最低限のエネルギー消費しかしていない時間の体温を、基礎体温と言います。本来は寝ている間が最も安静な状態ですが、そのときに体温を測るのは不可能なので起きてすぐの状態で計測します。
基礎体温は低温期と高温期が2週間のサイクルで繰り返されます。ホルモンバランスによって心や体が影響しやすい女性にとって、この基礎体温は体調の変化を知る指針のひとつです。
生理周期と基礎体温の変化は切っても切り離せない関係です。女性の体の周期は月経期・卵胞期・排卵期・黄体期の4つに分けられます。月経期・卵胞期は低温期にあたり、排卵期・黄体期は高温期です。
基礎体温をつけると、低温期の始まるタイミングでだいたい月経期とわかるので生理周期も把握しやすくなります。また低温期が続く、高温期が続くなどがあれば体内にいつもとは違う変化が起きているという目安にもなるのです。
自分自身の体を知るためには、基礎体温を測ることが大切です。毎日決まった時間に続けなければならないので、初めのうちは億劫になることもあるでしょう。
しかし排卵日や生理の時期などもわかるので、妊娠を望んでいる女性は基礎体温をつけることはかかせないでしょう。まずは基礎体温をつけることで得られるメリットを知ることから始めてみてください。
基礎体温をつけていて、低温期・高温期のサイクルが安定していれば排卵日がわかります。もちろん個人差はありますが、低温期の最後に一段と体温が下がっている日が排卵日です。
妊娠を望んでいるときは、やはり排卵日を目安にするのが良いでしょう。低温期が続く状態だと排卵していない可能性があるため、注意深く見守る必要があります。
低温期より0.3~0.6度ほど気温が上昇する黄体期は、気分の不調や体の変化が表れやすいです。この症状が重い状態をPMS(月経前症候群)と呼びます。
一般的に生理の3~10日前から、イライラ・憂鬱・むくみ・胸のハリ・食欲増加などの症状が表れます。基礎体温を記録していればPMSの時期もわかりやすくなるので、気持ちの準備や対策が可能です。
基本的には28日周期と言われている生理のタイミングですが、やはり個人差はあります。基礎体温を記録していると、生理周期の把握にも役立ちます。
排卵日後に高温期を経て、低温期に入るタイミングで生理が始まります。PMSなどの症状に悩まされている人は、このあたりから症状も軽くなってきます。
子宮内膜を厚くするエストロゲンと、妊娠しやすい状態にするプロゲステロンが減少する時期です。
2つのサイクルに繰り返される基礎体温ですが、高温期が続いていたら妊娠している可能性があります。本来であれば高温期の後に減少するプロゲステロンが活動を維持するため、体温の高い状態が継続するのです。
確定とは言えませんが、妊娠を望んでいる人にとっては、嬉しいお知らせをいち早く感じられるのも基礎体温を測るメリットです。
個人差はありますが基礎体温をつけることで、体内で起きている異常に早く気づけます。低温期と高温期が一定した期間で繰り返されるのが、理想的です。
もしも高温期がとても短い場合や低温期が長く続いている場合には、黄体機能不全や無排卵月経などの可能性があります。妊娠を考えている人に限らず、体を守るために必要なことなので、心配なときは医師に相談しましょう。
一般的に排卵後から10日以上続く高温期が、非常に短かった場合には黄体機能不全の可能性が考えられます。プロゲステロンが正常に分泌されないため内膜環境が悪くなり、妊娠しづらい状態になっているサインです。
このままの状態では着床しづらいので、ホルモン療法などで改善を目指していくのが一般的な治療方法です。
高温期が続くのは妊娠のサインのひとつですが、低温期が続いていると排卵をしていない可能性があります。生理による出血があっても、低温期が続いている状態が無排卵月経です。
この時期は排卵していないため、月に1回生理が訪れていても妊娠できません。ストレスや食生活の乱れなども低温期が続く原因です。食生活や生活習慣の見直し、冷えを改善する漢方の処方などで改善していくのもひとつの方法です。
まずはしっかりと1周期分の基礎体温をつけて、低温期と高温期のベースを知ることが必要です。これらを把握できていれば、排卵日や妊娠時の把握もしやすくなります。
