新生児とは、生まれた日を生後0日として数えた場合に、生後28日未満の赤ちゃんのことを指します。これらの定義は、母子健康法によって定められています。
それ以降は乳児と呼ばれ、満1歳からは幼児と呼ばれるようになります。
新生児期は子宮での水中生活から新しい環境に自分を適応させていこうとする大切な時期です。
ここからは新生児期の発達について解説していきます。今回は、身長や体重、反射など4項目をピックアップしていきます。新生児期の発達についてご興味がある方は、参考にしてください。
新生児の出生身長は平均で約50cm、体重は約3kgです。
個人差がありますが出生時の身長の目安は、出生時の男子は49cm、女子は48.5cmで、体重は生後4週間で平均1kg~2kg増加するのが一般的です。
この期間に特徴的なのが、生後3日~5日位までに起きる「生理的体重減少」と呼ばれる自然現象です。生後3日~5日位までの新生児は母乳やミルクを飲む量よりも、汗をかく量の方が多いために一時的に3%~10%ほど体重が減少します。
その後生まれた際の体重に戻り、1日に約35g~45g程度増えていきます。この現象は多くの新生児に起きるものですので、安心してください。
生まれて間もない赤ちゃんの視力は未熟で、0.02~0.05程度と言われています。 誕生時は目的なく不随意に眼球を動かし、生後2週間では光るものを50cmほど近づけると両目で見ようとします。
視界に変化があるとそちらの方に視線を留めようとすることもあり、動いているものや人を目と頭の動きで追っているのです。
聴力は妊娠7か月の胎児の頃から発達しており、新生児期には突然の音にビクッとしたり瞼をぎゅっと閉じたりと反応が見られます。
臭覚は生まれた段階ですでににおいを嗅ぎ分けられるほどに発達しており、生後6日には自分の母親の匂いと他の母親の匂いを区別していると言われています。新生児は自分の母親のにおいを好むようです。
新生児期には、原始反射というものが見られます。反射とは無意識に特定の筋肉などが動く現象で、知覚や姿勢などに与えられた刺激が大脳の統制を受けずに脊髄や脳幹に伝わって起こると言われています。随意運動が発達すると次第に原始反射は消えていきます。
手のひらにものが触れるとぎゅっと握り締める把握反射や、口に乳首や指などやわらかいものが触れると唇と舌でとらえる捕捉反射、足の裏の外側を尖ったもので踵からつま先に向けて刺激すると足の親指が外側に曲がり他の指は扇のように広がるバビンスキー反射などがあります。
赤ちゃんの体温はだいたい37.0℃前後です。38度以上は明らかに病気と考えてよいですが、37.5~37.9度までの体温は病気の時もあれば、そうでない時もあります。
赤ちゃんは体温を調節する働きが未熟です。病気でなくても、厚着をさせすぎたり、部屋を暖かくしすぎて水分不足になり熱を出してしまうので、汗を拭きとった状態で体温測定をし、平熱を知ることが必要です。
不機嫌、元気がない 、吐く、ミルクの飲みが悪い等の際にはこまめに体温を測るようにしていきましょう。
ここからは実際に赤ちゃんがどのように過ごしているのか0~12カ月の月齢に分けて、発育・発達の様子をお伝えしていきます。
発育時期はあくまで目安であり、個人差があります。
生まれてすぐは、外界に適応するために各機能を調整する時期です。呼吸・体温など生命維持が主体になります。1日のほとんどをウトウト寝(レム睡眠)で過ごしています。
気持ちは声を出して泣いて伝えます。母親と視線を合わせることで安心する時期ですので、スキンシップをたくさんとっていきましょう。
2カ月目は、一生のうちでもっとも成長する時期と言われています。「快・不快」の感情や信頼感の芽生えによって、様々なサインを出すようになります。
泣き声以外の「アー」や「クー」といった声を意識的に段々と出すようになり、反応に対して自分の意思で笑い、相手の笑顔に微笑み返すようにもなっていきます。
3カ月になると段々と首がすわり始めます。又、腹ばいにすると、頭を持ち上げるようにもなっていきます。見たものに手を伸ばす、持った玩具を口に運ぶなど目と手の運動が協調してきます。
体重については出生時の約2倍に達して、乳児独特の丸みを帯びていきますが、1日の体重増加量をみると20gに達しないこともあり、次第に緩やかになる時期です。
4カ月頃になると、昼と夜の区別がついて4~5時間はまとめて眠れるようになります。頭をしっかりと支えられるようにもなり、段々と寝返りをうつことができるようになっていきます。
人に対しての関心も高まり、嬉しい、悲しいという感情を声に出すようになっていきます。呼びかけに対して笑って答えるなど注意をひくようになります。
5カ月になると首だけでなく段々と上半身がしっかりしてきます。支えることでおすわりの姿勢がとれるようになる子もいます。しかし、1人で座れるようになるにはまだ時間がかかりますのでしっかりと見守るようにしましょう。
食事に関しては離乳食を始める時期です。なめらかにすりつぶした状態、ヨーグルトくらいのやわらかさを目安に、最初は味をつけず、材料の味だけで行っていきましょう。1日1回、1さじから初め、飲み込めたら翌日は2さじに増やす等ゆっくりと進めていくとよいです。
6カ月になると、首のすわった赤ちゃんは1人でお座りを始めます。ものをしっかりと掴めるようになったり、両方向に寝返りをしたりと運動面も発達していきます。言語面では、母音と子音で片言しゃべりをしたり、口の形を変えることで色々な音が出せると分かっていきます。
