陣痛とは、お腹から赤ちゃんを産みだすために、子宮が収縮することです。
陣痛というと「骨が砕けそうな痛み」や「耐えられない痛み」などの連想をする方もいて、それほど陣痛に対して「怖い」「痛い」というイメージが持たれがちです。
これから出産される方は未知の痛みに対して恐怖を感じることでしょう。しかし、事前に陣痛とは何かの知識を得ることにより、心の準備ができ、安心して赤ちゃんを迎えられます。
お産が近づくと、赤ちゃんを産みだすために子宮は収縮を始め、子宮口が開くときに痛みが起こります。また、子宮と赤ちゃんにより組織や骨の圧迫によって痛みを感じます。これが陣痛です。
陣痛がきたときには「プロスタグランディン」や「オキシトシン」などのホルモンが妊婦さんの身体に分泌されます。これらのホルモンによって子宮が収縮し、子宮口が柔らかくなり、開きます。
妊娠37週を過ぎると、いつ出産になってもおかしくありません。前駆陣痛とわかるようなお腹の痛みから始まり、だんだんと痛みが定期的になってくる人もいれば、前駆陣痛がなく、いきなり本格的な陣痛になる人もいます。
痛さも「ズキズキ痛い」「下痢のときの痛み」「生理痛のような感じ」など、さまざまです。このように、陣痛のタイミングや痛さは個人によって違います。
陣痛はいつ起こるかわかりません。赤ちゃんの準備が整ったタイミングで陣痛が起こるので、妊婦さんにはコントロールできません。ですので、いつでも大丈夫なように準備しておきましょう。
初めての出産だと、お腹が痛くなったときに陣痛か、それともただのお腹の痛みなのか判断に迷うことがあるでしょう。ここでは入院のタイミングを判断する「陣痛の症状」「おしるし」「破水」の3つについて説明します。
「陣痛がきた」と思ってもそれが本当の陣痛なのか、それとも前駆陣痛なのかと迷う方もいるでしょう。「陣痛がきたらわかる」と言われるけれど、本当にわかるのだろうかと不安になることもあります。
特に初めての出産だと、未経験のことですのでお腹が痛くなってもそれが陣痛なのかどうか判断に迷うかもしれません。ですのでここでは「前駆陣痛と本陣痛の違い」「病院に行くべき陣痛の間隔」について説明します。
前駆陣痛は、偽陣痛と呼ばれることもあり、臨月に起こることが多くあります。「陣痛がきたかも」と思っても、時間がたつと落ち着きます。
前駆陣痛とは出産予定日が近づくと起こる、不規則な子宮の収縮です。出産の準備として起こり、陣痛に向けて身体が準備をしている状態です。そのため、基本的にどんどんお産をすすませる効果はありません。
「陣痛がきたかな」と思ったら、その間隔をはかります。「間隔」とは「痛みが始まってから次の痛みが始まるまで」で、その間隔が定期的だと陣痛です。前の痛みが終わって、次の痛みが始まるまでの間をはかる人がいますがこれは間違いです。
はじめてのお産の場合は陣痛間隔が10分、経産婦なら15分くらいになったら、病院に連絡します。ただし、破水したり、具合が悪くなった場合は間隔に関係なく病院に連絡しましょう。
陣痛が始まる前に少量の出血をすることがあります。それを「おしるし」と言いますが、これは子宮壁から卵膜がはがれるためにおこる出血です。
出産の準備が進んで子宮口が開いてくると、赤ちゃんを包んでいる袋である卵膜が子宮壁からはがれ、そこから少量の出血をすることがあります。
ただし、はがれたときに出血しない場合や、おしるしがなく陣痛が始まったり、おしるしがあっても陣痛の始まりが数日後ということもあります。
赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて羊水が出てくることを破水と言います。ちょろちょろと出てくる場合もありますし、勢いよく流れだす場合もあります。
