妊娠中にママが感染すると重症化したり、赤ちゃんが早産や流産のリスクになる感染症があります。それらの中には、妊娠前にワクチンの予防接種をすれば感染予防できるものもあります。
妊娠を希望する女性はあらかじめ、それらのワクチンを予防接種し免疫を付けることで元気な赤ちゃんを産む上で重要になってきます。
妊娠中は生ワクチンと言われる種類の予防接種はできません。
妊娠前でも生ワクチンの予防接種後は2ヶ月の避妊が推奨されています。また、生ワクチンは計2回接種することが推奨されており、1回目と2回目の予防接種は1ヶ月期間を空けなければならないため、妊娠を希望する場合早めの予防接種が必要です。
予防接種のワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがあります。
先述しましたが、妊娠前でも生ワクチンに関しては2ヶ月は避妊することが推奨されており、不活化ワクチンは妊娠の2ヶ月未満でも、妊娠中でも予防接種することができます。
予防接種にはどのような種類があるのか、詳しく説明していきます。
生ワクチンは病原体となるウイルスや細菌を弱毒化して、病原性をなくしたものを原料として作っています。病原性はありませんが、生きているのが特徴です。
毒性を弱めたウイルスや細菌が体内で増殖し、免疫を高めていくため少ない接種回数で済みますが、十分な免疫ができるまで約1ヶ月が必要となります。
BCGとは結核を予防するワクチンの通称です。結核は結核菌によって発症する感染症で、毎年1万5,000人以上の患者が発生しています。
結核は空気感染を起こし、一般的には肺の中で増殖し咳や痰、呼吸困難などの症状を発症しますが肺以外では腎臓、骨、脳などのさまざまな部分に影響を及ぼすことがあります。
妊娠中のママがかかってしまうと、低出生体重児や早産のリスクが上昇するといわれています。
麻疹風疹混合(MR)ワクチンを予防接種することで、麻疹・風疹の免疫を作ります。麻疹は空気感染、風疹は飛沫感染、接触感染が主な感染経路となります。
麻疹にかかると、発熱や咳、鼻水、体に発疹ができるのが一般的な症状ですが、重症化すると命に関わることがあります。また、妊娠中に麻疹にかかると早産や流産のリスクが上昇します。
風疹にかかると、発熱や体に発疹ができます。妊娠中にかかると、赤ちゃんにも感染してしまい、目や耳が不自由、生まれつき心臓に病気がある、成長発達がゆっくりしているなど、先天性風疹症候群にかかるリスクが高くなります。
おたふく風邪とは、流行性耳下腺炎といい、ムンプスウイルスの感染によって発生するウイルス性の病気です。合併症として無菌性髄膜炎、脳炎、難聴などが挙げられます。おたふく風邪は飛沫感染が主な感染経路です。
妊娠中におたふく風邪にかかると、ママから赤ちゃんに感染することは稀であると言われていますが、妊娠初期に感染すると流産リスクが上昇する可能性や低出生体重児が多くなる傾向にあると言われています。
水痘はいわゆる、水ぼうそうのことで、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされ、全身に発疹ができる感染症です。水痘は空気感染、飛沫感染、接触感染の感染経路があり、潜伏期間は感染から約2週間と言われています。
妊娠中に水痘にかかると、ママは重篤な水痘肺炎が起こる可能性があると言われています。また赤ちゃんに関しては、感染時期によって流産、先天性水痘症候群、早産、子宮内胎児発育不全、乳児期帯状疱疹、周産期水痘を発症する危険性があります。
不活化ワクチンは病原体となるウイルスや細菌の感染能力を失わせたものを原料として作っています。
自然感染や生ワクチンに比べると、生み出される免疫力は低いため1回の予防接種では十分ではなく、何回かの予防接種が必要です。その予防接種回数は、ワクチンによって異なります。
インフルエンザは通常12~3月末頃まで流行します。インフルエンザにかかると、咽頭痛、咳、鼻水などの感冒症状に加え、38℃以上の発熱や全身倦怠感、関節痛、筋肉痛などの症状を認め症状が強いのが特徴です。
高齢者や基礎疾患のある人、免疫力が低下している人は肺炎を合併したり、脳炎や脳症を発症する可能性があります。
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染して起こる肝臓の病気です。HBVは感染した時期や、感染した時の健康状態によって一時的な感染にとどまるもの(一過性感染)とほぼ生涯にわたって感染が持続するもの(持続感染)に大別されます。
B型肝炎は母子感染が認められる感染症であり、妊娠初期に血液検査を行い調べます。
