人の睡眠には、2つの種類があります。「レム睡眠」は体が眠りについているものの脳は活発に動いている状態の眠りのことで、もう1つの眠り、「ノンレム睡眠」は体だけでなく脳も休息のために眠っている状態です。
脳が活動状態のレム睡眠のときは、些細なことでも起きやすい状態なのに対して、脳まで眠っているノンレム睡眠のときは、なかなか起きにくいことから「眠りが浅い」「眠りが深い」といった言い方をすることもあります。
人が眠っているときは、このレム睡眠とノンレム睡眠を90分の周期で繰り返しています。90分間隔で起きるようにすると寝起きがよいと言われるのは、この睡眠周期の影響と言われています。
しかし新生児期の赤ちゃんの睡眠は大人の睡眠とは異なり、1回の睡眠時間自体はかなり短く、レム睡眠の時間が大人よりも2倍ほど長いわりに、周期は50分で約半分という特徴があります。
新生児期の赤ちゃんの睡眠時間はおよそ16時間から20時間と、1日のうちの大半を寝て過ごすことが普通となっています。
大人の睡眠時間は年齢によっても多少変化しますが、6時間から7時間というのが目安です。単純に比較しても、新生児期の赤ちゃんの睡眠時間は大人の2倍~3倍となります。1日中、いつまで寝ていてもおかしくはありません。新生児期の赤ちゃんの1日は、ほとんど睡眠時間なのです。
新生児期のレム睡眠は大人の2倍ほどあり、この長いレム睡眠は神経や脳の発達を促すものだと言われています。
レム睡眠中の新生児は眼球運動が盛んで、まぶたがピクピクしていることがあります。しかし、このときの新生児は起きておらず眠っています。
そもそもレム睡眠のREMとは、「急速眼球運動(Rapid Eye Movement)」を意味する言葉なのです。
赤ちゃんのレム睡眠は新生児期では大人の2倍ほどもあり、睡眠時間のおよそ半分程度はレム睡眠となっていますが、睡眠のサイクルは短く約半分です。
新生児期の赤ちゃんの睡眠では、約50分という短いサイクルでレム睡眠とノンレム睡眠の周期が訪れています。大人は90分間隔で起きやすい周期となっていますが、赤ちゃんの場合は50分周期で、その上、眠りの浅いレム睡眠時間が長いという特徴があります。
赤ちゃんの夜泣きに悩まされるお母さんは少なくありませんが、この夜泣きは脳が活発で眠りの浅いレム睡眠中に起こります。
眠りの浅いレム睡眠時間が大人の2倍ほどもあるため、お腹がすいたとか暑いとか、不快なことを感じたら赤ちゃんはすぐに目が覚めて夜泣きをしてしまうのです。大人は8割がノンレム睡眠なので多少不快でもそのまま寝続けられるのですが、レム睡眠が多めの赤ちゃんはそうはいきません。
赤ちゃんの睡眠については月齢によって、わりとはっきりした違いがでてくるため、それぞれの月例について詳しく紹介します。
ここで紹介するのは、月齢12ヶ月までの赤ちゃんの睡眠についてです。この時期の赤ちゃんは睡眠時間がとても長く、レム睡眠は大人よりも長いのに、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルは短いという、大人とはまったく違う睡眠をしています。
赤ちゃんの月例0~1ヶ月はいわゆる新生児期であり、1日のうちのほとんどを寝て過ごしている赤ちゃんも珍しくないほど、1日の睡眠時間が長いわりに、長くても3時間程度で起きるという睡眠サイクルを繰り返しています。
たとえ夜であっても、まとまって長時間寝るということはありません。夜でも昼でも関係なく、赤ちゃんは睡眠と起床のサイクルを繰り返しています。
生後1ヶ月、新生児期の赤ちゃんはそもそも昼と夜との区別などついていないので、昼も夜も関係なく眠ったり起きたりして、15時間から20時間の不定形な睡眠を繰り返しています。
新生児期の赤ちゃんは1日のほとんどを眠って過ごしますが、短い時間で目を覚ましてしまいます。夜でも昼でも睡眠時間に差はなく、1回の睡眠は長くても約3時間です。1時間や2時間程度で目を覚ましてしまうことも少なくはありません。
1~2ヶ月の赤ちゃんは新生児期より、1日の睡眠時間が減る傾向にありますが、それでも14時間から17時間と1日の多くの時間を眠って過ごしています。
昼と夜の区別もまだついてはいませんが、体が少し大きくなっているので、1度に眠る時間が3時間前後と新生児期よりは長くなっています。ただ深い眠りではないため、眠っていても何かあればすぐに目を覚ましてしまうでしょう。
生後2ヶ月になってくると昼と夜の違いを感じられる赤ちゃんも出てきて、少しずつ目覚めと睡眠の体内リズムが作られ、1日のうちで目覚めと睡眠の時間帯が分かれるようになっていきます。