子宮口全開大頃に破水することを適時破水と呼びますが、陣痛の前に破水することもあります。また、破水したら入院し、陣痛が起こるのを待つので、破水したらすぐにかかりつけの病院に連絡しましょう。
陣痛はないけれど破水した場合、必ずすぐに病院に連絡しましょう。病院に行くときは1人で運転するのを避け、家族に運転してもらうかタクシーで行きましょう。流れる感じがごく少量で破水かどうかの判断がつかないときも、病院に電話しましょう。
また、破水したときは子宮内感染を避けるため、お風呂に入ったり、シャワーをあびたりしてはいけません。さらに、トイレの温水洗浄便座も使用しないようにしましょう。
陣痛が始まってから子宮口が全開になるまでを、分娩第1期と言います。子宮口の開き具合によって「潜伏期」「加速期」「極期」「減速期」の段階をたどります。各段階の時間は、一応の目安はありますが、実際は人によりそれぞれ異なります。
その4つの段階のそれぞれの「陣痛の間隔」「痛みの程度」を見ていきましょう。
潜伏期は時間をかけて子宮口を柔らかく、開きやすくする段階です。「陣痛がきたかな」と思って時間をはかり、10分間隔になると陣痛の始まりです。
陣痛に伴い、時間をかけながら身体が出産の準備をしていきます。子宮口が2.5㎝程度に開くまでが潜伏期です。出産まではまだ時間があるので、痛みがあまり強くないうちにできることをしておきましょう。
子宮の収縮が規則的に10分間隔(1時間に6回以上)になります。この時点から分娩開始となり、入院です。
陣痛が始まり子宮口が2.5cmになるまでは、およそ9時間から20時間かかり、経産婦の場合は5時間から14時間以内です。進行度合いは個人差があるので、目安の時間よりかなり早い場合もあります。
陣痛には波があります。陣痛がきたときはゆっくり呼吸し、子宮が収縮していないときはできるだけリラックスしましょう。
陣痛がきたとは言え、痛みはまだ耐えられる程度で、妊婦さんは歩くことや食事もできますので、一番楽な姿勢を取りましょう。
今から体力勝負になるため食事ができるうちに食べたり、水分をとったりしてエネルギーを補給しておきましょう。また、陣痛の合間に眠れそうな場合はウトウトするのもよいでしょう。
なお病院へ連絡し、入院するために家を出るときは火の元や戸締りをしっかり確認することも必要です。
子宮口が2.5cmから4cmに徐々に開いていきます。陣痛もだんだん強くなり始め、赤ちゃんが徐々に下がり、骨盤の中に入ってきます。
陣痛の波がきたら、呼吸法などで痛みを和らげましょう。トイレに行きたい感覚があれば、我慢せずに行きましょう。お母さんの身体に尿や便がたまっていないほうが、赤ちゃんが下がりやすくなります。
陣痛の間隔は5~7分おきになります。発作の時間も今までは10秒~20秒だったのが、この段階では30秒~90秒となります。
この段階はおよそ2~3時間かかり、子宮口が4cm開くまで、初産では全分娩時間の2/3の時間を要し、経産婦でも3/4ほどの時間です。この段階は時間がかかるものだと理解して、痛みと痛みの間はリラックスするようにしましょう。
陣痛の強さも徐々に強くなっていきます。もし眠れるのであれば睡眠をとったり、音楽を聴いてリラックスを心がけましょう。
陣痛がきたときの痛みが強くなって、間隔が短くなってきても、その痛みと痛みの間には必ず痛くない時間があります。大切なのは、この痛くない時間にリラックスすることです。
緊張がずっと続くと体力を消耗します。痛みのない時間は必ずありますので、そのときには力を抜きましょう。
子宮口が4㎝から10㎝の全開大に向かって開いていく段階です。だんだんと痛みもピークにさしかかります。赤ちゃんの頭も下がってくるので、いきみたい感覚になることもあるでしょう。
子宮口が全開大になる前にいきんでしまうと子宮口がきれてしまうことがあるので、全開大までいきむのを我慢しなければなりません。
