかかる費用のことです。一般的に5万円程度かかり、こちらは退院時に支払うことになります。


新生児管理保育料は、病院や地方などによる金額の差はほぼないと言えるでしょう。ただし、新生児管理保育料の中には、新生児に薬剤を投与した場合の費用なども含まれています。何かしら処置が必要になった場合は、多めにかかることもあります。

厚生労働省

出産に掛かる費用9:里帰り費用

妊婦さんによっては里帰り出産を希望することもあるでしょう。そのようなときは、出産費用の中に「里帰り費用」も計算しておく必要があります。


里帰り費用として、妊婦さん自身が帰るための往路の費用と、母子手帳を発行した自治体以外で妊婦検診を受けた際の費用を、自己負担する必要がでてきますので注意してください。


また、旦那さんが里帰り先に様子を見に来る際にかかる費用も、里帰り費用に含まれるでしょう。

出産に掛かる費用10:ベビー用品

赤ちゃんが生まれた瞬間から必要になるグッズなどをまとめて、「ベビー用品」としての費用が10万円から12万円程度はかかるでしょう。この金額には、ベビーカーやベビーベッド代なども含まれています。


赤ちゃんが身に着けるための新生児用のウェアやおむつ代、ミルク代などは基本的に自己負担となっていますので出産前までに用意しましょう。身近な人から使わなくなったものを譲り受けたり、ベビーカーをレンタルですませたりするなどの節約方法もあります。

出産費用の負担を軽減できる6つの制度

出産にはかなりのお金がかかるということで驚いた方も多いかもしれません。しかし、これらの出産費用について負担を軽減させるための給付金支給などが行われています。


そこで、ここでは出産費用の負担を軽減できる制度を6つ紹介します。知っているのと知らないのとでは大違いで、うまく制度を利用すれば自己負担額をかなり減らすことができるでしょう。ぜひ、チェックしてみてください。

制度1:高額療養費制度

1つ目の制度である、「高額療養費制度」とは、健康保険の対象となった医療行為に対して、治療費が自己負担限度額よりも高額になった場合に、限度額以上を軽減できる制度です。


つまり、健康保険の対象でない普通分娩や無痛分娩は対象ではありません。しかし、帝王切開や他の理由で出産に医療行為が必要になったときは、年齢や所得に応じて条件次第で申請することが可能です。対象になるかどうか確認してみてはいかがでしょうか。

高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省

制度2:出産手当金

「出産手当金」は健康保険から支給されるものです。たとえば、勤務先が全国健康保険協会に加入している場合、出産予定日までの42日間、出産後56日間の産休中に、もともとの給料の2/3の額を日割り計算して支給してもらえます。


この制度は、勤務先から産休中の給料支給がなかった場合に受けられる制度なので、ご注意ください。注意点としては、出産予定日から実際の出産日まで間があいてしまった場合、その期間は支給対象にならないことです。

出産で会社を休んだとき|全国健康保険協会

制度3:出産育児一時金

「出産育児一時金」は、健康保険に加入しているか加入者の扶養家族が対象であり、妊娠4か月以上で出産をした場合に、新生児1人につき42万円がもらえる制度です。


すでにご紹介した、産科医療補償制度に加入している施設で出産した場合は1人につき42万円、産科医療補償制度未加入の施設で出産した場合は40.4万円の支給となっています。日本国内の施設はほぼ加入済みですが、海外で出産した場合は未加入の扱いとなるでしょう。

子どもが生まれたとき|全国健康保険協会

出産育児一時金を受け取る際の注意点

出産育児一時金は、自分で直接受け取る以外に、分娩機関に直接支払われる「直接支払制度」が利用できます。


直接支払制度の特徴として、出産を終えて退院時の支払いに、この出産育児一時金をあてることができるというメリットがあります。この場合、出産育児一時金を超えた額のみ、病院から請求されます。ただし、利用できない医療機関もあるため、確認してみましょう。

全国健康保険協会 大阪支部

制度4:育児休業給付

「育児休業給付」は育児休業期間中に国から受けられる支援制度で、育児休業前に受け取っていた給料を、条件を満たせば、ある程度給付してもらえる制度になっています。こちらは、育児休業中の収入の心配を、軽減させるために導入された制度です。


制度を利用するにはいくつか条件があります。たとえば、育児休業を開始するまでに12か月間雇用保険に加入していること、育児休業期間後に復帰予定であることなどです。事前に確認しておくとよいでしょう。

育児休業給付について|厚生労働省

制度5:傷病手当金

出産時以外にも利用できる制度として、仕事と関係ないケガや病気で利用できる「傷病手当金」があります。


妊娠で傷病手当金を利用する場合は、つわりのひどい「妊娠悪阻(おそ)」や「切迫流産」などが対象になるでしょう。これらが原因で会社に出社することができなくなったような場合には、傷病手当金が支給されます。


国民健康保険ではなく、勤務先の健康保険に加入していることが条件です。

病気やケガで会社を休んだとき|全国健康保険協会

制度6:医療費控除

出産後に確定申告をすることで、「医療費控除」という制度を利用することも可能です。


妊娠・出産関係で通院したときの交通費や、入院した際の食事代などの入院代、分娩費用などが対象になるでしょう。ただし、確定申告をしないと医療費控除制度は利用できません。

医療費控除の対象となる出産費用の具体例|国税庁

出産費用ケースごとの金額

出産においては産婦人科のある病院で出産するという人が多いですが、診療所や助産所といった施設を選んだときの費用についてはどうなるのでしょうか。


こちらは、公益社団法人国民健康保険中央会の「正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)」を参考にしています。データによるともっとも安価なのは助産所であり、高額になりやすいのは病院と言えるでしょう。

正常分娩:施設別出産費用
病院平均511,652円
診療所平均501,408円
助産所平均464,943円
正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)

出産費用は地域やタイミングによって異なる

出産費用について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。出産費用はかなり高額になりやすいのですが軽減措置も充実しているため、場合によってはそれほど自己資金が必要ないこともあります。


出産費用は出産する地域、タイミングや分娩方法によっても変わってくるため、自分のケースはいくらかかるかチェックしてみてください。