「赤ちゃんが生まれることはとても楽しみだけれど陣痛は怖い」そんな悩みを抱える妊婦さんも多いのではないでしょうか。特に初産の場合、経験したことのない陣痛から出産までがどのように進むのか、痛みは耐えられるのかなど、多くの不安がつきものです。
この記事ではそんな不安を少しでも和らげるべく、陣痛に対するさまざまな疑問にお答えし、さらに出産に立ち会う人にできるサポートの仕方までを専門家の観点からお伝えします。
陣痛を不安に感じる原因のひとつに「未経験・未知であること」が挙げられます。陣痛に限らず、初めての経験は不安に感じる人が多いでしょう。陣痛そのものを知っておくことで、出産に対する心構えができ、不安を多少なりとも和らげることができるでしょう。
ここでは陣痛のしくみから、痛みはどのくらいあるのか、どのように始まるのか、そして赤ちゃんはどのように生まれてくるのかまでを解説します。
「陣痛」とひとくちに言っても、実は3段階のステップがあります。そもそも陣痛とは、赤ちゃんを子宮の外へと押し出すための筋肉の収縮運動のことを指し、最初からずっと痛みが連続するわけではありません。
痛みが起こっている状態の「陣痛発作」と、その合間の痛みが止んでいる「陣痛間欠」を繰り返しながら、徐々に赤ちゃんが生まれてくるのです。
前駆陣痛とは、本陣痛の前段階での子宮収縮のことです。それまでのお腹の張りとは異なり、痛みを感じることがあります。これは、出産に向けて子宮や子宮頸管を徐々に柔らかくし、赤ちゃんにも少しずつ刺激を与えるために起こる正常なステップです。
本陣痛との違いは、規則的な痛みが続かずに終わることです。人によって感じ方も異なり、痛みは夜中が多い人、そもそも前駆陣痛は痛くない・気づかないという人までさまざまです。
この本陣痛が本格的な陣痛の始まり、つまり出産開始の合図です。妊娠37週を超えると「正期産」という赤ちゃんが生まれるのに最適な時期になり、本陣痛がいつきても問題がない期間に入ります。
とはいえ本陣痛でも最初は「もしかして」という程度の我慢できる痛みから始まることがほとんどです。その後、不規則だった痛みの感覚が徐々に10分間隔など規則的になり、5分間隔・3分間隔と短くなっていきます。
後陣痛(こうじんつう)とは、出産の後に子宮が元の大きさに戻ろうとする際の痛みのことを指します。産後すぐの1日目が強く、3日ほどでおさまることがほとんどです。
「出産が終わってもまだ痛みが続くのか」と思う人もいるかもしれません。しかし、この後陣痛は胎盤がはがれた部分の欠陥を圧迫し止血を行います。母体の回復を促す効果もあるのです。
初期の陣痛は生理痛や下痢の腹痛程度の痛みを下腹部に感じることが多く、まだ我慢できる程度です。 その後、子宮口が開いてくると痛みの強さと場所の範囲が変化していきます。
子宮口の開きが10センチ(子宮口全開大)に近づくと下腹部・腰の痛みに加えおしりの痛みが出てきたり、お通じがしたい感覚が出てきます。ここまで来たら赤ちゃんに会えるまでもう少しです。
最後、赤ちゃんが出てくる直前には自然といきみたくなり、意識せずとも体に力が入ります。
陣痛のはじまりかたは人それぞれです。妊娠42週をすぎると胎盤の機能が低下し、赤ちゃんの具合が悪くなる可能性があることが知られています。よって、予定日をすぎてもなかなか生まれない場合は、入院して陣痛誘発剤で陣痛を起こすこともあります。誘発剤を使用しても当日生まれない場合もありますが、赤ちゃんが元気であれば問題ありません。
ただ、陣痛開始前に「破水」や「おしるし」が起こる場合もあります。全員に必ず現れるわけではありませんが、知っておいたほうがよいでしょう。ここで「破水」と「おしるし」についても学んでおきましょう。
「破水」とは赤ちゃんを包んでいる膜が破れ、羊水が流れ出ることです。膜の破ける位置によって、勢いよく羊水が流れる「完全破水」と、少量ずつ羊水が流れる「高位破水」があります。子宮工が前回になることに起こることが多いですが、「前期破水」といって陣痛が始まる前に起こることもあります。
破水があったらまずは産院に連絡してください。少量しか羊水が流れない場合は、尿漏れとの判別が難しいかもしれません。判断がつかない場合も必ず産院に相談しましょう。
破水すると、雑菌が入って赤ちゃんが感染を起こす可能性があるので入浴やは控えるとよいでしょう。
「おしるし」は、陣痛前に起こる少量の出血のことです。出産に向け体の準備が進み、子宮口が開いてくると子宮壁から卵膜がはがれ、このような出血がみられる場合があります。
