現代では結婚式にゲストに贈られるようになった「引き出物」の由来は、平安時代にあると言われています。宴を開いて成功を喜んだ主が、客に馬を引き出して与えたのが始まりとされます。
昔は、結婚式に限らず大きな宴が催されることがよくありました。歴史の主役が平安の貴族から武士に時代が変わった後も、宴の後で贈り物をする習慣は続き、江戸時代を経て現代まで形を変えながら残っています。
引き出物の基本的な構成は、引き出物のメインと引き菓子、そしてしきたり品(縁起物)の3つです。
縁起物であるしきたり品は、現代ではあまり縁起を気にしない人が増えたことから、入れても入れなくて良いともされています。ただ、地域によっては必要とされる場合もあります。
引き出物はおめでたい結婚式で贈られるため、割り切れる数である偶数の数にしないのが基本です。メインと引菓子、縁起物の数を合わせて奇数にしましょう。引き菓子や縁起物を使って調整してください。
引き出物の相場は、ある程度決まっています。引き出物のメインに多くの費用をかけ、引き菓子や縁起物はそれぞれ1,000円前後、全部合わせてご祝儀の10%程度を目安にしましょう。
引き出物に悩んだ時は、相手のご祝儀がいくら位かを考えて決めるようにしてください。しかしながら、最初からいくらご祝儀をいただくかはわからないでしょう。
そのため、相手との関係性や血縁などからどの程度のご祝儀になるかをあらかじめ予想して、引き出物の金額を決めます。
引き出物額は相手のゲストからいただくご祝儀額の10%程度が一般的な相場と言われています。そのため、一律同じ額の引き出物を揃えるのではなく、相手によって中身を変えると良いでしょう。
ここでは、ゲストとの関係性で変わるご祝儀額の目安について紹介します。
引き出物はご祝儀の10%程度の相場になるよう調整すれば、失礼にはならないでしょう。ただ、相手との関係によっては相場よりも高く設定することもあります。
上司への引き出物は、5,000円~10,000円程度が相場となっています。
上司からいただけるご祝儀額は通常、友人や同僚たちよりも高い傾向にあります。また、日頃から上司にはお世話になっていることが多いため、引き出物の相場よりも高めに設定すると良いでしょう。
上司と一口に言っても、課長や部長、社長といった相手の役職によって引き出物を変える場合もあります。
友人や同僚のように、親しい間柄な人への引き出物の相場は3,000円~5,000円程度です。
これは友人、同僚のご祝儀額の相場が、30,000円が目安であることが根拠になっています。仲の良い友人や、特別にお世話になった同僚であるなら、相場より少し高めに設定することもあるでしょう。
友人・同僚への引き出物は他と中身が違ったり、品数が変わったりしがちです。一目見て見劣りするようなら、引き菓子や縁起物といったしきたり品で調整してみましょう。
結婚式に夫婦や家族で出席したゲストとは、親しい間柄かどんな関係にあるかで多少変わってきます。引き出物の相場も、5,000円~12,000円程度と幅広くなっているのが特徴です。
友人夫婦や家族での出席の場合、ご祝儀は50,000円程度であるため、引き出物の相場は5,000円程度になるでしょう。
親族夫婦や家族ならご祝儀の目安は70,000円~100,000円です。親族であることを加味するなら、引き出物の相場は10%よりも少し高めに設定しましょう。
親族への引き出物の相場は、5,000円程度が目安です。これは、親族からのご祝儀額の目安が50,000円であるためです。
ただし、親族の引き出物も上司への引き出物と同じく、相手との関係性やお世話になったかどうかなどで引き出物の相場を変えて良いでしょう。
親族の場合は、両親との関係にも影響します。新郎新婦だけでなく、両親にも相談して決めることをおすすめします。
結婚式の引き出物の品数は減っており、現在では2~3個が主流でしょう。
現在では、派手な結婚式を挙げる人が減ったことから、引き出物も控えめに用意するケースが増えています。昔のように、大量の引き出物を用意するということはあまりないでしょう。ただし、地域によっては多くの引き出物が必要な場合もあります。
