【専門家監修】妊娠時はカフェイン摂取を控える理由4つ|摂取許容量の例

カフェインとは

カフェインはコーヒーの中から見つかった天然の有機化合物で、人などに対して興奮作用を与えるほか、頭痛薬や風邪薬の成分として薬品にも使用されています。


カフェインは適度に摂取すると気分がリフレッシュできたり、眠気を防止したり、集中力アップなどのメリットがありますが、取り過ぎると不安や不眠などのデメリットもあります。カフェイン摂取の影響を受けやすい妊娠時は特に注意が必要です。


ここからは、妊娠中のカフェインについて解説します。

妊娠時にカフェインは摂取できる?

妊娠時にカフェインは絶対ダメではありませんが、できるだけ控えた方がベストです。摂取したカフェインが胎盤を通じて、赤ちゃんにも与えられるからです。


赤ちゃんは大人よりもカフェインの代謝能力が未熟なので、大人よりもカフェインの影響を受けやすいといわれています。大切な赤ちゃんにカフェインの害が及ばないためにも、妊娠時のカフェイン摂取には注意が必要です。

妊娠時はカフェイン摂取を控える理由4つ

妊娠したらカフェインを摂ってはいけない、母体にも胎児にも良くないと耳にしたことがある人も多いでしょう。


しかしこれは、妊娠中にカフェインを1㎎も摂ってはいけないという意味ではなく、カフェインを控える必要があるということです。


ここからは、妊娠時にカフェインを控えなければならない理由を4つ解説します。

妊娠時はカフェイン摂取を控える理由1:流産のリスクが高まる

カフェインの過剰摂取では一般的なデメリット(心拍数の増加・神経の興奮・不安・震え・不眠・下痢・嘔吐など)も存在します。また、過剰摂取により流産への影響があるといわれています。


カフェインは胎盤を通して赤ちゃんへ与えられ、その代謝能力の未熟さゆえ体内に蓄積されてしまう可能性があります。


妊娠初期は特にカフェインの影響を受けやすいといわれているので、そば茶や麦茶などのノンカフェインで代用しましょう。

妊娠時はカフェイン摂取を控える理由2:胎児の発育が悪くなる

妊婦がカフェインを過剰摂取することで胎児の発育が悪くなり、低体重児として生まれる可能性があります。摂取したカフェインの影響で胎盤の血流量が減少するというデータがあります。


マグカップ1杯だから、缶ジュース1杯だからという「量」ではなく、含まれているカフェインが高濃度の場合もあるので注意しましょう。体格や体重によってもカフェインの許容量は違ってきますが、カフェインは1日300㎎以下なら問題ないといわれています。コップ1~2杯程度なら問題ありません。

妊娠時はカフェイン摂取を控える理由3:睡眠不足になる可能性

朝、起きぬけのコーヒーなどで目を覚ます人は多いでしょう。妊娠中の体調は変動しやすいので、いつも以上にカフェインの影響を受けやすくなる可能性があります。


それでなくても妊娠中はホルモンバランスの変化やつわり、精神的な不安感、胎動やこむら返りなどで全周期を通して睡眠不足になりがちです。カフェインの作用で睡眠不足に拍車をかけてしまうことの無いように気を付けましょう。

妊娠時はカフェイン摂取を控える理由4:貧血になりやすくなる

妊娠中の体は血液の総量が30~50%増加します。特に、血液内の血漿成分が著しく増加するため、生理的に貧血になるのです。カフェインにはミネラルの吸収を妨げる作用があり、鉄や亜鉛の吸収が妨げられ鉄欠乏性貧血になりやすくなるといわれています。


カフェインで貧血になると体が酸素不足になり、疲労感や脱力感・息切れを感じやすくなります。出産時の出血量の増加や微弱陣痛が起こりやすくなるともいわれています。鉄分を摂取する際には、鉄分の吸収を助けるたんぱく質やビタミンCを一緒に食べると効果的です。

カフェインが多く含まれている食品

カフェインは飲み物以外にも食品に含まれている場合があります。


カフェイン量がとくに多いのはブラックチョコレートで、100g中に約120mgのカフェインが含まれているようです。製品によって含有量は違ってきますが、ミルクチョコレートや眠気を覚ますガムなどにも含まれるので注意しましょう。

カフェインが多く含まれている飲み物

カフェインが多く含まれている飲み物と言えば、コーヒーが真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、玉露・エナジードリンク・コーヒー・紅茶・ウーロン茶・ほうじ茶の順でカフェインが多く含まれています。


茶道教室などに通っている方は抹茶もカフェインが高めですので、妊娠がわかって心配な場合は飲む量を控えるか、お休みするなどしてカフェインを摂り過ぎないように気を付けましょう。

