【専門家監修】hCG注射の妊娠検査薬への影響とは?5つの注意点を紹介

妊娠検査薬とhCG注射の関係

hCG注射は、機能性子宮出血などの婦人科系の疾患治療や不妊治療に用いられる注射です。hCG注射を使用していると妊娠検査薬で偽の陽性反応、いわゆる偽陽性が出ることが分かっています。


なぜhCG注射は妊娠検査薬に影響するのでしょうか。ここからは、妊娠検査薬とhCG注射について詳しくご紹介します。

妊娠検査薬の仕組み

妊娠検査薬とは、その名の通り妊娠したかどうかを判定する試薬です。


妊娠が成立すると赤ちゃんを育てるため体内のホルモン分泌に変化がみられるようになりますが、そのようなホルモンの中にhCGがあります。


妊娠検査薬は尿中に排泄されるhCGを検出して、妊娠しているかどうかを判定する仕組みです。妊娠検査薬で陽性判定が出た場合、自己判断せず早めに医療機関で相談しましょう。

hCG注射とはどんなもの?

hCGとは妊娠したときに胎盤から分泌されるホルモンで、「ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン」といいます。hCGは受精卵が着床してから作られ始め、妊娠4週目頃より尿中に排泄されるようになるのです。


hCG注射とは不妊治療や機能性子宮出血・黄体機能不全症などの疾患治療にも使用される、hCGを含むホルモン製剤です。


hCGは構造が黄体形成ホルモンと類似しており、排卵を誘発して妊娠確率を上げることが期待されます。

妊娠検査薬で陽性が出たら?

hCG注射は妊娠成立時に胎盤から分泌されるホルモンを利用した製剤なので、その性質上妊娠検査薬に影響することが知られています。


hCG注射を使用していると妊娠検査薬で偽陽性が出る可能性があります。では、偽陽性とはどのような状態でしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。

偽陽性とは

偽陽性とは、実際は陰性なのに陽性として判定が出ることを指します。妊娠検査薬の例でいうと、本当は妊娠していないにもかかわらず結果が陽性、つまり「妊娠している」と判定されてしまうのが偽陽性です。


hCG注射は妊娠によって分泌されるホルモンと同じ成分を含むので、妊娠検査薬で偽陽性が出る可能性があることに注意しましょう。

hCG注射後に妊娠検査薬を使う時の注意点5つ

ここまで、不妊治療などでhCG注射を使用している場合、妊娠検査薬で偽陽性が出る可能性があることをお話ししました。


hCG注射を使用していてもタイミングなどに注意すれば、妊娠検査薬を使用して妊娠の有無を判定することは可能です。


ここからは、hCG注射後に妊娠検査薬を使用する際の注意点について見ていきましょう。

妊娠検査薬を使う時の注意点1:hCGホルモンの濃さ

hCG注射には濃度を表す単位が存在します。例えば不妊治療では1日3000から5000単位、機能性子宮出血では1日1000から3000単位を筋肉注射で投与するのが一般的です。


投与する数値が高いほどhCGホルモンの濃度が高くなります。高い濃度を投与されれば、その分体内にhCGホルモンが残る期間が長くなり、hCG注射の濃度によって、妊娠検査薬に影響を及ぼす期間に影響が出ると予想されるでしょう。

妊娠検査薬を使う時の注意点2:フライング検査に気を付ける

hCG注射後に妊娠検査薬を使用する際は、フライング検査に注意しましょう。


妊娠検査薬は、通常だと生理が始まる予定日1週間後以降の使用が推奨されています。それより早い時期に妊娠検査薬を使用することを「フライング検査」と呼びます。


hCG注射後十分に時間が経過していないと、偽陽性が出る可能性が高くなります。そのため、hCG注射後の妊娠検査薬の使用は慎重に行いましょう。

妊娠検査薬を使う時の注意点3:注射後3週間まで待つ

hCG注射を使用後1週間は、妊娠検査薬で偽陽性が出やすくなります。それ以降であれば使用可能といわれていますが、この1週間という期間はあくまでも目安であることに注意しましょう。


注射後3週間を空けてから妊娠検査薬を使用した方が、判定結果の信ぴょう性が上がることが期待できます。hCG注射使用後はフライング検査に十分注意し、焦らず適切なタイミングで使用することがおすすめです。

