妊娠8週はとても大切な時期で、お腹の赤ちゃんがようやく「胎児(たいじ)」と呼ばれる状態まで育ち、多くの妊婦さんがつわりのピークでつらい時期となっています。
つわりは妊娠初期から起こる妊娠特有の症状です。つわりがいつから始まっていつ終わるのか、期間には個人差があります。しかしつわりが最もひどくなるピークがいつかというと、妊娠8週頃だと言われています。
妊娠8週は「妊娠3か月」である、ということに混乱する方が多くいらっしゃいますが、これは妊娠の起点の数え方が違うだけで、同じことです。
妊娠週数は妊娠0週から始まりますが、妊娠月数の方は0か月が始まりではありません。妊娠0週の時期は月数では妊娠1か月と数えるため、妊娠8週は妊娠3か月にあたるのです。産婦人科では妊娠週数で数えますが、妊娠経験のない人は妊娠月数の方に馴染みがあるでしょう。
妊娠には妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期がありますが、妊娠8週は妊娠初期の中頃となっています。
妊娠初期には妊娠初期症状が現れることがあります。これがいわゆるつわりで、空腹や匂いで気持ちが悪くなったり、胃もたれしたり、足のむくみや下腹部痛などの症状がでて辛い時期です。
ちなみに妊娠初期はいつまでかというと、妊娠12週、月数で妊娠4か月あたりまでです。妊娠5か月からは妊娠中期に入ります。
妊娠8週は、赤ちゃんの主要な体が作られ始め、大きく成長し始める非常に大切な時期です。
妊娠8週を胎児と言いますが、実は「胎児」と呼ばれるのは、そもそもこの妊娠8週の時期からなのです。この頃の胎児はどんな様子なのか、体の成長具合や心拍の様子について解説します。詳しく見ていきましょう。
お腹の中の赤ちゃんは妊娠8週の胎児期の前は「胎芽(たいが)」と呼ばれており、まだまだ人の体はできていませんが、体の器官を作り出している大切な時期です。
胎芽の時期は体長が1cm未満と非常に小さな存在です。妊娠8週というのは、この胎芽の時期から実際に骨ができ、体が伸びて大きくなっていく胎児への移行時期なのです。一般的に、この妊娠5週から11週の時期を「器官形成期」と呼んでいます。
妊娠8週で胎児期に入ったことにより、赤ちゃんの頭や胴、足が伸びてスタイルが赤ちゃんらしい三頭身となってより人間らしい姿に変化していきます。
まぶたや耳たぶ、唇などの顔のパーツが作られるのも、ちょうどこの頃にあたります。胎児になるまでの胎芽期の赤ちゃんは人間らしい体や顔つきをしていませんでしたが、胎児期には本当に胎児らしく成長していきます。
妊娠5週から11週の器官形成期にあたるこの頃には、赤ちゃんの脳や臓器など体内の器官の形成が行われ、ほぼ完成するという重要な時期になっています。またこの時期には、赤ちゃんと母体を繋ぐへその緒も作られます。
赤ちゃんの内臓の基本的な形が作られることから、この時期は先天異常の起こるリスクが高くなる頃でもあります。薬の服用やアルコール、タバコなどに注意した方がよいでしょう。
妊娠8週の頃までには、妊婦検診の超音波エコーによって胎児の心拍が確認できるようになっています。
妊娠初期には流産のリスクがあり、とくに妊娠8週までは順調でも9週までに流産してしまう可能性が高いことから、「9週の壁」という言葉があります。
一般的に、赤ちゃんの心拍が確認できれば流産の可能性は低下するとも言われているため、赤ちゃんの心拍を確認することは重要なのです。
超音波エコーでは、妊婦さんの体の中の胎児をまずは拡大して心臓の位置を確認し、心臓が動いている様子を見られます。
胎児の体はまだまだとても小さいものなので、心臓の位置も医師に教えてもらわなければなかなか分からないでしょう。肉眼で心臓を見て、早い間隔でドクドクと動いているのが見えるはずです。
