赤ちゃんは錠剤やカプセルをまだ上手に飲み込めないため、病院で処方されることはめったにないでしょう。固形物を飲み込むことが上手ではない赤ちゃんでも飲める、シロップ薬や粉薬が中心です。
また、乳幼児向けの薬には、味やにおいを変えて飲みやすくしたり、小さい子供が興味を持つようなきれいな色だったり、いろいろな工夫がされています。
シロップ薬はとろみのある液状の薬剤で、糖類や甘味料を加えて甘みのある味に調整したものです。
シロップ薬を粉末状に加工した、ドライシロップというものもあります。服用するたびに水に溶かして使用するもので、粉末のまま服用もできます。シロップのように冷蔵で保管する必要がなく、持ち運びやすいのが利点でしょう。
細かい粉末状に製剤されたものが粉薬で、散剤とも呼ばれます。
赤ちゃんは体重によって薬の量の調整が必要になることがあります。飲み込みやすいという点以外に、量の調整がしやすいという利点もあります。
ただ粒子が細かい分、飛散しやすく、飲む時にむせてしまうことがあります。赤ちゃんに飲ませる場合は、水に溶くなど飲ませ方に工夫が必要です。
赤ちゃんに薬を飲ませる時は、スポイトを使用すると便利です。安全のため、スポイトは服薬用のものを使用しましょう。
服薬用のスポイトは先の部分がシリコン製であったり、丸い形になっていたりと口の中に入れても傷をつけにくい構造になっています。薬局やドラッグストアで手に入れることができます。
スポイトはもちろん、飲ませる人の手を清潔にしてから飲ませるようにしてください。
シロップ薬には複数の薬剤が混ざっていることがあります。そのまま服用してしまうと成分がかたよってしまう可能性があるので、服用前に振ってしっかり混ぜましょう。
シャカシャカ振って混ぜると泡立ってしまい計量しづらくなります。手首を返して上下を逆さにするように混ぜたり、ゆっくり円を描くように振ってください。
粉薬はスポイトで吸い上げやすいよう、少量の水で溶いておきます。
分包になっていない薬はしっかり計量しましょう。
シロップ薬のボトルや付属のカップには計量用の目盛りがついています。服薬用のスポイトにも目盛りがついているので、使いやすい方を使用しましょう。目盛りを目線の高さにして真横から見るようにすると正確に量りやすくなります。
計量した薬を清潔なスポイトに吸い上げます。混ぜてから吸い上げるまでに時間を置くと薬剤が分離・沈殿してしまうので、手早く吸い上げましょう。
特に水に溶けにくい粉薬の場合、吸い上げる直前にもう一度混ぜてください。
薬は舌の上に乗せてしまうと、味を嫌がって吐き出してしまう赤ちゃんもいます。薬が頬の内側を伝っていくように流すと良いでしょう。
薬の量が多いとむせてしまい、うまく飲めません。一気に飲ませるのではなく、数滴口に入れたら様子を見るようにしてゆっくり飲ませましょう。
服薬が必要な赤ちゃんは体調が悪く、機嫌が悪いことが多いでしょう。また、すでに薬嫌いになってしまっている赤ちゃんに薬を飲ませるのは苦労もあります。
薬をなかなか飲んでくれない赤ちゃんにスポイトで薬を飲ませるコツを紹介しますので、ぜひ試してみてください。
赤ちゃんは、お腹がいっぱいだとしっかり口を開けてくれなかったり、吐き戻ししやすかったりします。お腹がいっぱいの時よりも、授乳前の空腹時の方がスムーズに飲んでくれるでしょう。
また、普段すんなり薬を飲んでくれる赤ちゃんでも、機嫌が悪いとうまく飲んでくれないことはよくあります。なるべく機嫌の良い時を見計らうようにしましょう。
赤ちゃんが薬を飲むのを嫌がって吐き出してしまう時は、横抱きで飲ませることを試してみましょう。横抱きにすることで薬が自然にのどの方へ流れていき、赤ちゃんには吐き出しにくいためです。
ただし、横抱きで飲ませると気管に入り、むせてしまうこともあります。ごく少量ずつ、様子を見ながら飲ませるようにしてください。
赤ちゃんが薬を嫌がり、暴れることもあるので、手を優しく固定して邪魔されないようにするのもコツです。
