インフルエンザは毎年11月~3月に流行し、1日から3日の潜伏期間を経て発熱や頭痛、上気道炎症状などの症状が約1週間にわたって続く病気です。風邪よりも重症化しやすいとして、インフルエンザと風邪は明確に分けて扱われます。
赤ちゃんは免疫があるから病気にはかかりにくい、インフルエンザにもかかりにくいといわれてはいますが、月齢によって違いますし免疫力があってもインフルエンザにかかる可能性はあります。
風邪とインフルエンザはよく似た症状もあって見分けがつかないことがありますが、少しずつ具合が悪くなって部分的に症状がでる風邪と、急激に全身に症状が出て風邪よりも重い症状になりやすいインフルエンザという違いがあります。
もともとインフルエンザはインフルエンザウイルスが原因で、風邪とは原因がまったく違います。しかし症状がよく似ていることから、風邪だと思ったらインフルエンザだった、ということもあります。
赤ちゃんがインフルエンザにかかってしまった場合、免疫力の低い時期であれば合併症を発症しやすく、インフルエンザが治った後にも後遺症が残るリスクがあります。
生後6か月までの赤ちゃんは免疫が高い状態にありますが、生後6か月から1歳半までの間の免疫力はかなり低下しています。この時期にインフルエンザにかかったら、肺炎や気管支炎などの合併症が起こるリスクは、普通の子どもや大人がなる確率よりも高いでしょう。
ここではインフルエンザになってしまった赤ちゃんにどんな症状が現れるのか、代表的な症状4つを紹介します。
赤ちゃんは自分の口から、自分の体調が悪いことを伝えることはできません。そのため気づいた時には、かなり悪化している場合があります。
インフルエンザの予防と共に、ここで紹介するような症状を見つけたら早めに病院に連れて行き受診することが大切でしょう。
インフルエンザには1日から3日の潜伏期間がありますが、早めに現れる症状として赤ちゃんの母乳やミルク、離乳食の量が減ることがあります。
まだまだ発熱や下痢・嘔吐などの症状が現れていなくても、食欲が減るという症状は比較的早くから見られる可能性があるでしょう。ただ、インフルエンザでなく風邪といった病気の症状でも食欲は減ることがあるため、これだけでインフルエンザと特定することはできません。
インフルエンザの症状として急激な悪化と38度以上の発熱がありますが、これらの症状は赤ちゃんであってもよく見られます。
とくに赤ちゃんの場合は、高熱になりやすいので注意が必要でしょう。一般的なインフルエンザの発熱の範囲は38度から40度ですが、乳幼児期の赤ちゃんであれば41度まで発熱してしまうこともあります。
赤ちゃんはもともと体温が高いですが、インフルエンザの発熱ではさらに高熱になります。
インフルエンザの赤ちゃんは、1日に数回ふるえ(けいれん)が見られることがあります。
インフルエンザでのふるえの原因としては、「熱性けいれん」が考えられます。熱性けいれんはインフルエンザの合併症の中でも、早期から見られるものです。
もしもインフルエンザにより赤ちゃんにかなり高熱の症状が見られ、ふるえているのを見つけた場合、またはそれが長期間続く場合は、早めに病院を受診した方がよいでしょう。
赤ちゃんが1日中泣き止まない、起きている間ずっと機嫌悪そうにしているような症状が見られた時は、インフルエンザによって腹痛や筋肉痛、倦怠感などが起こっていて不機嫌になっている可能性があります。
小さな赤ちゃんはまだまだ、具合が悪いことを自分の口では伝えられません。しかし泣いたり不機嫌な様子を見せることで、赤ちゃんの体調が悪いことを知らせています。ずっと機嫌が悪いようなら、要注意でしょう。
免疫力がかなり低下してしまう赤ちゃんにとって、インフルエンザになった時の対応もそうですが、そもそもインフルエンザにならないよう気をつけてあげることが重要です。赤ちゃんのインフルエンザ予防対策について見ていきましょう。
インフルエンザには流行の時期があるため、その時期だけでもこれらの予防策を実施することをおすすめします。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染している人のせきやくしゃみからうつるので、不特定多数の人がいる人込みに行かないこと、不要不急の外出を避けることで予防できます。
人がたくさんいると、インフルエンザにかかっている人がいる確率が上がってしまいます。そういった場所に赤ちゃんを連れて行かないことや周りの大人も人込みにはいかないようにすることが、インフルエンザ予防になるでしょう。
少しでも免疫力を高めるには、規則正しい生活をする必要があります。
これは、赤ちゃんに限った話ではありません。とくにインフルエンザは家族の誰かがかかってしまうと他の人にもうつるリスクが高くなります。赤ちゃんのインフルエンザ予防のためにも、赤ちゃんだけでなく家族も規則正しい生活をして免疫力を高めた方がよいでしょう。
インフルエンザウイルスは手についてくることが多いので、外出から帰った時や食事前に手をしっかり洗って、手についたインフルエンザウイルスを落として清潔に保ちましょう。
手洗いと共にうがいをするのも効果的です。赤ちゃんの場合は、帰宅後に軽く濡らしたタオルやハンカチで手や顔を拭ってあげる、飲み物を飲ませるなどして予防しましょう。
インフルエンザウイルス予防のため、部屋の温度を20度以上、湿度を50%から60%に保つことが大切です。
インフルエンザウイルスは高温多湿に弱く、感染力が落ちるということが知られています。事実、インフルエンザのピークは寒くて乾燥している冬の時期であり、夏場にピークはありません。だからこそ部屋の温度を暖かくし、乾燥しない程度の湿度を維持することが感染予防になります。