妊娠8週はお腹の中の赤ちゃんが人間らしく成長していく胎児期に入る頃であり、同時に大きく成長していく時期でもあるため、母親である妊婦の体にも変化が現れてきます。
赤ちゃんが育つということはお腹が大きくなるのか、どんな症状が現れる頃なのか、妊娠8週を迎えた妊婦さんの状態について解説します。
胎児が大きく成長していくことで子宮も大きくなるため、子宮が引き延ばされるような感じで下腹部痛を感じることがあります。
また子宮が大きくなることで、その付近にある膀胱や腸も影響を受けます。具体的には子宮が大きくなることによる圧迫があり、頻尿や便秘になったりする人もいます。
妊娠8週ではまだお腹のふくらみは目立ってきません。妊婦らしくお腹が大きくふくらみ始めるのは、妊娠4か月以降からが多いです。この時期はまだ、外から見ても外見で妊娠している、とは分かりにくくなっています。
ただ、子宮は胎芽期の頃に比べると握り拳くらいに大きくなっています。そのためお腹全体ではなく、下腹部が少しふくらんでくることがあります。
つわりがピークを迎える妊娠8週頃に起こることが多い「妊娠悪阻(にんしんおそ)」というものにも注意しておきましょう。妊娠悪阻とは、簡単に言うとつわりが重症化したものです。
主な症状として嘔吐が酷く食事がまっくたとれない、水を飲めず脱水症状を起こす、疲労しやすかったりめまいがするなどです。
あまりにも体調がすぐれない場合には、すぐにかかりつけの産科医に相談するようにしましょう。
妊娠8週の頃はおりものの量が増えていく時期で、時に不正出血が見られることがありますが、何度も出血しているようだとかかりつけの医師に相談した方がよいでしょう。
不正出血してもすぐにおさまった場合は、それほど心配する必要はないでしょう。しかし出血が続く場合は流産が起こる可能性があるため、早めに病院に行くようにしましょう。
妊婦や赤ちゃんの体を危険にさらさないためにも、妊娠初期である妊娠8週には気をつけることがたくさんあります。
とくにここで紹介している項目は、妊婦や胎児に悪影響を与える可能性が高いものとなっています。出産まで健康に過ごすため、赤ちゃんを無事に出産するためにも、これらの項目をチェックしておきましょう。
赤ちゃんの体や、器官が作られる妊娠8週の時期に服用してしまうと、赤ちゃんに悪影響を及ぼす薬はたくさんあります。
風邪の時に飲むような解熱鎮痛剤や抗ウイルス薬、抗リウマチ薬や抗凝固薬などの中には、妊婦への服用が制限されているものがあるので注意しましょう。またこれ以外の薬でも、服用する前にかかりつけの医師に相談しておいた方がよいでしょう。
喫煙は気をつけることと言うより、避けた方がよいことです。妊娠8週の初期だけでなく、妊娠中はずっと避けるようにしましょう。
喫煙すると、タバコに含まれているニコチンは胎盤を通って赤ちゃんに悪影響を与え、流産や早産のリスクを高めると言われています。これは受動喫煙でも同じなので、家族に喫煙している人がいるなら要注意です。
妊娠するとアルコールも禁止となりますが、とくに妊娠初期である妊娠8週の頃は胎児の成長に悪影響を与える可能性があります。妊娠初期だけでなく、少なくとも妊娠期間中は控えた方がよいでしょう。
ふだんはお酒に強いという人も、妊娠中はアルコールの代謝力が落ちています。それでも飲酒してしまうと、アルコールをほぼ代謝できない胎児の正常な成長を阻害し、先天異常のリスクが高まると言われています。
夏の冷房にあたったり、冷たい飲み物を飲み過ぎたり、水分を過剰摂取したりしてしまうと、体が冷えてお腹が張りやすくなり、便秘や下痢をするようになります。その結果、腰痛が起こるなどの影響が出てしまいます。