めでたい結婚式であるため、基本的には奇数の引き出物を用意しますが、新郎新婦や親族が気にしない場合は、偶数の2個や4個でも問題ない場合があります。
結婚式の引き出物の手配は、結婚式場の提携業者を使う方法や結婚式場とは関係ない外部業者から買う方法、ネットで注文する方法などがあります。
結婚式場の提携業者ならばノウハウがわかっている場合が多く、結婚式場側もスムーズに用意してくれるでしょう。外部業者では、割引価格で購入できることがあります。
最近では、引き出物を配送するケースも増えています。とくに遠方の方や高齢の方がゲストに多い場合は、配送可能な引き出物も検討してみましょう。
結婚式の引き出物の構成や費用相場について解説してきましたが、ゲストに不快な思いをさせないために、注意したいマナーが他にもいくつかあります。
ここでは引き出物を用意する際の注意点について解説します。
なお、地域によって独自のマナーが存在する場合もあるため、困った場合は結婚式場のプランナーさんに相談してください。
プチギフトは基本的に引き出物の数にカウントせず、引き出物とは別に用意しましょう。
プチギフトとは、ゲストを見送る際に新郎新婦が配るお菓子やジュースなどのことです。
かつては、見送りの際に引き出物を渡すようになっていました。現在は、式場に着くとすでに席にセットされているのを見かけます。
引き出物にかける「のし」は、水引の結び方を「結び切り」にするのがマナーです。
水引には他に「蝶結び」もありますが、蝶結びは簡単にほどけてしまうイメージがあります。その点、結び切りならばほどけにくいという意味で、縁起が良い結び方であるとされています。
水引の色は基本的に紅白が多いですが、金銀も選べます。どちらの場合でも紅白の紅、金銀の金といった色の濃い方が右側にくるように配置しましょう。
重たいものやかさばるものなどは引き出物にしても持ち帰りが大変になるため、持ち帰りが楽になるように考えて選ぶようにしましょう。結婚式にいらっしゃるゲストは皆ドレスアップされている、ということを念頭に引き出物を選んでください。
最近では遠方のゲストや高齢のゲストのために、引き出物の配送を選ぶ新郎新婦も増えています。どうしても重いもの、かさばるものが引き出物になる場合には、配送も検討してみましょう。
引き出物は出席してくださったゲストへ感謝の気持ちで贈るものであるため、メインの記念品であったとしても、贈られて困るようなものは選ばないようにしてください。
例えば、せっかくの結婚式だからと新郎新婦の名前入り・写真入りのものを引き出物にすると、もらった人は使いづらいでしょう。新郎新婦の個性溢れる品や、趣味に走りすぎた品も控えた方が良いでしょう。
引き出物は使う人を選ばず、多くの人が喜んでくれる万人受けするものを検討してください。
引き出物をゲストごとに変える場合は、3パターン程用意します。
例えば、友だちや同僚・上司や親族・夫婦で出席している方向け、あるいはいつもお世話になっている方向け、といったように分類します。
4パターン以上に分ける場合もありますが、引き出物のパターンを増やすとお渡しするのが大変になるため、式場のプランナーと相談しながら決めてみましょう。
引き出物を入れた紙袋は中がわからないように同じ大きさで、一見して同じように見えるものを用意するよう注意しましょう。
引き出物の大きさや数の多さが目に見えてわかると、ゲストの方同士で気まずい思いをさせてしまう可能性があります。
引き出物を相手のご祝儀や関係性に合わせて変えるとしても、中身が違うことが一見してわからないように、同一の袋、大きさで用意するのがマナーでしょう。
結婚式に呼ぶゲストが決まったら、ゲストに合わせて引き出物を選ぶことになります。ここでは、結婚式の引き出物としておすすめの品物を紹介します。
引き出物選びで失敗しないコツは、持ち運びが大変ではなく使う人を選ばない、自分がもらって嬉しいと思うものを選ぶことです。
