妊娠中の食生活は、赤ちゃんの発育に直接関係してくるので、これまで以上に意識をする人が多いのではないでしょうか。肥満や痩せすぎは、赤ちゃんの発育や出産において問題視されるので、医師から指摘されたことのある人も少なくないでしょう。
一般的に肥満は難産になりやすい、痩せすぎは必要な栄養が取れずに低体重の赤ちゃんが生まれてしまう、と言われています。妊娠時には、必要な栄養素を適量摂取することが大切です。
妊婦に必要な栄養素はいくつかあり、それを多すぎず、少なすぎず、適量を摂取することが大切です。また、妊娠週数によって、必要な量は変わってきます。つわりなどで、うまく摂取できない人もいるでしょう。
ここでは、妊婦に必要な栄養素を6つ紹介します。ここで紹介された量を毎日すべて摂取するのは難しい場合もありますが、できるだけ意識して食生活を見直しましょう。
たんぱく質は、赤ちゃんの筋肉や血液を作るものなので、身体の成長にとても重要な役割を担っています。女性は1日約50gのたんぱく質が必要です。妊娠初期は付加量なしですが、妊娠中期は55g、妊娠後期は75g必要です。
比較的取り入れやすい食材が多いですが、できるだけ偏った食品からの摂取にならないように注意が必要です。
たんぱく質は、肉・魚・大豆・卵・乳製品などから多く摂取することができます。メイン料理に欠かせない食材ばかりなので、比較的取り入れやすいでしょう。
鶏卵や乳製品を控えることで、生まれてくる子どもがアレルギー疾患にかかりにくくなるということはありません。よって、肉ばかり、魚ばかり、などにならないように、これらの食品をバランスよく摂ることが重要です。
ビタミンB群は、種類によってさまざまな役割がありますが、糖質・タンパク質・脂質の代謝を促す働きをしています。つまりビタミンB群を摂取することで、3大栄養素を脂肪に変えず効率よく使い切ることができます。
妊婦には1日当たりビタミンB1は1.3㎎、ビタミンB2は1.5㎎、ビタミンB6は1.4㎎、ビタミンB12は2.8μgが必要です。
特にビタミンB6はつわりに効くとも言われています。適量を摂取することでつわりが和らぐこともあります。
ビタミンBの種類によって効果的な食品はさまざまですが、その中でも豚肉、レバー、魚介類は共通してビタミンBを摂ることができる食品です。
ビタミンB6については、つわりに効くとはいえ、つわり中にこれらの食材を摂るのは難しい場合もあるでしょう。ビタミンB6はバナナに多く含まれています。バナナはエネルギー源にもなるのでつわり中には大変便利な食材です。
妊婦と言えば葉酸、とCMでも言われているくらい、葉酸は妊娠中に必要な栄養素としては一番有名です。葉酸は、赤ちゃんの成長はもちろん、赤ちゃんの二分脊椎などの「神経管閉鎖障害」のリスクを減らすことができる働きがあります。妊娠中だけではなく、可能なら妊活中からの摂取が効果的です。
妊娠中の葉酸の必要摂取量は、1日当たり480μgです。非妊娠時には240μgなので、倍の量が必要となります。
葉酸は、ほうれん草、モロヘイヤ、アスパラガス、ブロッコリー、枝豆、レバー、いちごなどに多く含まれていますが、非妊娠時よりも倍の量が必要なので、食事だけで必要摂取量を摂るのは難しいことも多いです。
葉酸はサプリメントで1日当たり400μg摂取することが厚生労働省からも推奨されています。摂取量を守ってサプリメントを取り入れることで、赤ちゃんの先天異常のリスクを減らすことを目的としています。
しかし、妊娠後期に葉酸を積極的に摂取することは、生まれてきた子どもが小児喘息になったり、湿疹ができたりする危険性が高まると考えられています。よって、サプリメントとして葉酸をとるのは妊娠初期までにして、その後は食事から摂取するのがよいでしょう。
亜鉛は、赤ちゃんが繰り返し行っている細胞分裂を促して成長を助ける働きをしており、亜鉛が不足すれば赤ちゃんが低体重・低身長になるリスクが高くなります。また、母乳に含まれる亜鉛も重要な役割を持っているため、出産後も必要な栄養素です。
妊婦の亜鉛の必要摂取量は1日当たり10mgです。ちなみに、授乳時は11mgなので、生まれてからの方が必要量が多いです。
亜鉛は魚介類に多く含まれていますが、その中でもかきやうなぎは含有量が多いです。肉類や藻類にも含まれています。
ただし、かきやうなぎを頻繁に食べる家庭は少ないでしょうから、これも葉酸同様、サプリメントで摂取することも可能です。葉酸のサプリメントに一緒に含まれているものもあり、それであればサプリメント1種類だけの摂取で足ります。
母体は妊娠中、赤ちゃんの発育のために、胎盤を通して赤ちゃんに多くの鉄分を供給するので、鉄分不足、すなわち貧血になりやすいです。
妊娠貧血は、赤ちゃんの低出生体重の一因ともいわれており、出産時の異常出血とも関連性があります。妊婦健診に貧血の検査が含まれるのもそのためです。
赤ちゃんが大きくなればなるほど必要な鉄分の量は増え、妊娠中期・後期では1日当たり21~21.5mgの鉄分が必要だと言われています。非妊娠時の倍以上の鉄分が必要なので、意識して食事に鉄分を取り入れなければなりません。