しかし個人差はあるので、基礎体温だけをベースに考える必要はありません。あくまでも体内の変化やリズムを知るためのひとつの方法です。
では妊娠したときには基礎体温にはどのような変化が表れるのでしょうか。詳しく見ていきます。
もちろん個人差はありますが、低温期に比べて0.3~0.6度の体温上昇が続く高温期が17日以上続いたら妊娠したサインです。妊娠している間ずっと高温期というわけではなく、16週あたりから少しずつ体温が低下し始めます。
20週ころになると、低温期で一定してくるのが一般的です。しかし人によっては基礎体温が低い状態でも、妊娠している可能性もあります。
基礎体温計は通常の体温計とは異なります。微妙な体温の変化を知るために、専用のものが必要です。
また測るタイミングもいつでも良いというわけではなく、適した時間に測る必要があります。毎日測らないと基礎体温の周期がわからないので、慣れるまでは少し大変ですが、まずは続けることから始めましょう。
基礎体温の記録を始めるときには、まず婦人体温計を準備しましょう。ドラッグストアなどでも販売されているため、簡単に手に入れることができます。
小数点以下1桁の表示になる通常体温計に対して、婦人体温計は小数点以下2桁まで表示されます。小数点以下の数字が重要となる基礎体温において、婦人体温計はかかせません。1分くらいで予測値を計測する予測式と、実際に5分間測る実測式があります。
基礎体温は体を動かさない状態、朝一番に測ることが大切です。エネルギー消費をしていない最も安静した状態が、基礎体温なので、寝起きにすぐ測る必要があります。
目が覚めたらすぐ、寝たままの状態で測ります。舌の下に体温計を入れて、空気が入らないように口を閉じた状態で測りましょう。毎朝なるべく同じ時間で測るのが理想的ですが、1日~2日忘れたり寝坊したりしても大丈夫です。
基礎体温を計測したら、すぐにグラフに記入する習慣をつけましょう。ノートや手帳に記録するのも良いですが、基礎体温をつけられるアプリもあります。
自身が続けられるものを選択しましょう。最近では自動的に記録してくれる婦人体温計もあります。それぞれのメリットがあるため、基礎体温をつける前に調べておくことがおすすめです。
手軽に基礎体温をつけ続けるなら、スマホアプリがとても便利です。数字を入力するだけでグラフ化してくれるため、低温期・高温期もわかりやすくなります。
ひと目でみられるグラフは、自身のサイクルを知るため重要なポイントです。アプリもさまざまなものがあるため、記録できる種類を見ながら自身に合ったものを見つけましょう。
基礎体温と共に記録しておくのが、日々の体調の変化です。性交した日や、寝不足の日、二日酔いの日など少しの変化でも記録しておきましょう。
日々の変化を記録することで、どのような異変が基礎体温に影響するのかを知ることができます。知っていれば基礎体温にいつもと違う変化が現れたとき、不安を解消したり生活を見直したりすることも可能です。
個人差は基礎体温にも現れるため、高温期が続く=妊娠とは限りません。先述しているように、低温期でも妊娠している場合があるため注意深く見守っていく必要があります。
高温期の継続の他に妊娠初期に見られる症状をまとめているので、該当する可能性がある場合はぜひチェックしてみてください。
生理と同じような時期に現れるため、少し紛らわしいのですが妊娠初期には少量の不正出血があります。これは受精卵が着床した際に、絨毛により子宮内膜が傷つけられて発生する、着床出血です。
生理と間違えやすいですが、出血量が少量で短期間であること、塊が出ないことなどが着床出血の特徴です。
偏頭痛のような症状が起きるのも、妊娠初期症状のひとつです。これは妊娠した際に活動的になる黄体ホルモン、プロゲステロンが原因となります。
妊娠することで、黄体ホルモンが血液の流れを促して血管が拡張し、頭痛が起きます。この時期は免疫力も低下してしまうので、感染症にも気をつけなければなりません。
下腹部痛や便秘なども妊娠初期に現れる症状の1つです。頭痛と同じように、下腹部痛や便秘も黄体ホルモンの活性化が影響しています。