陣痛は3分間隔になってきます。この段階はおよそ1時間かかります。赤ちゃんの頭が下がってくるので、陣痛がきたタイミングでいきみたくなりますが、ここでいきんでしまうと産道がむくんだり、傷ついてしまう可能性もあります。
このようなリスクを避けるためにも、いきみ逃しをして頑張りましょう。
痛みはより強くなり、だんだんとピークに差しかかります。痛みも強くなりますし、いきみたくもなりますので、上手にいきみ逃しをしましょう。
肛門を押したり、肛門にテニスボールを当てて座ったり、呼吸法に意識を向けたり、腰や尾てい骨周辺をマッサージしたりしましょう。
子宮口が9cmから全開大の10cmになる段階です。分娩第1期のラストで、これを乗り越えれば分娩第2期の、子宮口全開~赤ちゃんが出てくる段階になります。
子宮口10cmまで、あと少しです。痛みもより強くなりますが、もう少し頑張れば赤ちゃんに会えます。
陣痛の間隔は1~2分おきとなります。減速期にかかる時間はおよそ1時間です。この段階で破水することも多いです。
「もうすぐ赤ちゃんに会える」「赤ちゃんも頑張っている」と思って、この段階を乗り切りましょう。痛いときに呼吸をとめてしまうと赤ちゃんが苦しくなってしまいます。陣痛がきている時も意識的に呼吸するようにしましょう。
痛みはピークです。痛みの範囲はおへその下から腰全体が痛くなり、外陰部にかけても強く痛みます。
ひたすらうなる人、呼吸法で耐える人、声を出して叫ぶ人など、陣痛のピークのときの行動はさまざまです。中には「旦那を叩いた」という人もいるようです。
痛みはピークですが、ここまでくると長い出産にも終わりが見えてきます。あと少しです。
「陣痛きたかも」と思ったときに、何をすればよいのでしょうか。まず慌てることなく落ち着いて対応しましょう。陣痛がきたときにすることというリストを作っておくと安心です。
では「陣痛きたとき、何をしたらいいの」という方のために、するべきこと3つ「病院に連絡する」「食べられるときに食べておく」「病院内を歩く」を紹介します。
お腹の痛さが規則的になり、これは陣痛だと思ったら、まず病院に連絡しましょう。そして家族やパートナー、もし上の子がいる場合は事前に決めておいた上の子の預け先などにも連絡します。
破水していなければシャワーをあびるのも大丈夫ですので、化粧を落とし、コンタクトも外しておきましょう。なお、服装は楽なスタイルで大丈夫です。病院に着くと、病院が用意したお産用の服に着替えます。
まだこの段階では痛みがそれほどでもないので、食べられるうちに何か食べておきましょう。痛みが強くなると食べられなくなります。体力を持たせるためにも、何か口に入れてエネルギーを補給しておきましょう。
また、陣痛の合間に食べられそうな栄養補給ゼリーやチョコレート、水分補給のためのお水やお茶などを病院に持っていくのもおすすめです。
病院に着いて、診察を受けてもまだ子宮口1cmや子宮口2cmの場合もあります。それは、妊婦さんにより個人差があるからです。
そんなときは出産をスムーズに進めるため、軽い運動をしましょう。病院内をウォーキングしたり、階段があるなら階段昇降したりします。体を動かしたほうが子宮の血流が促進され、陣痛が強くなります。
こちらの記事では「陣痛とは」「陣痛を判断する3つの方法」「陣痛開始からの陣痛の状態4つ」「陣痛がきたらすべき3つの事」をお伝えしました。
初めてだと余計に陣痛は怖く感じるかもしれません。しかし、お腹の中の赤ちゃんも出てくるために頑張っているのです。また、陣痛がなければ赤ちゃんは生まれてこれません。陣痛は赤ちゃんに会うための大切なエネルギーなのです。
出産準備をすると同時に、陣痛の仕組みや進み方を理解して、心の準備もしておきましょう。妊娠したということは、あなた自身に産む力が備わっているということです。自分の力を信じて、赤ちゃんに会えるのを楽しみに陣痛を乗り切りましょう。