鉄分を多く含む食品には、魚、鶏肉、緑の葉物野菜(ほうれん草など)、豆類、レバー、赤肉などがあります。
ですが、必要とされている量の鉄分を毎日の食事で摂取するのは難しい人も多いでしょう。妊婦検診の血液検査で貧血と診断された場合は錠剤が出ることもありますし、葉酸同様積極的にサプリメントを摂取することで貧血を防ぐことができます。
カルシウムは、妊娠中赤ちゃんの骨や歯を形成するのに必要です。また、このようにして赤ちゃんに多くのカルシウムが使われてしまうので、母体がカルシウム不足になってしまいがちです。
妊娠中に必要なカルシウム量は、非妊娠時と変わらず1日当たり650mgですが、赤ちゃんに毎日150mgずつ供給されるので、多めに摂取するのがいいでしょう。
カルシウムは牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品のほかに、緑の葉物野菜(小松菜など)や小魚にも多く含まれています。牛乳1杯(200㎖)で大体220mgくらいのカルシウム量なので、必要量を摂るには意識しておかなければ難しいでしょう。
毎日コツコツ続けて摂取できるように、紹介した食品を上手く組み合わせて摂取していきましょう。
妊娠したということは、母体が口にする栄養素が赤ちゃんに影響を与えるということになるので、食生活を見直したり改善する必要があります。妊娠中に不足しがちな栄養素を理解して、無理なく続けましょう。
ここでは、妊娠中陥ってしまいがちだがぜひ気を付けてほしい食生活を紹介します。妊娠中の人は今の自分の食生活と照らし合わせてみてください。
妊娠中はつわりなどでバランスのよい食事がとれなかったり、食欲が増大しておやつを食べてしまったりする人も少なくありません。適度であれば特に問題はないのですが、塩分・糖分の摂りすぎは母体・赤ちゃん双方にリスクがありますので、注意しましょう。
具体的には、塩分や糖分の摂りすぎによって妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠に伴う合併症の発症リスクがあがります。また体重が増えすぎることによって難産につながってしまいます。
妊婦に必要な栄養素については先に説明しましたが、ここでは、摂取量に注意が必要なものを説明します。
ここでは、妊娠中に摂ってはいけない、というわけではなく、摂取量に留意して摂りすぎを防ぐ必要があるものをいくつか紹介します。妊娠したら酒やたばこをやめる必要があるのは誰でも知っているでしょうが、それ以外にも注意すべき食べ物がありますので、頭に入れて、普段の食事でもできるだけ意識しておきましょう。
カフェインの過剰摂取により、低出生体重児が生まれたり、流産や早産のリスクが高まる、と言われているので、カフェインの摂取量には注意が必要です。
妊娠中のカフェインの摂取量は1日当たり300mg未満とすることが勧められています。コーヒー1杯に含まれるカフェインの量は100~150mgですので、1日コーヒー1杯であれば特に問題ありません。
ただし、カフェインはコーヒー以外にも含まれているので注意しましょう。
魚には妊娠中に必要なたんぱく質やカルシウムが豊富に含まれているため、積極的に摂取する必要がある食材ですが、大きな魚に多く含まれている水銀が赤ちゃんに影響を及ぼすと言われているので注意が必要です。
例えば、キンメダイやメカジキ、本マグロなどは、週に80g程度に留めるなど、魚の種類によって摂取量をコントロールする必要があります。
妊娠中は、母体は抵抗力が低下しているため、寄生虫や菌への感染リスクが高まります。食中毒や消化不良を防ぐためにも、妊娠中は生ものの摂取は控えましょう。
また、生肉や生魚に付着していることのあるトキソプラズマという寄生虫に感染すると、赤ちゃんに先天的な障害をもたらす危険性もありますトキソプラズマは、主に生肉の摂取で感染します。食肉はよく加熱し、生肉は食べないようにしましょう。
また、リステリア感染にも注意が必要です。リステリアに感染すると、妊婦は軽いかぜ様の症状ですみますが、赤ちゃんの敗血症や流産・死産の原因になります。加熱していないナチュラルチーズ・生ハム・殺菌されていない牛乳は摂取を避けましょう。また、生野菜はよく洗うようにしましょう。
ビタミンは妊娠しているかいないかに関わらず重要な栄養素ですが、妊娠3か月までのビタミンAの過剰摂取は、赤ちゃんの赤ちゃんの先天奇形のリスクを高めるので注意が必要です。
妊娠中のビタミンAの耐容上限量は1日当たり2700㎍ですが、鶏レバーは焼き鳥1本だけでそれを超えてしまいます。ですが、たった1日超えただけでそこまで問題視する必要はなく、週単位で見て摂りすぎないように調整しましょう。
妊婦の食事は、赤ちゃんの発育に直接影響するものもあるので、調べれば調べるほど不安になってしまいます。ですが、それをすべて意識して食事をするのは制限が多く大変です。
もちろん、酒やたばこなど明らかに注意が必要なものは摂取してはいけませんが、神経質になりすぎるとストレスが溜まったり、不安感だけが強くなってしまうので、神経質になりすぎずに、バランスの整った食事を心がけるといいでしょう。