黄体ホルモンの活性化により腸などの働きが弱くなり、下腹部痛や便秘などが起きてしまうのです。この時期は食物繊維などの摂取を心がけるなど、食生活の見直しなども必要となります。
妊娠初期に現れる腰痛は、リラキシンというホルモン分泌が原因です。着床したときから女性の体は、出産に向けての準備が始まります。リラキシン分泌により、関節や筋肉がどんどん緩くなってきます。
関節や筋肉が緩くなってくると、支えられていた骨盤のバランスが崩れ腰痛を引き起こします。放置しておくと体調不良の原因にもなるため、骨盤ベルトで支えるのも対処法のひとつです。
明確な原因は明らかにされていませんが、妊娠初期症状のひとつである胃のむかつきも現れてきます。いわゆる「つわり」です。
ホルモンバランスの乱れや、体調不良によるストレスも胃のむかつきを引き起こす原因と言われています。お腹が大きくなってくると、胃が圧迫され同じように胃のむかつきなどの症状が現れます。
食事をするのが辛くなりますが、少量ずつ食べるなど工夫していきましょう。
妊娠初期に現れるホルモンバランスの影響により、肌荒れを引き起こすこともあります。乾燥やシミが目立つようになるだけではなく、黄体ホルモンの分泌により皮脂量が増えニキビができやすくなるのも特徴です。
季節によってケアは変わってきますが、保湿や日焼け予防などの対策もしっかりしていきましょう。
ホルモンバランスの変化は、心にも影響を与えます。PMSの症状にも似ていますが、イライラしたり憂鬱な気分が続いたりするのも妊娠初期症状のひとつです。
感情をコントロールすることが難しくなり、リフレッシュする時間を積極的に作ることなどが必要となります。心も体も不安定になりがちなので、穏やかに過ごすことを心がけましょう。生活に影響を与えるほど、気分が優れないときには受診するのもおすすめです。
日中に急激な眠気が襲ってきたり、起き上がるのが辛いほどの倦怠感があったりするときは妊娠初期症状の可能性があります。
これは胎児の成長に必要となる、hCGホルモンやプロゲステロンの分泌が原因と言われています。またホルモンバランスの乱れにより、疲れやすくなるのもこの時期の特徴です。
お腹の中の赤ちゃんが一生懸命、成長を繰り返しています。ゆっくり休みながら、体調と向き合っていきましょう。
妊娠初期に胸が張ったり、乳頭がチクチク傷んだりするのは黄体ホルモンなどによる影響です。これは出産に向けて、乳腺や乳管が発達し始めていることによる変化です。
この症状は、妊娠初期特有です。中期になると少しずつ落ち着いてきます。
hCGホルモンの影響により出てくるのが、味覚や嗅覚の変化です。今まで好きだったものを受け付けなくなったり、嫌いなものが好きになったりという味覚の変化が現れ始めます。
また嗅覚も敏感になり、苦手な匂いを感じただけで吐き気をもよおすこともあります。これを一般的に「においつわり」と言います。出産まで続く人もいれば、お腹が大きくなると収まってくる人もいます。
マスクを着用して、アメやガムを口に入れていると気が紛れます。
先述している倦怠感と同じような症状ですが、妊娠初期は強い眠気が出てきます。倦怠感と同じように胎児の発達のために、細胞分裂やホルモン分泌が原因です。
胎児の成長を妨げないために、母体を休ませる目的があると一説には言われています。休めるときにはゆっくり休むなど、ストレスがかからないように過ごしましょう。
妊娠検査は生理予定日から1週間後が適切なタイミングです。妊娠したときに分泌されるhCGホルモンの分泌量により、妊娠しているかどうか判断します。
妊娠検査薬で陽性の場合も、妊娠しているかを確定するため産婦人科での受診が必要です。早く受診しすぎると、妊娠していても反応しないことがあります。
生理不順の場合はタイミングが分かりづらいので、定期的に受診することをおすすめします。
妊娠を希望しているときは、基礎体温を計測して自分自身の体内リズムを知ることが大切です。基礎体温を測る理由や測り方を知って、正しい方法で記録しましょう。
基礎体温を正しく記録すると生理のタイミングや排卵日を、自分自身で把握できます。またPMSの時期もわかるため、対策しやすくなります。妊娠を考えていなくても、女性特有の悩みと向き合えるメリットがあるのが基礎体温です。