特別養子縁組にかかる平均費用とは?成立させる要件も詳しく紹介

特別養子縁組とは?

特別養子縁組という制度をご存知でしょうか。「養子縁組」は聞いたことがあるけれど、「特別養子縁組」についてはよくわからないという方も多いでしょう。


養子制度には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があり、多くの人に知られている「養子縁組」は、普通養子縁組制度のことです。


ここでは、普通養子縁組と特別養子縁組の違いを解説します。さらに養子と里子の違いについても理解しましょう。

  • 普通養子縁組との違い
  • 里子と養子の違い

普通養子縁組との違い

古くからある養子縁組の制度は、現在では「普通養子縁組」と呼ばれています。普通養子縁組の主目的は「家の存続」で、家を継ぐ子どもがなく家系が絶えてしまうことを防ぐために、法律上の親子関係を結びます。戸籍にも「養子」である旨が記録されます。


特別養子縁組の主目的は「子どもの福祉を守る」ことです。生みの親との法的な親子関係を解消し戸籍上も養親の実子として記録されるので、特別養子縁組の方が縁組条件は厳しくなります。


出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)第二節 養子|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

里子と養子の違い

養子縁組制度とは別に、里親制度もあります。養子縁組では普通養子でも特別養子でも法律上の親子関係が築かれます。


里親制度では、法律上の親子関係は築かれず、18歳で生みの親のもとに戻るか、自立しなければなりません。また、里親に対しては国から里親手当や養育費が補助されます。


里親と里子には親子関係がないので、親権は生みの親が持つことになります。

特別養子縁組を成立させる要件4つ

特別養子縁組は子どもの福祉を主目的とした制度であるため、養子縁組先が子どもにとってふさわしい家族なのか、子どもがなじんでいけるのかなどに配慮し、実現条件が厳しく設定されています。


ここでは、特別養子縁組を結ぶだめに必要となる4つの条件について解説します。特別養子縁組の趣旨を理解したうえで、各条件が設定されていることの意味を考えてみましょう。


出典:民法(明治二十九年法律第八十九号) 第五款 特別養子|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

  • 養親の年齢制限
  • 実親の同意が必要
  • 養子の年齢制限
  • 半年間の監護が必要

1:養親の年齢制限

特別養子縁組で養親になるためには配偶者のいる人(夫婦)でなければならず、25歳以上であることが条件です。ただし、夫婦の一方が25歳以上の場合、もう一方は20歳以上であれば養親となれます。


普通養子縁組の場合は独身でも成人していれば養親となれるので、特別養子縁組の条件がいかに厳しいかわかるでしょう。

2:実親の同意が必要

特別養子縁組では、実父母の同意が必須です。ただし、実父母が意思表示をできない状態の場合や、実父母から虐待や悪意の遺棄など子どもの不利益となる行為を受けている場合は、同意を不要とすることもあります。


実親の同意は原則必要ですが、子どものおかれている状況に鑑みて家庭裁判所が判断することになります。

3:養子の年齢制限

特別養子縁組では養親の実子として育てられることから、養子となれる年齢が6歳未満という低年齢に設定されていました。しかし、特別養子縁組によってあたたかい家庭生活を送れるようになる子どもをさらに増やすため、年齢制限が令和元年の民法改正で引き上げられました。


令和2年4月1日に施行された民法では、特別養子の年齢制限は15歳未満とされています。ただし、15歳に達する前から養親に監護されていた場合は、18歳未満であれば特別養子縁組が可能です。


出典:民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について|法務省
参照:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00248.html

4:半年間の監護が必要

特別養子として縁組するためには、縁組成立前に6カ月以上養親となる夫婦が養子となる子どもを監護している実績が必要です。


本当に親子になれるのか、子どもが幸せに暮らしていける家庭なのかなど、一緒に暮らした状況に鑑みて家庭裁判所が特別養子縁組の成立を判断します。

【特別養子縁組にかかる平均費用】民間団体からの場合

特別養子縁組を検討している場合、どのように話を進めていけばよいか知っているという方は少ないでしょう。


特別養子となる子どもを探してもらうためには専門の機関に依頼し、費用も必要になります。もちろん、子どもを「買う」わけではないので、必要になるのは諸経費です。


ここでは、民間団体に依頼する場合に見込んでおいた方がよい費用について解説します。


出典:令和元年度養子縁組民間あっせん機関実態調査結果|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000759102.pdf

