「神前式(しんぜんしき)」とは、神道の神様に対して、新郎新婦が結婚したことを報告する結婚式の方式のことです。
日本ではキリスト教式の結婚式の人気が高いですが、神前式も見直されつつあります。一般的に「キリスト教式」はチャペルで結婚式を行い、結婚の誓いを交わします。
ほかに「人前式(じんぜんしき)」も人気がありますが、こちらは見守る人の前で結婚を報告する方式となっています。
神前式の起源は古いのでは、と思われがちですが、実は現在の神前式の起源は明治33年に日比谷大神宮で行われた、大正天皇のご成婚にあると言われています。
それ以前は、日本では結婚式と呼ばれるものは挙げていませんでした。花嫁道具を運び、花嫁が新郎宅へ移動し、新郎宅にて親戚縁者に新婦のお披露目をすることで、嫁入りとされていたからです。結婚式の歴史自体がまだ浅いと言えるでしょう。
神前式での「三々九度(さんさんくど)」は3回に分けて3つの盃に御神酒を注ぎ、それを飲むという儀式です。これは夫婦のきずなを固める儀式であり、将来にわたってお互いに支え合うことを誓う儀式です。
3つの盃は大中小で大きさが違い、小さい盃は先祖を、中くらいの盃は夫婦の現在を、大きな盃は未来、子孫を表しているとされています。三々九度は「三献の儀」や「夫婦固めの盃」とも呼ばれます。
神前式の費用は、20万円~35万円ほどかかると言われています。なおこちらの費用はあくまでも目安であるため、神前式を行う神社によって異なります。
またキリスト教式のチャペルでの結婚式のように、結婚式場に神前式用の神社があるところも存在します。その場合は、挙式料として請求されるでしょう。キリスト教式と比較すると、多少安くなることが多いです。
神前式で結婚式をするけれど、ウェディングドレスも着たい、もしくは他の和装も着てみたい、という場合にはお色直しをすることもできます。
もともと結婚式のプランの中にお色直しが含まれているケースもあります。プランに含まれていなくても、5万円~10万円ほど上乗せすることで、お色直しは可能です。ただヘアメイクにも費用がかかることがあるので、合わせてチェックしておいてください。
神前式で結婚式を行う場合、一般的なご祝儀費用の相場は、兄弟や親族は5万円、友人は3万円くらいとなっています。
また、神前式でいつご祝儀を渡すのか、という問題も出てくるでしょう。結婚式当日に持参する場合は、神前式の神社と披露宴会場が異なることが多いため、披露宴開始前に渡すか、親族であれば新郎新婦の両親に預けるといった渡し方もできるでしょう。
ここからは、新郎新婦にとって人生最大のイベントである結婚式に、神前式を選んだ場合の特徴を見ていきましょう。
神前式は神社で、和装で行うおごそかな結婚式です。ぜひその特徴を押さえてみてはいかがでしょうか。
神前式自体は明治時代から行われるようになったと紹介しましたが、実は神前式で行われている「儀式」などは、日本に古くからある儀式を取り入れているため、伝統的な挙式とも言えるでしょう。
日本の天皇家(皇室)の方が民間に嫁がれる場合に、神前式を挙げられているため、テレビなどで見たことがある人も多いのではないでしょうか。そのため、日本の伝統を大切にしたい人に、とくに人気の結婚式となっています。
神前式の特徴2つ目は、新郎新婦が「白無垢(しろむく)」や「色打掛(いろうちかけ)」、「引き振袖」など豪華な和装で、おごそかに行える結婚式であるということです。
白無垢はご存じの通り白一色ですが、色打掛は白無垢と同格でありながら、非常に豪華で華やかな和装です。打掛はもともと身分の高い女性が着ていた和装です。時代劇などで見ることがある豪華な打掛を着ることができるでしょう。
他のキリスト教式の結婚式などと違い、神前式では親族もまた儀式に参加する形になっています。新郎新婦だけでなく、それぞれの家と家とのつながりを重視した結婚式になっています。
たいていの結婚式で、親族の出番はそう多くはないですが、神前式の場合は「親族固めの盃(しんぞくかためのさかずき)」という儀式が行われます。両家の関係を重視したい人には、神前式は向いているでしょう。
それではここからは、神前式の流れがどうなっているのか、神前式のプログラムについて紹介していきます。
神前式で行われている儀式については、他でやらない神前式ならではの特徴的なものが多くなっています。どの方式で結婚式を挙げようか迷っているという人はぜひご覧ください。
「参進の儀(さんしんのぎ)」とは、神職たちに先導され、雅楽の演奏の中、新郎新婦が親族たちを引き連れて神社の本殿へと向かう神前式のはじまりの儀式です。
参進の儀を行う前に、参列者は手水場(ちょうずば)で両手を清め、口をすすいでおきます。この参進の儀の行列には、新郎や新郎の親族もいますが、「花嫁行列」と呼ばれることもあります。
「修祓の儀(しゅばつのぎ)」とは、簡単に言うとお祓いの儀式です。