肺炎球菌感染症とは肺炎球菌という細菌によって引き起こされる感染症です。感染すると、肺炎や中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、敗血症など重篤な合併症を起こす可能性があります。
肺炎球菌は主に乳幼児の鼻や喉の奥に20~50%、成人では3~5%に常在していますが、保菌者の全てが発症するわけではなく、小児では無症状の保菌が多いです。肺炎球菌感染症の予防はワクチン接種が有効であると言われています。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるため、妊娠中でも予防接種することは可能であり妊娠週数に関係なく、いつでも接種することができます。
妊娠前にインフルエンザの予防接種を受けることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。次にどのようなメリットがあるか、紹介していきます。
インフルエンザの予防接種を受けると、個人差はありますが接種してから2~3週間前後で抗体が付き、その後約3~4ヶ月ワクチンの効果が持続すると言われています。また、インフルエンザの発症をある程度抑える効果があると言われています。
妊娠前にインフルエンザの予防接種を受けることで、その後すぐに妊娠しても抗体の効果によって感染予防に努めることができます。
妊娠中にインフルエンザにかかると、非妊娠時と比較して重症化しやすいと言われています。また、早産、流産、低出生体重児のリスクが上昇すると言われています。
インフルエンザは飛沫感染が主な感染経路で、マスクや手洗いうがいなどを基本に感染予防が大切です。
しかし、旦那様から移ったりする可能性もあるため妊娠を希望している場合、妊娠前から予防接種を受けることが望ましいです。また、その家族も予防接種を受けることが推奨されています。
インフルエンザの予防接種を受けることで、たとえ感染しても重症化を防ぐことができます。
妊娠中にインフルエンザワクチンを接種することによって、ママに抗体ができるだけでなく胎盤を介して、赤ちゃんにも抗体が移行すると言われています。
生後6ヶ月未満の赤ちゃんはインフルエンザワクチンを接種できないため、ママが妊娠中に予防接種していると心強いです。
インフルエンザの予防接種を受けるメリットを先述しましたが、メリットがあればデメリットもあります。
妊娠前にインフルエンザの予防接種を打つとどのようなデメリットがあるのか、次に詳しく説明していきます。
妊娠前にインフルエンザの予防接種を受けるデメリットとして、副反応が挙げられます。インフルエンザワクチンは副反応の少ないワクチンではありますが、副反応がでる可能性があります。
副反応として接種部位の赤み、腫れ、痛みなどが挙げられ、接種した人の10~20%に起こりますが、通常2~3日でなくなります。全身性の副反応としては発熱、頭痛、寒気、倦怠感などが挙げられ、接種した人の5~10%に起こりますが、こちらも通常2~3日で良くなります。
稀に、アナフィラキシー様症状(痒み、蕁麻疹、呼吸困難など)がみられることがあるため、接種後約30分は安静にし異常を認めた場合は速やかに医師に連絡することが望ましいです。
インフルエンザの予防接種を受けてから抗体ができるまでに、個人差はありますが約2~3週間の時間がかかるということがデメリットの一つとして挙げられます。そのため、ワクチンの接種時期はインフルエンザの流行シーズンが始まる10~11月が理想であると言われています。
インフルエンザの予防接種を受けても、抗体の持続時間が約3~4ヶ月であるということがデメリットの一つとして挙げられますが、インフルエンザは通常12~3月末頃までと言われているため、先述したように流行シーズンの始まる10~11月に接種することが理想とされています。
厚生労働省によると、13歳以上の人は1回接種を原則としており、13歳未満の人は2回接種と定められています。ただし、13歳以上でも基礎疾患があり著しく免疫機能が低下していると考えられる人などは医師の判断によって2回接種となることもあります。
妊娠中に感染するとママが重症化したり、赤ちゃんが感染し早産や流産のリスクが上昇する感染症がいくつかあります。
それらの感染症にはワクチン接種によって予防できるものもあります。妊娠を希望している場合は妊娠前にそれらのワクチンを接種し、免疫を付けておくことで、元気な赤ちゃんを産むだけでなく、ママ自身の体を守る上で非常に重要となります。
インフルエンザの予防接種に関して詳しく説明しましたが、妊娠前に受けられる予防接種は全て受けることが望ましいです。