  • 子どもを迎えるための平均費用
  • 民間団体に登録する平均費用
  • 紹介後にかかる平均費用
  • 都道府県の補助金制度

1:子どもを迎えるための平均費用

特別養子縁組をする子どもを迎えるときは、手数料が必要になります。民間団体に依頼する際にかかる費用は、数十万円から数百万円までと幅があることを理解しておいてください。


厚生労働省の調査によると、民間団体に登録して特別養子となる子どもを迎える場合は、平均92万円8千円という費用が必要になります。

2:民間団体に登録する平均費用

特別養子縁組のために民間団体に登録する場合は、団体指定の研修や実習、調査を受けるための費用が必要になります。登録に必要となる費用も団体によって幅がありますが、厚生労働省の調査によると平均で19万7千円ほどなので、見込んでおきましょう。

3:紹介後にかかる平均費用

特別養子縁組の養子候補となる子どもを紹介してもらった後、実際に特別養子縁組が確定するまでにかかる費用も団体によって幅があります。特別養子縁組を依頼する団体によっては、縁組後も会員登録し、年会費の支払いが生じることもあります。


厚生労働省の調査によると、特別養子候補の子どもを紹介してもらってから必要になる費用は、平均すると71万9千円ほどです。

4:都道府県の補助金制度

特別養子縁組の養子となる子どもを民間団体経由で紹介してもらった場合、補助金を支給してくれる自治体もあります。都道府県によって対応が異なるので、お住いの都道府県で制度設定がされているか調べてみましょう。


東京都の場合は、特別養子縁組にかかった費用を1人(世帯)当たり上限35万円まで補助してくれる制度が設定されています。


出典:令和2年度 養子縁組民間あっせん機関助成事業(養親希望者手数料負担軽減事業)について|東京都福祉保健局
参照:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/satooya/youshintesuryo.html

【特別養子縁組にかかる平均費用】児童相談所からの場合

特別養子となる子どもを、児童相談所から委託を受けるという方法で迎えることも可能です。児童相談所経由で迎える場合は、特別養子縁組の前にまず里親として都道府県から認定されなければならず、民間団体経由で迎えるときとは手続きが異なります。


ここでは、児童相談所から特別養子を迎えるときの各手続きでかかる費用について解説します。

  • 子どもを迎えるための平均費用
  • 里親認定のための平均費用
  • 都道府県からの委託費用

1:子どもを迎えるための平均費用

児童相談所経由で特別養子を迎える場合、あっせん料や手数料は発生しないため基本的に費用はかかりません。ただし、子どもを迎えるまでの活動でかかる交通費や研修などの実費は必要になります。


児童相談所は行政によって運営されており、職員の活動費や養子縁組までの子どもの養育費は行政によって賄われているので、養親は負担せずにすみます。

2:里親認定のための平均費用

里親認定には、研修受講が義務付けられています。研修は都道府県で実施されており、無料の研修もあります。里親認定では、研修に関する費用や認定までの交通費、健康診断費用、住民票を取り寄せる費用など、手続きの実費のみが必要です。


健康診断は職場や地域で定期的に受けていれば、あらためて受診する必要はありません。


出典:児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の四| e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164

3:都道府県からの委託費用

特別養子縁組が完了すれば、特別養子は養親の家計で養育することになります。縁組が完了するまでの「里親」段階では、里親手当と一般生活費が支給されます。一般生活費は委託費用として支給され、乳児の場合は1人当たり月額60,110円、 乳児以外では52,130円です。


出典:里親制度|厚生労働省 子ども家庭局 家庭福祉課
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/satooyashiryouR3.pdf

特別養子縁組になる対象者

特別養子縁組制度は、保護者がなかったり実親による養育が困難だったりして、あたたかい家庭で暮らすことができない子どものための制度です。


制度主旨を実現するために、実親が育てることができない子どもが特別養子の対象となり、あたたかい家庭を与えられる夫婦が特別養子縁組の養親に適しているとみなされます。

特別養子縁組にかかる費用を知って子どもを迎えよう

特別養子縁組の制度は導入から長い間横ばい状態でしたが、近年件数が増えてきている新しい家族の形です。子どもの迎え入れ方によって費用がかかりますが、行政による補助制度も用意されています。


特別養子縁組の制度と縁組に係る費用の内容を理解し、子どもを授かる方法の1つとして考えてみましょう。