授乳量が増えて長く眠ることが可能になったことや、夜ならば周りも暗く静かで、浅い眠りの多い赤ちゃんでも起きずに眠っていられる時間が増えることなどが理由でしょう。この時期に入ると、昼よりも夜の方が長く眠るようになる傾向があります。
生後2~3カ月の赤ちゃんは1日の睡眠時間が14時間から15時間と、少しずつ夜に長く眠るようになり、昼間に起きていられる時間が増えていきます。
生後3ヶ月くらいからは昼と夜の区別をつけられる赤ちゃんが増えてきて、夜は比較的まとまった睡眠をとる赤ちゃんも出てきます。しかし生後3ヶ月くらいになると、日によっては赤ちゃんが夜中に泣く、夜泣きが始まります。
生後3ヶ月になると昼と夜の区別がつきやすくなることから、夜の睡眠時間がだんだん長くなっていくとともに、昼間も8時間くらい起きていられるようになっています。
このころまでは、昼も夜もお構いなしに寝たり泣いたりを繰り返す赤ちゃんですが、生後3ヶ月になると、だんだん大人の生活リズムに近づいていると言えるでしょう。
赤ちゃんでも、生後4~5ヶ月くらいになってくると夜に眠る習慣がついてきて、1日の睡眠時間は13時間から14時間と減り、1回にまとまって寝ることも可能になっていきます。
生後4~5ヶ月は昼に起きて夜に寝るという赤ちゃんの生活リズムができてくるころです。赤ちゃんの健康のためにも、昼間は明るい場所で遊ばせ、夜には部屋を暗くしたり静かにするようにして、生活リズムを整える手助けをしていきましょう。
生後4~5ヶ月の赤ちゃんは主な睡眠を夜にとるようになっており、夜はまとめて6時間から8時間眠り、昼間は10時間程度起きていられるようになっています。
赤ちゃんが長く眠るのは主に夜なのですが、まだまだ朝や昼にもお昼寝をするので1日の睡眠時間自体は長めです。ただ昼と夜の区別がわりと明確についてきているため、夜中に起こされる頻度は少なくなってくるでしょう。
生後10~12ヶ月頃の赤ちゃんの1日の睡眠時間は12時間から14時間ですが、そのうちのほとんどを夜の睡眠でとるようになり、昼間に起きている時間はさらに増えていきます。
生後10~12ヶ月になると、赤ちゃんは昼間は起きていて夜に眠る、という大人と同じような生活リズムが身についています。昼寝を1日2回くらいすることはありますが、長くは眠りません。
生後10~12ヶ月はだんだんと昼間に起きていられる時間や、夜の睡眠時間が増えるため体内リズム、睡眠のリズムが定着していく大切な時期です。
この時期の赤ちゃんにとって大切なことは、睡眠や生活のリズムを整えてあげることです。大人が起きていれば赤ちゃんも起きていることがあるため、なるべく早めに寝て適切な睡眠のリズムを定着させるようにしましょう。
ここからは、赤ちゃんの睡眠の質を良くするための「ねんトレ」方法について紹介します。ねんトレとは、「ねんねトレーニング」の略です。
ねんトレは、昼間は起きている時間で夜は眠る時間だということを赤ちゃんに教えるための、睡眠や生活リズムを整えるために行うトレーニングです。ねんトレができているかどうかで赤ちゃんの寝かしつけがグンと楽になると言われています。ぜひ、試してみましょう。
ゆるゆるねんトレは赤ちゃんが泣いても抱っこしたり授乳してあげたりはせず、優しくトントンして寝かしつけるトレーニングです。早いうちから実施でき、あまり泣かせなくてすむ反面、親の負担は大きいでしょう。
ゆるゆるねんトレで大切なことは、寝るときはきちんとベッドに寝かせた上で、赤ちゃんが泣いたとしても大泣きでない限り抱き上げたりしないことです。抱っこや授乳で寝かしつけるのでは、ゆるゆるねんトレにはなりません。
スピードねんトレは初日にパパに協力してもらうねんトレで、どんなに赤ちゃんが泣いてもママは顔を出さず、パパに赤ちゃんのベッドで寝かしつけてもらうねんトレです。
スピードねんトレ初日は赤ちゃんが大泣きする可能性が高いですが、パパに協力してもらい、赤ちゃんが自分のベッドで眠りにつくのを見守りましょう。大切なことは抱っこで寝かしつけないことで、ゆるゆるねんトレよりトレーニング期間は短めです。
今回の記事では赤ちゃんの睡眠時間やレム睡眠について解説してきました。赤ちゃんがちょっとしたことですぐ起きると言いますが、実は本当のことで赤ちゃん特有の睡眠サイクルが原因なのです。
そして赤ちゃんは成長するために、大人よりもレム睡眠が長いという特徴を持っています。この記事を参考にしながら、赤ちゃんの睡眠についてのしくみを理解していきましょう。