体を冷やしてしまうと妊婦の場合は、胎児の成長を妨げる要因になることがあります。入浴したり軽く体を動かして、体を冷やさないようにしましょう。
妊娠初期にコーヒーを飲むことでどんな影響が出るのかを調べた研究により、カフェイン摂取量が増えると流産のリスクも高まることが判明しています。
お茶や紅茶、コーヒーなどを常飲している人も多いでしょう。しかし、これらの飲み物の過剰摂取に注意しましょう。それほど問題がないとされる量は1日に99mg以下、具体的にはコーヒーで1日1杯程度です。
カフェインが多く含まれているのはコーヒーやお茶、紅茶、ココアやエナジードリンク、炭酸飲料などがあります。
カフェインはカカオ豆にも含まれているため、チョコレートが使われたお菓子にも含まれているのが特徴です。とくにカカオ成分の多いハイカカオのチョコレートはカフェイン含有量が多いため、量に注意しましょう。
カフェインやアルコールほど知られてはいないかもしれませんが、ビタミンAの過剰摂取にも注意が必要です。ビタミンAを過剰に摂取してしまうと頭痛や吐き気や嘔吐などの症状がみられる他、胎児の先天異常のリスクが高まると言われています。
しかしビタミンAを摂取してはいけない、ということではありません。むしろ胎児の成長には必要な栄養素なので摂る必要はありますが、摂り過ぎに注意が必要です。
ビタミンAが多く含まれる食品は、レバーや焼き鳥、うなぎ、あんこうの肝などです。
過剰摂取とされる量は1日で2700μgRAEとされていますが、レバーの中にはほんの少しでこの量を超えるものがあります。これらの食品を食べる時は、ビタミンAを過剰摂取しないように量の調整をしましょう。
ここからは出産に備えて、妊娠8週の頃から準備しておいた方がよいことを2つ、詳しく紹介していきます。
事前に知って準備しておくことで、妊娠期間中の健診を受ける際に慌てず行動することができます。さらに補助券などを利用して家計の負担を少なくできるというメリットもありますので、しっかりと把握しておきましょう。
胎児の心拍を確認できる妊娠8週の頃から妊娠届の提出や母子手帳を取得できますので、取得しておきましょう。
母子手帳を取得できるのは、胎児の心拍が確認できてからとなります。かかりつけの産婦人科にて交付された妊娠届を提出してから、市役所や保健センターで母子手帳をもらいましょう自治体にもよりますが、妊娠届提出時にもらえることが多いようです。
妊娠届を提出して母子手帳を取得したら、定期的な妊婦健診に通い始めましょう。妊婦検診に通うことで、胎児の様子を確認したり、妊娠中の病気に気づきやすくなります。
妊婦検診は妊娠23週までは4週に1回、妊娠24週から35週までは2週に1回、妊娠36週以降は毎週受けることを推奨されています。一般的な妊婦さんの妊娠期間で、おおよそ14回ほど通うことになるでしょう。
母子手帳をもらってから妊婦健診をおすすめするのは、母子手帳に妊婦健診のための補助券がついてくるので、よりお得に健診を受けられるためです。
母子手帳交付時にもらえる補助券で、妊婦検診の費用の一部を補助してもらえます。具体的にどの程度の補助があるのかは、お住まいの自治体によって違いがあります。補助の内容は自治体にもよりますので、確認してみてください。
妊娠8週というのは妊娠初期にあたり、お腹の赤ちゃんが胎芽から胎児へ成長するというとても大切な時期です。この頃は食べ物や飲み物、服用する薬について妊婦でも安全かどうか気をつける必要があります。
妊娠8週はつわりもピークを迎えて辛い時期でもあるため、体に気をつけながら適切に休息をとり、無理せず安静に過ごしましょう。