ただ、おしるしから陣痛まで1週間ほどかかる人もいるため、すぐ陣痛が来なくても焦る必要はありません。また、卵膜が子宮壁からはがれても出血しない人もいるため、おしるしなしで陣痛が始まるパターンもあります。
陣痛についてはだいぶイメージができてきたでしょうか。陣痛だけでなく、その後の入院・出産の流れも押さえておくことでさらに安心してお産に臨めるでしょう。今日産むとなっても焦らなくてもいいように、早くから備えておきましょう。
分娩は第1期から第3期までのステップがあり、それぞれに特徴があります。ここでは一般的なお産の流れと目安時間、また痛みの感覚の変化についてご紹介します。
陣痛が始まってから子宮口が全開になるまでを指し、最長のステップです。序盤、子宮口の開きが0~3センチの段階では陣痛の間隔は約10分、陣痛発作は1回につき20秒の長さが標準的です。
徐々に子宮口が開いてきて3~8センチ頃になると陣痛は5~6分間隔に狭まり、発作時間は30~40秒程度になります。発作時間は約1分と間隔が狭まってきます。
最終的に子宮口の開きが9~10センチになると、陣痛は2~3分間隔、陣痛発作は約1分でかなりつらい痛みになるといわれています。
子宮口の開きが10センチと全開になり、赤ちゃんが出てくる間を指します。通常、分娩第2期になってから分娩台に移動します。
赤ちゃんの頭が骨盤に入りはじめゆっくりと回りながら出てこようとするため、赤ちゃんにとっても最も大変な時期です。呼吸をとめないように気を付けて、赤ちゃんにたくさんの酸素を届けてあげましょう。
この分娩第2期にかかる時間は、初産婦の場合約1~2時間、経産婦だと半分の30分~1時間程度が標準です。
分娩第3期は、赤ちゃんが産まれた後、胎盤が出てくるまでの間を指します。赤ちゃんが産まれると母体の子宮は軽く収縮します。後産陣痛という微弱な陣痛が起こり、胎盤が自然にはがれて出てくるでしょう。
そのほか子宮内に卵膜や胎盤の一部が残っていないかを確認し、会陰切開や裂傷の傷を縫合する処置などを受け安静にします。長くても30分程度です。
陣痛時はリラックスすることを心がけましょう。赤ちゃんが骨盤の中に入りやすくなり、ホルモンが正常に働き、お産がスムーズになります。呼吸法を意識し、ゆっくりと吐く呼吸を心がけましょう。
過ごし方は人それぞれです。散歩、軽食、お風呂、ツボ押し、アロマを炊く、好きな音楽を聴くなど少しでも落ち着けるものを選んでください。陣痛の間欠時にウトウトするのもよいでしょう。
また、入院のタイミングを決める際に陣痛の間隔を測るのはよいですが、入院したあとは間隔の測定は不要です。時折モニターをつけるなどして助産師が観察しますので、とにかくリラックスして過ごしましょう。
ここまで陣痛の前触れや始まってからの間隔、標準的な時間などお伝えしてきました。しかし、実際のお産の経過は本当に人それぞれです。ひとりとして、同じ経過を辿る人はいません。
間隔がバラバラすぎて本陣痛か分からない、子宮口3センチから開かない、痛いけど耐えられるから家で我慢していたらもう子宮口が8センチ開いていた、など様々なエピソードがあります。
陣痛が来るタイミングは事前にはわからないものです。その時に備えて、陣痛タクシーに登録する等交通手段を検討しておきましょう。
陣痛中は痛みに耐えるのが精一杯でしょう。赤ちゃんが生まれるまでには何時間もかかる場合もあり、空腹にもなります。立ち会える人は、ほしいものをさっと渡せるようにしておきましょう。飲み物は横になったまま飲めるストローキャップがおすすめです。
手を握る、名前を呼ぶ、痛みのある部位に湯たんぽやホッカイロを当てる、痛みのある部位をマッサージするなどやれることは多々あります。なにより、普段一緒にいる人がすぐそばで励ましてくれることで、とてもリラックスすることができます。そのことは、お産の非常に重要なサポートになります。
痛い陣痛を乗り切る方法は様々ですが、乗り越えられないものではありません。昼間ひとりのときに突然陣痛が来ても冷静に対処できるよう持ち物リストで持ち物を準備し、乗り越え方をイメージしておきましょう。
お産の流れに関する知識をつけたり、先輩ママの体験談を聞くことで不安を減らしていくのもよいでしょう。陣痛は、赤ちゃんを生み出すための大切なエネルギーです。過度に怖がる必要はありません。
また、妊娠したということは、産む力を持っているということです。自分自身と赤ちゃんの力を信じてお産に臨みましょう。わが子はとってもかわいいです。