離乳食については、すでに開始していて、唇を閉じ上手に飲み込めるようであれば2回食にしてみてよい時期です。
7カ月になると、恐れの感情が芽生え始めて他者への反応も強くなり、人見知りが始まります。また、短期の記憶ができるようになり、夜泣きが増えていきます。夜泣きは発達の節目です。大変ですが見守るようにしていきましょう。
運動面では、座る・寝転がる・這う等の床遊びが楽しい時期です。体重移動しながら平衡感覚も養っています。
離乳食については、ツブツブが混じったドロドロ状のものを上手に飲み込めるのか、モグモグさせるようなしぐさがあるかを確認していきましょう。出来るようであれば、お豆腐の硬さを目安にして調理形態を上げてよい頃です。
8カ月から9カ月にかけて、おすわりはほぼ完成します。おすわりの完成と前後して、はいはいも始まっていきます。
言葉を発するにはもう少し時間が必要ですが、大人の顔色や状況を察する力が段々と養われます。意思もはっきりしてきて、甘えて泣いたり、抱いてほしいと手を伸ばしてきたりします。
離乳食は、目で見ることや手で掴むこと等、手の機能が発達している時期なので、ものを手で摘まんだり、こねて遊んだりするようになります。手で触れる経験も成長する上で欠かせません。
9カ月になると、はいはいが盛んになり、よつんばいや肘で前に進むひじばい、お尻を高く持ち上げて進む高ばいなど、様々な動作ができるようになります。つかまり立ちができるようになる赤ちゃんも多くなります。
離乳食は、食べる量が安定しているのであれば、3回食に進んでもよい頃です。上下のあごを動かしてすりつぶして飲み込めているようでしたら、硬さの目安をバナナ程度に、調理形態を上げましょう。
10カ月になると、探す、見つける等の探究心が旺盛になり、体を動かして探索したい時期に入っていきます。また、しぐさや言葉を理解するようになり、繰り返しの刺激で大人の真似をするようになるのです。
ものとものをぶつけて遊んだり、高い高いの遊びを気に入ります。段々と泣かずに欲しいものを示すことができるようにもなっていきます。
11カ月になると、つたい歩きやたっちを始めます。ハイハイは更に上手になり、目的地まであっという間に向かい、階段や椅子などの高いところにもよじのぼれるようになります。
早い子であれば、一人で立つようにもなっていきます。個人差がありますので、焦らず見守っていきましょう。
離乳食は3回食が順調でしたら、栄養の大半を離乳食からとるようにしましょう。おっぱいやミルクは補助的な役割になっていき、回数が減っていきます。
12カ月目になると、言葉や歩行の獲得により、生活範囲が拡大する時期です。個人差はありますが、殆どの子が1歳半くらいまでにひとり歩きができるようになります。
気持ちの面では「不安」「恐怖」の感情が芽生え始め、大人を後追いをするようになります。運動機能も高まり、コップやスプーンを自分で持ちたがったり、リズムに合わせて身体を動かしたりするようになっていきます。
食事については、離乳食によって栄養がほぼ摂れるようになって食品の幅も広がるため、離乳完了期を迎えます。スプーンやフォークを用いて食べこぼしなく食べられるのは2歳頃からです。
手づかみ食べや遊び食べ、偏食なども見られますが、成長において大切なことです。大人と食事を楽しみながら焦らず見守っていくようにしましょう。
赤ちゃんと日々過ごす中で大切になってくるのが、愛着の形成と積極的な言葉かけです。これらが一体どうして大切なのでしょうか。
赤ちゃんは気持ちを言葉で表現することができませんが、目で見て、耳で聞いて、多くのことを吸収しています。それらのことが、その後の生活で、コミュニケーション力の構築や相手の表情を見分ける能力にも繋がっていくのです。
では、具体的にどのようなことに気を付けていけばよいのか紹介していきます。
イギリス出身の精神科医であるボウルビィが「愛着とは、子どもが特定の他者に対して持つ情愛的な絆のこと」と説くように乳幼児期の心の発達には、愛着の形成が大前提です。
愛着の形成は、子どもの他者に対する基本的信頼感を育み、その後の心の発達や人間関係に大きく影響します。
目と目で向き合うこと、手と手で触れあうこと、子どもに微笑むことの3つをまずは大切に過ごしてみてください。愛着の形成は、心の発達の基盤です。愛されて守られていることを伝え、安心させてあげましょう。
積極的に言葉かけをすることによって、赤ちゃんの脳の中ではその言葉が刺激となり、神経細胞の繋がりがどんどん発達します。これが言語の習得、そして話すことの基礎となるのです。
言葉かけは赤ちゃんとのコミュニケーション方法であり、信頼や愛着を築く大切な手段でもあります。たくさんの言葉かけを心掛けていきましょう。
赤ちゃんに話しかける上では「マザリーズ」と呼ばれる言葉かけのポイントが4つあります。
それは、話す声のトーンを高くする、抑揚をつけてゆっくりと話す、同じ言葉(短く簡単な言葉)を繰り返す、相手の反応を待つように間をとるということです。是非参考にして関わってみてください。
今回は、赤ちゃんの発育・発達を月齢ごとに紹介しました。発育・発達には個人差があります。必ずしも目安どおりの成長を示すとは限りませんし、ひとりひとりペースがあります。子どものペースやタイミングを見守って、サポートしていきましょう。
その瞬間しか見ることのできない赤ちゃんの成長を楽しみながら過ごしてください。