今回は、妊婦さんの正しい炭水化物の摂り方について紹介していきます。
「炭水化物ダイエット」「糖質制限ダイエット」といった言葉を耳にしたことはないでしょうか。低糖質を売りにした商品はスーパーやコンビニの棚でよく目にしますし、実践したことがあるという方もいるかもしれません。
ダイエットでは悪者のように扱われがちな炭水化物ですが、妊婦さんはお腹の赤ちゃんの成長や母体の健康のためにも、炭水化物もきちんと摂取する必要があります。
妊婦さんは、妊娠していないときに比べ、必要なエネルギーが増加します。エネルギーの元となるのが、炭水化物、脂質、たんぱく質の三大栄養素です。そのうち、ごはんやパンなどの炭水化物に多く含まれる糖質は、非常によいエネルギー源になります。
糖質は身体の中で消化・吸収されブドウ糖になります。身体の中には、脳や神経組織、赤血球など、ブドウ糖しかエネルギー源にできない部分があります。
脳の活動を維持するためにはたくさんのブドウ糖が必要ですから、妊婦さんに限らず炭水化物を摂取することはとても重要なのです。
そもそも炭水化物とは、糖質と食物繊維を合わせたもののことを指します。そのうちの糖質は、体内で消化・吸収されエネルギー源となります。炭水化物と糖質は同一のものではありませんが、同じような意味合いを持つ言葉として使用されます。
糖質は、体内で消化・吸収されてブドウ糖となり、全身に運ばれて身体のエネルギーとなります。余ったブドウ糖は脂肪として身体に蓄積され、これが太る原因のひとつとなるのです。
ですから、炭水化物はとりすぎもよくありません。適切な量を摂ることが大切です。ここからは、食品に含まれる糖質について紹介します。
糖質は、ご飯やパン、麺類等の炭水化物に多く含まれています。例えばご飯茶碗7~8分目、およそ100gに含まれる糖質は37gです。6枚切りの食パン1枚、およそ60gに含まれる糖質は26.6gです。
また、果物にも「果糖」という糖質が含まれています。例えばりんご1個、およそ300gには33.4gの糖質が含まれています。
1日に摂取する糖質の量を考える際、炭水化物以外の食品に含まれる糖質の量も忘れないようにしましょう。
ケーキやクッキーなどのお菓子には多くの糖質が含まれています。また、甘いジュースやサイダーなどの飲料には大量に砂糖が含まれているため、血糖の急上昇を招きます。妊婦さんは特に気を付けましょう。
とは言え、食べたいのに我慢しすぎることはストレスをためることになります。妊婦さんの場合、おやつは1日の栄養素を補えるようなものを選ぶとよいでしょう。
ここからは、妊婦さんの正しい炭水化物の摂り方について紹介していきます。ポイントを押さえて、正しく炭水化物を摂取していきましょう。
妊娠すると、胎盤から出るホルモンの働きにより血糖を下げる働きのあるインスリンの分泌が抑制されます。そのため、妊婦さんは妊娠していないときに比べて血糖値が下がりにくい身体になっています。そのため、食べ過ぎないことが大切です。
糖質を多く含む食事を食べ過ぎると、血糖が急激に上がり、下がりにくいことで糖尿病などの健康トラブルを引き起こす原因となります。
炭水化物だけではなく、他の三大栄養素である脂肪やたんぱく質と同時に摂ることが大切です。具体的には、炭水化物ばかりではなく、野菜やお肉、魚などもバランスよく食べるということです。
脂質やたんぱく質は糖質に比べるとゆっくり消化・吸収されます。また野菜に含まれる食物繊維は血糖値の上昇をゆるやかにする効果もあります。
脂質は、油脂や脂肪の多い肉に多く含まれます。その他、ナッツ類や乳製品にも多く含まれています。
たんぱく質は、肉・魚・卵等の動物性食品に多く含まれています。肉では、鶏肉のささ身や豚ロース等の部位です。その他、豆・穀物等の植物性食品にもたんぱく質が多く含まれています。
体重増加や急な血糖値の上昇を恐れて食べる量自体を減らすことは、お母さんの健康やお腹の赤ちゃんの発育に悪い影響があります。
そこで、こまめに食べることをおすすめします。1日の総カロリーは維持しながら、1回あたりの食事量を減らして回数を増やすのです。こうすることで、血糖値の上昇を抑えることができます。
「お腹がすいたらお腹いっぱいになるまで食べる」はやめましょう。
就寝前に食べないことも大切です。夜遅くに食事を摂ると、朝まで血糖値が高いままになってしまいます。また、太る原因にもなります。できるだけ就寝前に食べることは避けたいところです。
どうしても遅い時間にしか食べられない場合は、夕方におにぎりなどの炭水化物を食べ、遅い時間には野菜や主菜のみを食べるようにしましょう。
炭水化物の摂取量を減らしすぎないことも大切です。減らしすぎてしまうと、赤ちゃんに栄養が行き届かず、発育が遅れてしまう可能性があります。
身体を維持するためにはエネルギーが必要ですが、糖質が足りないと、脂質やたんぱく質をエネルギー源とすることになります。脂質やたんぱく質は糖質と比べると消化・吸収の効率が良くないので、身体への負担が増えてしまうのです。
炭水化物は身体に必要な栄養素ですが、多すぎても少なすぎてもいけません。必要量を適切に摂取することが大切です。
必要摂取カロリーは人によって異なります。そこで、妊婦さんが炭水化物の摂取カロリーを考える際に目安となるポイントを紹介します。
妊婦さんは、妊娠していないときに比べて必要なエネルギーが増加します。普段の必要摂取エネルギーに付加する目安は、妊娠初期(14週未満)は+50kcal、中期(14~28週未満)は+250kcal、後期(28週以降)は+450kcalといわれています。
ベースとなる具体的な必要エネルギーは、本人の年齢と身体活動レベルによって多少異なりますが、2000kcal前後です。妊娠の経過によって必要エネルギーは増加していきますので、十分な量の食事をとりましょう。
適切な量の炭水化物を摂取するためには、自分のBMI(Body Mass Index)の値もひとつの目安となります。
BMIの計算方法は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)です。BMIが18.5未満を「やせ」、18.5以上25.0未満を「普通」、25.0以上を「肥満」に分類します。BMIの値によっても必要な摂取量は異なるので、自分のBMIを把握することが大切です。
妊婦さんの炭水化物の摂り方についてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。お腹の赤ちゃんだけではなく、お母さんの身体を守るためにも、適切に栄養を摂取する必要があります。
ダイエットでは何かと目の敵にされがちな糖質ですが、身体にとって重要なエネルギー源でもあります。この記事を参考に正しく炭水化物を摂取し、健康な妊娠生活を送りましょう。