飲ませる人が右利きの場合、左の脇に赤ちゃんの右手が入るように抱きかかえます。左腕で赤ちゃんの首を支え、手は赤ちゃんの左手をつかむようにします。左利きの場合は左右を逆にしておこないましょう。
この方法だと、片手で赤ちゃんの身体をしっかり固定できるので、薬を飲ませる利き手は自由に動かすことができます。
赤ちゃんは大人に比べて身体が小さく内臓の働きも未熟なため、薬からの影響を強く受けることがあります。薬の飲ませ方や扱い方には注意しなくてはいけません。
安全のため、心配なことは自己判断せず、医師や薬剤師に判断を仰ぐようにしましょう。
赤ちゃんに薬を飲ませる時にやってしまいがち、しても良いか悩みがちな注意点について解説します。
処方された薬を飲ませる際に、市販薬と一緒に飲ませないでください。
安易な飲み合わせは副作用の原因になる可能性もあり、大人であっても危険です。赤ちゃんは身体が未熟なため、大人以上に注意が必要です。
薬については、診察の際に必ず医師にきちんと伝えるようにしましょう。
赤ちゃんは大人のように朝・昼・夜で食事をとるわけではないので、薬を飲ませ忘れてしまうことがあります。
もし、飲み忘れてしまっても、次の時間に2回分飲ませるのはやめてください。1回の服薬量が多すぎると副作用が出る恐れがあります。
心配な場合は、薬を処方した医師や薬剤師に問い合わせましょう。
開封したシロップ薬は、常温で放置しておくと雑菌が繁殖しやすくなります。また、粉薬は水で溶いたあとに長時間置いておくと、苦味が出たり、薬が変質したりすることがあります。
用意した薬は置いたままにせず、すぐに飲ませるようにしましょう。粉薬は面倒でも飲ませるたびに、水に溶くようにしてください。
粉薬を溶かす時はお湯は使用せず、必ず水や湯冷ましに溶かすようにしましょう。薬は高温になると化学反応を起こし、性質が変わってしまうことがあるためです。
ちなみに、漢方薬の場合は、お湯で溶いて飲むこともあります。疑問があれば、医師や薬剤師に確認し、指示に従うようにしましょう。
シロップ薬は水分や糖分を含んでいるため、他の剤形に比べて雑菌が繁殖しやすく、使用期限が短めになっています。開封したシロップ薬は冷蔵庫で保管し、処方期間のうちに飲み切るようにしましょう。
粉薬はシロップ薬よりも保存しやすいですが、期限内に飲み切らなかった分は取っておかずに処分してください。
詳しい保管方法については、薬に添付されている説明書にも記載されています。
赤ちゃんがスポイトでうまく薬を飲んでくれない場合や、スポイトが手元にない時などは他の方法を試してみましょう。
まだ離乳食が始まっておらず、ミルクだけの赤ちゃんの場合は哺乳瓶用の乳首を活用しましょう。また、離乳食が始まっていてスプーンに慣れている赤ちゃんであれば、スプーンがおすすめです。
まずは薬を別に準備しておき、哺乳瓶の乳首の部分だけを赤ちゃんにくわえさせます。初めから入れておくと、赤ちゃんが嫌がった時などにこぼれてしまう心配があるので、吸い始めたら薬を入れて飲ませましょう。
こぼれるのが心配だからといって哺乳瓶の本体を使用すると、瓶の内側に付着して残った分飲める薬の量が減ってしまいます。
哺乳瓶の穴が小さいと薬がスムーズに出ないこともあるので、穴を大きくした服薬用の乳首を準備するのも良いでしょう。
離乳食に慣れ、スプーンに抵抗がない赤ちゃんにはスプーンで薬を飲ませることもできます。
赤ちゃんを縦抱きにし、頬の内側に沿って流すように少しずつ飲ませましょう。
舌で押し出されないように、スプーンは少し奥の方へ入れてください。直接のどの方へ流してしまうとむせるので注意が必要です。
薬を飲ませやすいよう工夫された服薬用のスプーンも販売されています。
嫌がる赤ちゃんに薬を飲ませるのは大変ですが、コツをつかんでしまえば、スポイトでの服薬はとても便利に感じるでしょう。
大切な赤ちゃんに早く元気になってもらうためにも、上手な飲ませ方を身につけてしっかり薬を飲んでもらえるようにしてください。
ちゃんと飲めた時には、たくさん褒めてあげることも大切です。