とくに外出した後に手を触れる場所をこまめに掃除して、清潔に保つこともインフルエンザ予防として有効です。
インフルエンザを引き起こすインフルエンザウイルスは、基本的に外からついてきてしまうものです。それは服や手についており、外から帰ってきたそのままの手で触れた場所には感染のリスクがあります。手が触れるドアノブや取っ手などをこまめに掃除するとよいでしょう。
生後6ヶ月以降の赤ちゃんであれば予防接種できるため、インフルエンザの予防策として予防接種を受けることで感染のリスクやインフルエンザ重症化のリスクを下げられます。
生後6ヶ月までは免疫が高めですし、予防接種を受けられません。予防接種してもインフルエンザになることはありますが、重症化のリスクは低下します。インフルエンザのピーク前にかかりつけの医師に相談して、予防接種のスケジュールを決めるとよいでしょう。
どんなに予防をしていても、赤ちゃんがインフルエンザにかかってしまうことはあります。ここでは赤ちゃんがインフルエンザにかかってしまった時にどう看病すればよいのか、気をつけておきたいポイントを紹介します。
インフルエンザで高熱になると赤ちゃんは発汗で熱を下げようとするため、少量ずつこまめな水分補給を心がけて脱水症状にならないよう気をつけましょう。
もともと体温調節が苦手な赤ちゃんは汗っかきですが、高熱が出ているとその傾向が強まります。さらに嘔吐や下痢などがあると余計に水分が失われやすいため、こまめに母乳またはミルク、白湯などを飲ませて水分補給させましょう。
インフルエンザにかかってしまうと食欲がなくなってしまうことがよくあるため、食べられるものや飲めるものを与えるなど、食事は赤ちゃんに合わせることが大切です。
無理に食べさせても嘔吐してしまうことがあります。無理させる必要はありません。ただ赤ちゃんに食欲があるようなら、体力をつけるためにもしっかり母乳やミルクをあげたり、消化によい離乳食を食べさせたりするとよいでしょう。
インフルエンザの予防だけでなく、かかってしまった後も部屋の湿度を50%から60%に保つことは大切です。
適切な湿度を保つことで、インフルエンザウイルスの感染力を低下させます。家族への感染のリスクを下げると共に、赤ちゃんの体が乾燥しすぎてしまうことも防げるでしょう。
赤ちゃんがインフルエンザになって鼻水や咳で苦しんでいる時は、手動の鼻吸い器を使ったり、上半身を起こして寝られるようにしたり、うつ伏せの姿勢で寝させて呼吸を楽にしてあげましょう。
鼻水は基本的には出てきたものを優しく拭いとってあげてください。鼻の下にワセリンを塗って保湿するのもよいでしょう。咳をして呼吸が苦しそうなら、横にさせるのではなく上半身を起こしたり、うつ伏せにしたりすると多少楽になります。
赤ちゃんは大人よりも自力での体温調節が難しいため、服装の枚数で体温調節できるようにしてあげるとよいでしょう。
赤ちゃんが寒がっている時、熱がまだ上がりきっていない間はふだんよりも多く着せて暖かくしてあげます。赤ちゃんの熱が上がりきった後は1枚少なくして、汗で濡れた体を拭いたり、着替えさせたりしてあげるとよいでしょう。
赤ちゃんの熱が高く冷やす必要がでた時は、首やわきの下、そして足の付け根といった太い血管の近くを冷やすとよいでしょう。
熱がでるのは、ウイルスを撃退しようと戦っている証拠です。基本的に、発熱しているからといって解熱剤を飲ませて下げるといったことはあまりしません。しかし熱が上がりすぎた場合、冷やした方がよいと医師にいわれた場合は、太い血管の近くを冷やすと効果的です。
赤ちゃんがインフルエンザになった時はお風呂には入れず、熱が下がりきってから入れるようにしましょう。
赤ちゃんは発熱に伴って大量に発汗しますが、お風呂に入れると余計に体力を消耗してしまう可能性があります。優しく体を拭いてあげるだけにして、お風呂には入れないでください。お風呂に入れられるのは、熱が下がりきってからです。
インフルエンザにかかってしまった赤ちゃんは、熱が下がった後もしばらくは安静にして様子を見てから、普段通りの生活に戻すようにしましょう。
インフルエンザで高熱が出ている時はもちろん、熱が下がった後もすぐに元の生活に戻るのではなく、しばらくは安静にして様子を見ることが大切です。赤ちゃんの元気が元のように戻っているかどうか、数日は様子を見てみましょう。
通常、インフルエンザの症状がでた場合でも12時間程度、様子を見てから病院に連れていきます。赤ちゃんがインフルエンザなのか、検査して結果がでるようになるまでには発症から12時間かかるためです。しかし、すぐに病院に行った方がよいケースもあります。
意識がないか呼んでも反応がない、高熱で下痢や嘔吐を繰り返している、ぐったりしていて苦しそう、けいれんしている、これらの症状がある場合はすぐ病院に行きましょう。
赤ちゃんに入院が必要となるケースは、主にインフルエンザの合併症の症状が現れた場合です。例えば、「肺炎」や「インフルエンザ脳症」などです。
基本的にはインフルエンザでも赤ちゃんは病院で診察を受けた後、自宅で安静にしていれば十分です。しかしすぐに病院に連れて行った方がよい症状がでた場合、合併症が見られる場合は入院が必要になることがあります。
赤ちゃんでも、インフルエンザに感染してしまうことがあります。しかしインフルエンザはインフルエンザウイルスを家に持ち込むことで感染するケースがほとんどなため、しっかり予防することや重症化しない対策をしておけば、それほど心配はありません。
インフルエンザから赤ちゃんを守るために、効果的な予防法や対処法を知って実践しましょう。