神職が祓詞(はらいことば)を述べ、両手に持った「おおぬさ」で新郎新婦と参列者たちのお祓いをし、清める儀式となっています。
「祝詞奏上の儀(のりとそうじょうのぎ)」の祝詞(のりと)とは、神職が神様に伝えるために用いる言葉です。「祝詞奏上の儀」は、新郎新婦が結婚するということを、神様に報告する儀式として行われています。
結婚式のスピーチなどで使ってはいけない「忌み言葉」というものがありますが、実はその忌み言葉は、言霊(ことだま)信仰から来ており、言霊は祝詞に通じるものがあると言われています。
新郎新婦が神前に進み出て、誓詞と言われる結婚の誓いを読み上げるのが「誓詞奏上(せいしそうじょう)」です。
誓詞奏上の内容は、神様に対して結婚したことを報告し、夫婦としてこれからお互いに力を合わせて暮らしていくことを誓います。また、神様にこれからも自分たちを見守って欲しいと伝えて締めとなります。新郎新婦2人で奏上しますが、新郎のみで奏上する場合もあります。
「三献の儀(さんこんのぎ)」別名三々九度(さんさんくど)は、すでに上でも解説したように、夫婦のきずなを固めるために行う儀式です。
小(一の盃)・中(二の盃)・大(三の盃)の3つの盃を用意し、それに3回ずつ注ぎ、盃を3回で飲み干すという儀式になります。一の盃は新郎から新婦そして新郎、二の盃は新婦から新郎そして新婦へ、三の盃は新郎から新婦からまた新郎へという順番で行います。
「玉串拝礼(たまぐしはいれい)」は、巫女さんから受け取った玉串を神前にお供えする儀式です。他に、「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」と呼ばれることもあります。
根本を神前の方に向けるのが気をつけるポイントで、お供えした後で「二拝二拍手一拝(2度深いお辞儀・2度の拍手・最後に浅くお辞儀を1回)」を行います。
指輪交換はキリスト教式の結婚式でも行われており、神前式にも取り入れられた儀式なので、やり方は同じです。
新郎新婦が用意した結婚指輪を、新郎が新婦の指にはめ、新婦が新郎の指にはめます。
「巫女舞奉納(みこまいほうのう)」では、雅楽の演奏に合わせて、巫女さんたちが榊や檜扇を持ってお祝いの舞を奉納します。「巫女舞奉奏儀(みこまいほうそうのぎ)」と呼ばれることもあります。
ここで舞われる巫女舞は、「浦安の舞」や「朝日舞」などがあります。神社によっては、省略されることもあるでしょう。
「親族固めの盃(しんぞくかためのさかずき)」は、新郎新婦の両家親族が、きずなを深めるために行う儀式です。
親族全員にお酒を入れた盃が配られ、乾杯の合図とともに飲み干します。神職が説明や声掛けを行う場合がほとんどですが、新郎の父親が音頭をとる場合もあります。
「斎主あいさつ(さいしゅあいさつ)」の斎主とは、神前式の進行を務めてくれる神職のことで、斎主の方から神様へ向かってあいさつがあります。
神前式の最後に行われる場合もありますが、参進の儀のあとにあいさつされる場合もあるでしょう。
ここでは、神前式を行う場合に確認しておきたいポイントについて、3つ紹介いたします。
神前式で結婚式を行う場合、他のキリスト教式で結婚式を行う場合と比べて、どのようなポイントに気をつければよいのか、確認事項を見ていきましょう。
一般的に神前式を行うのは神社なので、招待できる人数が何人くらいなのかあらかじめ確認しておきましょう。場合によっては招待人数を調整する必要もあります。
結婚式場に併設されているような神社であれば、それほど心配はいらないかもしれません。しかし、通常の神社で神前式を挙げる場合は、もともと結婚式のために建てられている訳ではないので収容人数に限りがあります。
何人くらい招待できるか、あらかじめ確認しておきましょう。
神前式後に披露宴をどこで行うのか、神前式を行った場所でそのまま続行できるのか、それとも披露宴会場に移るのかなどを、決めておく必要があります。
ほとんどの場合、神前式の後は披露宴会場に移動することになるでしょう。結婚式場の神前式会場であれば、披露宴会場ともそれほど離れていませんが、神社から会場に移動する場合は、移動手段についても検討する必要があります。
神前式を挙げる神社によっては撮影禁止であったり、撮影できる場所や集合写真を撮れる場所が指定されていたりするケースがあるので、確認しておく必要があります。
神社内部では専門のカメラマンしか撮影できない、といったケースもあるでしょう。式場となる神社に事前に問い合わせておきましょう。
神前式は日本ならではの、日本の伝統そのものを感じられる結婚式です。キリスト教式の結婚式を挙げる人が多いので、神前式は結婚式が記憶に残りやすいというポイントもあります。
伝統を大切にしたいという人、日本ならではの結婚式を挙げたいという人、和装での結婚式を考えている人は、ぜひ神前式を検討してみてはいかがでしょうか。