引き出物選びに困った時におすすめなのが、ゲストに選んでもらうカタログギフトです。カタログはそれほど重くはなくかさばらないため、持ち帰りしやすいという特徴があります。
引き出物として品物を贈るのではなく、カタログから好きなものを選んでもらうため、相手の好みがわからなくても問題ないでしょう。ゲストの年齢層が幅広いような場合でも、カタログには様々な商品の中で対応できます。
引き出物として実用性を重視したものを贈りたいという場合には、キッチン用品がおすすめです。とくに女性や、家族で出席したゲストに喜ばれる傾向にあります。キッチン用品としてタンブラーやカップ、鍋などを選ぶと良いでしょう。
ただ、新郎新婦の名前入りのような特別感を出してしまうと、記念品としては良いかもしれませんが、使う人を選ぶ上に実用性の低い引き出物となってしまいます。
引き出物に欠かせない縁起物も、最近はオシャレなものが増えています。例えば、縁起物をかたどった最中入りのお茶漬けや、紅白でハートの形をしたうどんなどがあります。
引き出物のマナーとして縁起物を入れたいけれど、さすがに昔ながらのものではちょっと、という方にはこういったオシャレな縁起物を検討してください。
日常的に使用するタオルなどの生活用品をもらって困る人は少ないため、贈って喜ばれる引き出物の1つでしょう。
生活用品を贈るなら、少し高めの生活用品を選ぶことが、喜ばれるコツです。品質の高いものを選んだり、ブランド品を選んだりすると、引き出物としての特別感がプラスされます。
食器やカトラリー類は昔から引き出物として選ばれ、現在でもおすすめの引き出物となっています。
しかし、食器やカトラリーには個人の好みがあるため、実用性を重視したものを選んだり、少し高めの食器やカトラリーを選択すると喜ばれやすいでしょう。
注意点として、食器やカトラリー類はそれなりに重さがあります。他の引き出物と合わせて重すぎないよう、かさばらないようにする、配送を利用するなどの工夫が必要です。
結婚式で引き出物と一緒にお渡しする引き菓子は、ゲストの家族へのお土産の品として選びましょう。ここでは、引き菓子としておすすめのお菓子を4つほど紹介します。
引き菓子の相場は1,000円~2,000円程度と、メインと比べれば安価であるため、いくつか組み合わせて入れてみてはいかがでしょうか。
金平糖(ボンボニエール)はおめでたい、縁起が良いとされるお菓子の1つで、引き菓子としておすすめです。
日本の皇室が催される結婚式や式典でも、金平糖が配られることは知られていますが、金平糖自体が小粒で食べやすくなっており、年配の方にも喜んでもらえるでしょう。
焼き菓子はセットとして引き菓子に選ぶと、家族のいるゲストに喜ばれることでしょう。パウンドケーキやフィナンシェ、マドレーヌなどがよく選ばれます。
焼き菓子は小分けになっているものも多く、家族で分け合いやすいです。焼き菓子ということで、賞味期限がある程度長めであることもおすすめポイントの1つです。
洋の引き菓子として贈りやすいのが、バームクーヘンです。
バームクーヘンは日本では、その見た目が年輪を重ねた木の幹のように見えることから、夫婦が年月を重ねていく様を思い起こさせるとされ、縁起の良いお菓子となっています。ただ、個包装は縁起が悪いとされる場合もありますので注意してください。
賞味期限がある程度長めで、食べやすいクッキーも結婚式の引き菓子の定番の1つとなっています。
クッキーは詰め合わせになっているため、家族へのお土産としても贈りやすいでしょう。縁起物を意識して、縁起の良いものをかたどったクッキーがあります。
引き出物は、結婚式にきてくださったゲストへ感謝の気持ちを伝えるためにお渡しするものだということが前提になっています。
現代では引き出物の数も融通がきくようになり、引き出物として選べるものも増えています。場合によっては、引き出物を配送してもらうことも可能です。プランナーや家族と相談し、地域のしきたりに合った引き出物を検討しましょう。
新郎新婦からの感謝の気持ちが伝わるような引き出物を贈ることが、引き出物を選ぶ上での重要なポイントになります。