妊娠検査薬を使う時の注意点4:多胎児の可能性がある

妊娠検査薬は、偽陽性に加えて偽陰性となる可能性もあります。偽陰性とは、本当は妊娠しているのに検査結果では「妊娠していない」と判定されることです。


また多胎児を妊娠した場合、体内のhCG濃度が妊娠検査薬で検知できる上限値を超えるほど高くなり、偽陰性となってしまうことがあります。


妊娠検査薬は尿中のhCGを検知するものです。水分を摂りすぎて尿中のhCG濃度が薄くなっても、偽陰性となるので注意しましょう。

妊娠検査薬を使う時の注意点5:医師による判定

妊娠の確実な診断には、医師による判定が必要です。妊娠検査薬は偽陽性や偽陰性となる可能性もあり、その結果だけで妊娠が確実に判定できるものではありません。


また、本当に妊娠していたとしても正常な妊娠であるかどうかは、医師が診察するまでは何ともいえないのが実情です。正常に妊娠しているのか判断するためにも、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

hCG注射後に起きる3つの体の変化

hCG注射は一種のホルモン製剤であるため、投与によって期待する効果以外の作用を及ぼす可能性があります。そのため、心身にどのような変化が起こるか知っておくことで、不安が少なくなるでしょう。


hCG注射後は副作用が起こる可能性のほか、hCGのホルモンとしての作用が生理的な変化として現れることがあります。ここからは、hCG注射後に体に起こり得る3つの変化について見ていきましょう。

hCG注射後の体の変化1:副作用の可能性がある

hCG注射後は、副作用が起きる可能性があることを覚えておくと良いでしょう。


副作用の1つに「卵巣過剰刺激症候群」あります。これは卵巣の腫大や下腹部痛、腹水や胸水の貯留に伴い呼吸が苦しくなったり、血液が固まりやすくなるといったことが主な症状です。そのほかの副作用としては、発疹・めまい・頭痛・不眠などがあります。


症状に不安があって副作用が疑われる場合は、直ちに医師に相談するようにしましょう。

hCG注射後の体の変化2:高温期が続く

hCG注射によって、基礎体温の高温期が続くことがあります。hCGは黄体形成ホルモンと構造が似ていることから、投与されると体が「黄体期」となって基礎体温が上昇するのです。


黄体期とは生理周期の中の1つで、「排卵期」と合わせて「高温期」のカテゴリーに含まれます。hCG注射によってこの「黄体期」の状態となり、基礎体温の上昇が見られるということを覚えておくと良いでしょう。

hCG注射後の体の変化3:生理周期が変わる

生理は一般に28日周期で、低温期がおよそ14日間、高温期がおよそ14日間といわれています。低温期は月経期と卵胞期、高温期は排卵期と黄体期に分かれ、排卵が起こると低温期から高温期に移行されます。


hCG注射は体を黄体期の状態にして高温期を持続させるので、生理開始が遅れるなど周期を乱すことがあります。そのため、hCG注射中は生理周期の変化に注意しましょう。

妊娠検査薬に影響のないもの

hCG注射は妊娠成立後に胎盤から分泌されるホルモンを含むので、妊娠検査薬の判定に影響を及ぼすということを前項でお話ししました。


一方で妊娠検査薬に影響がない薬剤も存在し、プロゲステロン注射がそれに該当します。プロゲステロン注射が妊娠検査薬に影響しない理由について、以下で詳しく見ていきましょう。

プロゲステロン注射にはhCGは含まれていない

プロゲステロンとは、子宮の内膜を肥厚させて受精卵が着床しやすいように環境を整える作用を持つホルモンの一種です。


プロゲステロン注射は、hCG注射同様不妊治療に用いられます。しかしプロゲステロン注射にはhCGが含まれていないので、妊娠検査薬の判定に影響することはありません。


プロゲステロン注射はプロゲステロンを含むホルモン製剤なので、高温期を持続させ生理周期を遅らせる影響はあるでしょう。

病気の知らせになる可能性もある

妊娠検査薬を正しく使用して陽性だった場合、妊娠している可能性が高いでしょう。しかしその結果は正常な妊娠であることの保証にはならず、病気の知らせとなることもあります。


子宮内膜以外に着床する異所性妊娠、胞状奇胎や絨毛癌などの絨毛性疾患でも妊娠検査薬で陽性と出ます。


妊娠検査薬はあくまでも尿に存在するhCGを検知しているだけであることを忘れず、陽性結果が出たら医師の確定診断を受けましょう。

hCG注射の影響について知ろう

hCG注射は、不妊治療や婦人科系疾患の治療に用いられる薬剤です。hCGは胎盤から分泌されるホルモンを利用したホルモン製剤なので、尿中のhCGを検出する妊娠判定薬に影響を及ぼします。


正しい使用方法で妊娠検査薬の結果が陽性判定だったとしても、正常妊娠以外の原因も考えられるので自己判断は危険です。


妊娠検査薬の判定結果だけに頼らず、必ず医師の確定診断を受けることを心がけましょう。