「臨月にスクワットをすると陣痛促進される」というジンクスは有名ですが、実は医学的な根拠はないのです。
早く赤ちゃんに会いたいママさんのジンクスには、焼き肉を食べる、オロナミンCを飲む、トイレ掃除をする、などたくさんあります。
しかし自宅療法で医学的に陣痛促進に効果があると考えられているのは「乳頭マッサージ」のみです。乳頭マッサージには、子宮を収縮させる作用があるので、実際に行う際には、37週未満でお腹が張る場合や出血がある時、医師から安静を指示されている場合には控えましょう。
陣痛促進に効果があるという「乳頭マッサージの方法」についてご紹介していきます。
乳頭マッサージは、左右の乳頭で、以下の1~3の手順を片方2~3分を目安に行いましょう。
1.親指・人差し指・中指を乳輪と乳房の間に当て、左右数回ずつ乳頭を軽くつまみ出す。
2.親指・人差し指・中指で、乳頭と乳輪部を少しずつ角度や位置を変えながらゆっくりと圧迫する。
3.乳頭をさまざまな角度から縦横にもみずらしたり、ねじったりする。
文章を読んで、実際の手技を正しく行うのは少し難しいと思うので、方法はかかりつけの産婦人科で助産師に聞いてみるのがよいでしょう。
陣痛促進の効果がないのならば、スクワットをしても意味がないのでしょうか。
実はスクワットの目的は、陣痛促進ではなく、安全なお産の準備をするという点にあります。産前にしておくとよい効果があるため、産婦人科の先生に勧められた、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
スクワットにどのような利点があるのか、また注意しなければいけないところなど、具体的にみていきましょう。
臨月、正期産、早産、過期産という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「臨月」は出産予定日の1ヶ月前からの妊娠36週0日~39週6日の時期のことで、「正期産」は赤ちゃんの身体の発育が理想的な妊娠37週0日〜41週6日に出産することです。
正期産より早い22週0日~36週6日は「早産」、遅い42週0日以降は「過期産」で、どちらも好ましい状態とは言えません。
また妊婦がするスクワットを、以下「妊婦スクワット」と表記します。
妊婦スクワットの目的は陣痛促進よりも、安全なお産のためであることは述べました。
それでは具体的に安全なお産のために妊婦スクワットはどのような効果があるのでしょうか。妊婦スクワットの目的は「お産のための体力づくり」と、「安産」のため、そして「尿漏れ防止」にも効果があるのです。詳しくみていきましょう。
臨月を迎えた大きなお腹を支え、お産の長丁場にも耐え抜くにはなんといっても体力が必要です。
妊婦の運動は、妊娠中に太りがちな身体を引き締め、体力や持久力をつけるとともに、運動することでストレスの発散にもなります。
お腹が大きくなる妊娠後期には、転倒などの危険も伴う屋外より、屋内での運動の方がより安全です。なかでも部屋で気軽にでき、有酸素運動で下半身を鍛える妊婦スクワットは、おススメの運動と言えます。
妊婦スクワットで骨盤底筋群という筋肉が鍛えられ、スムーズなお産につながります。また、しゃがむ姿勢は骨盤が開くので、赤ちゃんの頭が骨盤内に入りやすくなる効果も期待できます。
骨盤底筋群はいきむときに大切な骨盤の底にある筋肉ですが、ここが鍛えられしなやかに伸びると、赤ちゃんがスムーズにおりてきてくれるでしょう。
またスクワットの体制は骨盤を開きやすく、骨盤周りの筋肉も柔らかくしてくれます。出産時に骨盤がしっかり開くと、赤ちゃんの頭が降りてきて安産となるのです。
妊婦スクワットには、産後起きやすい尿漏れ防止にも役立つ効果があります。
出産により膣周辺にダメージが加わったり、産後ホルモンバランスの変化で筋肉や靭帯がゆるみやすくなり、骨盤底筋群が弱くなったりすることで、尿漏れが起きやすくなるのです。
いきむのに大切な骨盤底筋群は排便・排尿の機能も担っていますので、妊婦スクワットによりこの骨盤底筋群を鍛えれば、尿漏れを防ぐことができます。
おススメの妊婦スクワットですが、スクワットをする際に注意してほしい点が7つあります。
妊婦スクワットは安全なお産のための準備には最適で、尿漏れ防止にもなる妊娠中にはお勧めの運動です。
しかし上記でも述べましたが、妊婦スクワットは子宮の収縮を促す作用もあり、大切な赤ちゃんを守るために気をつけるべき点も、これから詳しくみていきたいと思います。
妊婦スクワットの回数は、控えめにするよう心がけましょう。