妊婦のカフェイン摂取許容量の例3つ

妊婦はカフェインの影響を強く受けやすくリスクがあるため、WHO(世界保健機構)・FSA(英国食品基準庁)・HC(カナダ保健省)では、妊婦のカフェイン摂取許容量を設置しています。


コーヒーを基準にそれぞれの許容量はどのくらいかをチェックしておきましょう。なお、カフェインを一生涯摂取し続けでも健康に被害が出ないと推定される摂取許容量については、個人差が大きいため日本でも外国でも設定されていません。

妊婦のカフェイン摂取許容量の例1:WHO(世界保健機構)による呼びかけ

WHO(世界保健機構)は、カフェインが胎児に与える影響はまだ確定してないものの、妊婦がコーヒーを摂取するなら1日3~4杯までにすべきとしています『healthy Eating during Pregnancy and Breastfeeding (BookletFor Mothers)2001より』


紅茶・ココア・コーラ飲料には、ほぼ同程度のカフェインが含まれ、コーヒーにはこれらの約2倍のカフェインが含まれているといわれています。

妊婦のカフェイン摂取許容量の例2:英国食品基準庁による許容摂取量

英国食品基準庁(FSA)では、妊婦がカフェインを過剰摂取すると、出生児の低体重・将来の健康リスクが高まる可能性があるとし、妊婦は1日あたりのカフェイン摂取量を200mg(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するように求めています。


なお、カフェインが濃い場合は自然流産を引き起こす可能性あることを示す証拠があるとしています。

妊婦のカフェイン摂取許容量の例3:カナダ保健省による許容摂取量

カナダ保険省(HC)では、カフェインの過剰摂取は不眠症・頭痛・イライラ感・脱水症・緊張感を引き起こすため、子どもや妊婦、授乳中の女性は注意するよう喚起を行いました。
  


健康な成人は1日400㎎(マグカップ約3杯)までOKですが、カフェインの影響を受けやすい妊婦や妊娠予定の女性は1日300㎎(マグカップで約2杯)までとしています。

カフェインの主な作用4つ

妊娠時に過剰摂取するとデメリットが大きく、摂取を控えなければならないのがカフェインですが、適量を取ればメリット面もあります。


ここからは、カフェインの主な作用を4つに絞って解説します。ぜひ参考にしてみてください。

カフェインの主な作用1:気道を拡張する

コーヒーなどでカフェインを摂ると、気道が広がって咳の症状を緩和でき、血管の収縮作用と気管支拡張作用があると言われています。炎症を鎮めて気管支の緊張を和らげて痰が出やすくなる作用も期待できるといわれています。


また、カフェインを摂取することで交感神経が興奮し、喘息発作の予防につながるとも考えられます。いずれも摂り過ぎては逆効果なので、適量を守って摂取することが大切です。


また、喘息の症状悪化は命に関わることもあるため、医師の診断をうけたうえで指示に従いましょう。

カフェインの主な作用2:利尿作用がある

カフェインには腎臓の血管を拡張させて、ナトリウムと水分を体内から排出しようとする働きがあります。腎臓内で血液をろ過する量が増えることで、尿の量や回数が増える利尿作用が起こるのです。


尿には老廃物やいらない水分が含まれているため、排出することで体内の水分循環が良くなります。健康や美容のメリットにつながり、むくみの改善も期待できるでしょう。

カフェインの主な作用3:疲労感を軽減する

カフェインは脳内にあるアデノシン受容体と呼ばれる「眠りを誘う受容体」と結合して、アデノシンの働きを抑えて脳を覚醒させる働きがあります。脳が興奮状態になるため、疲労を感じにくくなるといわれています。


エネルギーを消費して代謝を上げさせ、集中力も高まるので、適度に摂取すれば眠気覚ましとしてカフェインを使うことができるでしょう。

カフェインの主な作用4:消化を助ける


カフェインを適度に摂ることで、脳の迷走神経を刺激して胃酸の分泌が活発になると消化が促進されます。ただし、空腹時にブラックコーヒーなどでカフェインを摂取すると胃酸が出過ぎて胃壁が荒れるおそれがあります。


食後に適量を飲むか、ミルクなどを入れて飲むようにしましょう。

妊娠中はカフェインの摂取に気をつけよう

妊娠中にカフェイン摂取を控えなければならない理由をしっかりと把握して、母子ともに健康な妊婦生活と産後の授乳生活を目指しましょう。


コーヒーやエナジードリンク、甘いものがつい食べたくなってしまいチョコレートなどを食べてしまいがちですが、身の回りにはカフェインが含まれた飲み物や食べ物が溢れています。


カフェインを摂取しすぎないように注意し、摂取量を考え、工夫しながらマタニティライフを楽しみましょう。