妊婦スクワットの目的は本格的な筋トレとは違いますので、無理なく楽しんで体力づくりできるくらいの回数にとどめましょう。妊娠前からスクワットをしていた方なら、普段の7割ペース以下を目安に。
しんどさを感じたらその時が止め時のサインです。決して無理をして、切迫早産などの危険に赤ちゃんをさらさないよう気をつけましょう。
妊婦スクワット中に転倒しないよう、手すりや椅子などにつかまってスクワットをしましょう。
臨月になるとお腹も一段と大きくなりますから、足元がよく見えなくなります。また大きなお腹を支える足は、スクワットの不安定なポーズにバランスを崩して転倒しやすくなります。
普段からスクワットに慣れていない人は、さらに転倒の危険が増します。壁に頭をつけたり、手すりや椅子・台などを掴んだ状態でスクワットをしましょう。
妊婦スクワットを始める前に、不安がある場合は産婦人科の主治医に相談しましょう。
妊婦さんの状態は、それぞれ個人によって違いますし、その時の体調にも影響を受けます。場合によっては主治医から運動を禁じられる場合もあります。
スクワットは種類によってはかなりハードな筋トレになってしまう場合があります。妊娠中は負荷の高い運動はNGですので、動きの大きいタイプのスクワットは避けるよう気をつけましょう。
安産の準備のためのスクワットを始めるなら、安定期といわれる妊娠16週以降に、体調をみながら行うのがよいでしょう。
お腹が張る、安静の指示が出ている場合には、赤ちゃんの体が十分に発育し、外の環境にも適応できいつ生まれてもよい状態の「正産期」がベストです。
「臨月」は、出産日のちょうど1か月前である36週0日~39週6日までを指し、「正産期」はその1週間後から始まり、37週0日~41週6日を指します。
無理してスクワットを始めると切迫早産の危険があるので、状態によっては正産期まで待つ方がよいでしょう。
スクワット中に破水したら、ただちに病院に連絡しましょう。
陣痛がくる前に破水することもあります。破水すると子宮内に雑菌が入り込み、赤ちゃんが感染をおこす可能性があるため、すぐに病院に連絡しましょう。その際には入浴は控え、夜用ナプキンか清潔なタオルなどをあて横になり、病院に急ぎましょう。
入院の荷物は妊娠後期に入ったら整えておきましょう。病院によって持ち物は違うので、不明な場合は確認しておきましょう。玄関に置いておくなど、家族もわかるようにしておくのがよいでしょう。
スクワット中にお腹が張り、定期的な痛みが来たら、病院に連絡し指示を仰ぎましょう。
「陣痛」とは、出産時赤ちゃんが生まれるために繰り返される子宮の収縮に伴う痛みのことです。お腹が張ったり不規則な痛みが始まる「前駆陣痛」から、だんだん定期的な痛みの波が繰り返される「本陣痛」に変わります。
痛みの間隔が10分間隔(経産婦は15分間隔)になったら病院に連絡しましょう。
スクワット中、多量の出血や塊状の出血があった時は、すぐに病院に連絡してください。
出産が間近になると、子宮口が開くときに、卵膜が子宮壁からはがれるとともに出血が出ることがあります。おりもののなかに少量出血が混じる状態で、「おしるし」と呼ばれます。
おしるしの場合は、慌てずに陣痛や破水を待ちましょう。しかし多量または塊状の出血は、赤ちゃんの状態が危険な場合がありますので、即病院に連絡しましょう。
妊婦スクワットの理想的なやり方をご紹介します。
机などを掴むか、壁に背中をつけて行ってください。
1.両足を肩幅よりやや広めに、つま先をやや外側に向け立つ
2.なるべく背筋をまっすぐにし、息を吐きながらゆっくりと上体を下ろしていく
3.無理のないところで一呼吸し、次に息を吸いながらゆっくりと元の位置まで戻る
5回~10回を1セットとし、1日に1~5セットを行いましょう。正しい姿勢で、無理のない範囲で続けましょう。
妊婦スクワット以外でおススメの運動は、ウォーキングです。
酸素を取り入れ、エネルギーに変える有酸素運動は、お母さんにとっても赤ちゃんにとってもよい運動です。
有酸素運動で、安全で妊婦さんにお勧めなのがマタニティーウォーキングです。この運動にも陣痛促進の効果はありませんが、無理なく、妊婦さんの体調に合わせて続けられる運動です。この運動もお腹が張りやすかったり、医師から安静の指示が出ている時には控えるようにしましょう。
妊婦スクワットには医学的な陣痛促進の効果はありませんが、安全なお産を目指すことができます。
陣痛促進の効果はなくとも、妊婦スクワットには、出産に向けた体力づくり、安産の準備、産後の尿漏れ防止まで、たくさんの効果が期待できます。ただし破水や多量の出血や痛みのある時などはすぐに病院に連絡を取りましょう。
無理のない安全で正しいスクワットをすることによって、スムーズなお産を目指しましょう。